業界の有識者にサービスグロースの秘訣を聞く大好評のインタビュー企画「Sailing Report」。今回は6/18(火)に開催される、 「大手メディア企業のZERO to ONE」 をテーマにしたイベントにご登壇いただく朝日新聞社メディアラボの深田陽介氏。メディアラボという朝日新聞社が手掛ける新規事業の「実験工房」で、動画メディア「Moovoo(ムーブー)の事業責任者を務めています。メディアの環境が激変する中で、世の中にない新しい価値の創造を目指すメディアラボではどのように新規事業が生まれているのか。そして、大企業が新規事業を手掛けることの「リアル」なお話をお伺いしました。

深田氏のご登壇するイベントにご興味のある方は下記URLよりご応募ください。

【6/18開催】増枠!aCrew #2 for Media 日経、朝日、note、Gunosyの新規事業担当が登壇!

プロフィール

朝日新聞社 メディアラボ

2009年にエンジニアとして入社。新規事業のシステム計画・構築、スマホのARアプリの開発、自然言語処理・人工知能を使った記事活用の研究に従事。2016年社内事業コンテスト受賞によりMoovoo事業を立ち上げる。

朝日新聞の「実験室」、メディアラボ

ーまず最初に深田さんのキャリアについて教えてください。

深田陽介(以下、敬称略):大学と大学院では情報系を専攻し、AIや画像処理の研究でプログラミングとレポートの日々でした。新卒で朝日新聞社に入社してからは、社内向けのシステム開発とかASA販売店さんの注文システムのASP化のプロジェクトを担当しました。後者は期間で2年ほどかかったプロジェクトのシステム系のリーダーを務めて、2013年に「朝日新聞社メディアラボ」(以下、メディアラボ)に異動してきました。

ーいわゆる新規事業の部署に配属になったのですね。

深田:そうですね。自分は普通のエンジニアのつもりでしたが、自分以外では気合の入った記者や営業出身のビジネスサイドの人が多く配属されていました。システムは作れるけど、「やりたいこと」なんて考えたことがなかったので、正直カルチャーショックでした。

ーメディアラボではどのようなミッションだったのでしょうか。

深田:大きく3つのミッションがあります。

・新規事業を自分たちで生み出す

・スタートアップを見つけ、出資、投資する

・R&D(Research & Development:研究開発)を進める

ーメディアラボは当時どのような事業をされていたのでしょうか。

深田:新規事業に取り組んでいた先輩は「朝日自分史」という「朝日新聞社が自分史の制作をお手伝いする」というシニア向けサービスを手掛けていました。自分はその立ち上げでシステムを作っていました。

そこからだんだんと自分でもサービス開発をやりたいと思うようになり、一緒にいた4人のチームで新規事業コンテストにチャレンジしました。そのときのアイデアが、動画メディアの「Moovoo(ムーブー)」につながりました。「Moovoo」の事業は現在3期目です。

ニュースから「モノ紹介」へ。動画メディア「Moovoo」

ー「Moovoo」はどのような背景で立ち上がったサービスなのでしょうか。

深田:当時はちょうど分散型の動画メディアが流行った時代でしたので、その流行りに合わせたアイデアでした。海外発の「Now This」や「the dodo」、日本でも「C CHANNEL」「DELISH KITCHEN」が出始めた頃です。朝日新聞には動画の商品メニューはなかったので、広告営業を行うビジネスサイドとしても紙面(テキスト)と「Moovoo」(動画)のセットとして売りやすいというメリットがありました。

ー「Moovoo」ではどのようなコンテンツを発信していたのでしょうか。

深田:当初はニュース動画を手掛けていました。しかし2ヶ月ほど続けてみたらまったく面白くなかったんです。効率よく動画を制作するために朝日新聞にアーカイブされている写真やテキストを編集してつなぎ合わせるという企画だったのですが、誰のための、どんなレベルのニュースなのか分からなくなってしまったんですね。そこで3ヶ月目にピボットすることになりました。

ー「Moovoo」のターニングポイントはどこだったのでしょうか。

深田:「モノ」のついての動画メディアにピボットしたことが大きな転換点でした。自分が流行りの新しいプロダクトを買っていたので、単純に興味があったんです。そこで海外からプロダクトを取り寄せ、少々手間はかかるけど自分たちで撮影し、プロダクトを使ってみた実感を伝えるメディアに方向転換しました。

そこからいきなり再生回数といった数字が良くなり、波に乗ることができたんです。Facebookのファン数が1万人から3万人まで増え、動画再生数も広告なしのオーガニックだったにもかかわらず、月間400万まで増えました

ー自分たちで動画を撮影するのは大変だったのではないでしょうか。

深田:本当にその通りで、かなり大変でした……。まるでYoutuberのように、毎日動画を作ることになりました。しかしそのおかげで動画のファンも増え、さらに動画制作のノウハウが蓄積されていったことで動画制作で売り上げを上げられるようになりました。

紙面+web動画。新規事業で広がるビジネスチャンス

ー動画商品のセールスは朝日新聞本体の方もされているのですね。

深田:そうですね。紙面広告のセールス担当者はまだウェブ動画に興味あるけど詳しくはない。またクライアントさんも詳しくない場合が多かったので、ちょうどニーズがあったんです。

2018年下期は常に10案件ほど進めているような状況になりました。なかには、受託制作案件を行うことで一段と動画制作のクオリティが上がるようになりました。

動画の制作クオリティが上がり、サイトへの流入も増えることで、今では動画制作と媒体掲載のセットが売れやすくなりました。

ーお客さんはどのような業種が多いのでしょうか。

深田:朝日新聞社のセールス部隊が案件を取ってきてくれることが多く、ジャンルはほぼオールジャンルです。社内での認知が上がったことで「こんなお客さんでも提案できる?」と相談を受けるようになりました。やはり紙面だけでは広告は売れない時代になっていると思います。だからこそ、紙面+webの動画という切り口が求められているのではないでしょうか。

ーサイトは今どのように成長しているのでしょうか。

深田:ちょっと不思議だったのですが、きれいにSEOでの流入が増加しています。キュレーション系メディアが軒並み検索順位を落としている中でこれには驚きました。

これは小手先ではなく、情報ニーズを読み解き、それにこたえていること、独自の動画にも力を入れていることによる成長だと感じています。プラットフォームから「オリジナルのコンテンツを作ってしっかりやっている」と認識され、それが正当に評価されている手応えがあります。

朝日新聞の強みを活かしながら、世界で使われるサービスを

ーメディアラボへの配属から6年目、朝日新聞全体から見てどのような変化がありましたか。

深田:新聞社全体の未来は、正直あまり明るくないと思っています。そして自分もこの5年間を結果ベースで考えても、下がっていく広告費分を補填できるほどの大きなインパクトのある事業を生めていないことも事実です。

ーその状況を打開するアイデアはあるのでしょうか。

深田:まず資金調達の仕組みを変えないと、と思っています。自分の会社の予算内で考えると、新規事業への投資額はすごく少ないんです。一般的なスタートアップは外のVCや投資家から当たり前のように資金調達をしていますし。いくら社員が優秀だったとしても、資金力が弱いと勝負に出ることができません。なので今、朝日新聞でCVCを組成し、その視点から見ても本当に出資したいと思えるサービスになっているか、出資できるかという目線で新規事業を見直すようになりつつあります。また、外部VCから調達できるような仕組みも考えています。

ー朝日新聞としての強みを活かした新規事業は生まれているのでしょうか。

深田:最近ですと、「MEETING TERRACE(ミーティングテラス)」というシニア向けのマッチングサービスがそれに当たるでしょうか。新聞社としての資産の1つに、地方にも多くの読者層を持っていることが挙げられます。また、朝日新聞社というブランドを使うことで、安心して利用していただけるメリットもあります。

ー「Moovoo」では今後どのような展望を描いているのでしょうか。

深田:広告ビジネスでまずは売り上げが数億ほどのところまではいきたいなと思っています。広告業界は何百億もの金額が動く業界なので、そのくらいの規模感にならないとなんのインパクトもないのかなと……。

ただ、動画制作は労働集約型なので限界はあります。アフィリエイトやメディアの掲載料などの売上比率を高めていかないと、本当に大きなビジネスにはならないと思っています。

この前、取材でシリコンバレーで活躍する日本人の起業家たちに取材ができました。それがすごく良い経験になったんです。

なんで世界に行っているんですかと聞くと、みんな世界で使われるプロダクトを作りたいと、大きな夢を語っていました。Moovooをはじめ、自分もそうしたサービスを作っていきたいですね。

 

 

 

aCrew #2 for Media

大手メディア企業の新規事業責任者に、これからのメディアの在り方について聞く!

開催日時:6/18(火)18:30〜

イベントテーマ

今回のテーマは「大手メディア企業のZERO to ONE」です!

情報多寡の時代、著名な媒体であることの価値が下がってきている一方で、オフラインコミュニティの運営、クーポン施策、動画への活路など、大手メディア企業から従来のメディア運営を超えた新しいビジネスの取り組みが次々と始まっています。

そこで今回は、日経新聞朝日新聞の大手報道機関とスタートアップを代表するメディア企業Gunosy、そして急成長中のメディアプラットフォーム「note」を運営するピースオブケイク社の新規事業責任者をお招きし、大手メディアにおける新規事業の立ち上げ方や成功確度を上げる秘訣、主幹事業とのシナジーなどについて赤裸々に語ってもらいたいと思います。

メディア業界に在籍の方のみならず、これからメディア事業への参入を検討されている方や、新規事業のヒントを見つけたい方にとってもためになること間違いなしですので、ぜひご参加ください!

登壇者・予定テーマ

第一部

1. 株式会社Gunosy 真武氏
テーマ:オトクルの取り組みとGunosyのバーティカル戦略

2. 朝日新聞社 メディアラボ 深田さん
テーマ:朝日新聞メディアラボの取り組み
http://www.asahi.com/shimbun/medialab/

3. 日経新聞社 永吉さん
テーマ:会員コミュニティを育てるNsalonの取り組み
https://nsalon.note.mu/

参考記事: 「日経×note -「Nサロン」が3ヶ月で自走するコミュニティになるまでにやったこと

4. ピースオブケイク 水野さん
テーマ:noteの新しい取り組み

第二部

パネルディスカッション 登壇者4名 + モデレータ

 

↓ イベント詳細・申込みはこちらから ↓
https://repro.connpass.com/event/131865/

主催:Repro株式会社

開催日時:6/18(火)

開催場所:株式会社ピースオブケイク
東京都港区北青山3丁目1−番2号 青山セント・シオンビル4階

参加費:無料

 

 

 

 

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