マンガアプリ黎明期に先行してサービスをリリースし、5年半が経ったDeNAの『マンガボックス」

メディア化された人気のオリジナル作品に加え、大手出版社の作品も読むことができるため、マンガタイトルが豊富なことが特徴だ。

サービスが乱立する中、マンガボックスが目指すのは「デジタルをベースとした出版社のあり方」だという。

マンガボックス編集長の安江氏とプロダクトオーナーである藤井氏が、戦国時代真っ只中のマンガアプリ業界の現状やマンガボックスの戦略、マンガビジネスの「これから」について熱く語った。

 

プロフィール

安江亮太(やすえ・りょうた)写真左手

DeNA IPプラットフォーム事業部長 / マンガボックス編集長

2011年DeNAに新卒入社。入社1年目の冬に韓国でのマーケティング組織の立ち上げを手がける。2年目に米国でのマーケティング業務。その後全社戦略の立案などの仕事を経て、現在はおもにマンガボックス、エブリスタの二事業を管掌する。DeNA次世代経営層ネクストボード第一期の1人。

Twitter: https://twitter.com/raytrb

 

藤井康平(ふじい・こうへい)写真右手

DeNA IPプラットフォーム事業部 マンガボックスプロダクトオーナー

2016年ソフトバンクに新卒入社。入社1年目に同社新規事業コンペにて優秀賞を獲得し受賞案の実現に携わる。その後、IP領域での業務を志し、2017年よりDeNAのマンガボックスチームに中途入社。2018年よりマンガボックスのプロダクトオーナーとして、アプリケーション開発および掲載作品の選定など幅広い領域を担当。好きなマンガは『BIRDMEN』『BUNGO-ブンゴ-』『BLUE GIANT』『BEASTARS』

量より質。濃いファンを獲得するためにオリジナル作品に注力

 

ー『マンガボックス』の特徴・強みを教えてください。

藤井:「マンガボックス」はDeNAが提供するマンガアプリで、オリジナル作品の最新話を中心とした、多様な漫画が無料で読むことができます。

そのオリジナル作品では、2017年にアニメ化・実写映画化した『恋と嘘(©️ ムサヲ/講談社)』や、2018年に実写ドラマ化した『ホリデイラブ〜夫婦間恋愛〜』をはじめとした人気作品も輩出しています。

今でもオリジナル作品はアプリの中では特別な立ち位置を占めていますが、近年では他出版社の作品露出も強化しており、無料で読めるマンガのタイトルが多いことが強みです。

 

2017年のインタビューでは「これからはコンテンツ販売やマルチメディア展開に注力したい」とおっしゃっていましたが、現在の事業フェーズについて教えてください。

安江:引き続き、ユーザーの方に面白いと思ってもらえるようなオリジナル作品を作ることに注力しています。

現在は、累計ダウンロード数1000万以上、月間アクティブユーザーは100万人以上。

マネタイズで見ても、直近のQは前年同期比で約1.5倍と大幅に成長しています。ここはイベント当日で詳しくお話させて下さい。

 

オリジナル作品に注力する理由として、「濃いファンを獲得したい」という想いが一番にあります。

 

マンガアプリはユーザーさんの獲得単価が安く、広告を出稿すればユーザー数を増やすこと自体はできます。しかし、私たちはサービスを使い続けてくれる熱心なユーザーさんを大事にしたいと考えているので、広告出稿はあえて抑えていて、競合他社の十分の一ほど。

いかにマンガボックスでしか読めない、面白い作品を届けられるかが他サービスとの差別化に繋がり、かつ、ユーザーさんの満足度を追求する上で一番大事なことなのかなと思います。

 

作品の根底にあるのは「葛藤・受容・希望」というテーマ

 

ーユーザーさんの量ではなく質を意識されているのですね。オリジナル作品を企画する上で心がけていることはありますか?

安江:私が編集長としてオリジナル作品のテーマを考えているのですが、「時代にフィットした作品」を届けること。これに尽きますね。各編集部さんごとに色々なカラーがあるかとは思いますが、マンガボックスのテーマは「葛藤・受容・希望」です

 

今の時代は、人間の生き方や価値観が多様化していて、こうしたら幸せになるというお決まりのマンガは共感されにくくなっている側面があります。

そのため今後はさらに、「登場人物が葛藤して悩み抜いた先に、コンプレックスや葛藤を受け容れて、なんらかの希望が見える」というテーマを扱う作品が多くなっていく予定です。

 

例えばマッグガーデンさんと協業したタイトルである「葬」(はぶり)や、マンガボックス編集部で制作している「スイートモラトリアム」などはまさにこのテーマに向き合おうとしている作品だと思います。

 

世界で戦うためには「原作を作る」力が必要になる

 

ーこれから今まで以上にサービスを進化させていく必要があると思います。マンガ業界の最先端を走るお二人にとって、今の時代におけるマンガの社会的価値はどのようなところにあると思いますか?

藤井:本質的に、マンガの価値は紙でもデジタルでも変わらないと思っています。

日常にスッと入ってくる気軽さがありながらも、ハマったら徹夜して読んでしまうような深い感動もある。その両方の特徴を持っていることがマンガの最大の魅力だと考えています。

 

仕事が終わった後、疲れていてもスッと読めてしまう。しかも気がついたら夜中まで没頭してる。そんな体験の中で、「明日も頑張ろう」と気持ちを切り替えたり、自分のコンプレックスに向き合えたり、とても多くの価値をユーザーさんに提供できていると感じています。

 

デジタル化されることは、マンガが持つ普遍的な価値を、より多くの人に届けられること、そして増幅させることになると考えています。そして、レコメンドなどの機能は全て、この体験の向上のために設計されています。

 

ー安江さんはいかがでしょうか。

安江:世界経済の成熟が進む今、生活水準が上がっている国々は多い。そのためエンタメの必要性が高まっています。

なぜなら、先進国ではテクノロジーが進んで労働時間は短縮され、人間はより多くの余暇時間を得られるようになっていく可能性が高いからです。その余暇をどう過ごすか、ひいては、なぜ自分は生きるのか?というような根本的な問いを考えるのに、エンタメは重要な役割を果たします。

経済成長が著しい国では、エンタメ市場も右肩上がりになっていることが多いです。そんな状況でよく聞くようになったのが「原作がほしい」という声。アメリカ、中国だけでなく、韓国や日本でもよく聞きます。原作を作れるクリエイターが世界的に今すごく必要とされている。

これは持論ですが、いい作品を生み出せるかは、12~18歳といった思春期にどれだけ良質なエンタメに出会ってきたかで決まると思います。幼少期からすばらしい作品に囲まれている日本のクリエイターは、すばらしいエンタメを生み出せる原石なんです。

 

だからこそ日本で生み出された原作は、中国、アメリカ、韓国でもきっと楽しんでもらえるはず。グローバルに日本のクリエイターの創造力を広げていきたいと考え、その地盤づくりも進めています。

 

ーこれからマンガビジネスは、どう変化していくとお考えですか?

藤井:マンガボックスではエンタメに関する2つの流れを意識しています。最近は動画コンテンツなど手軽なコンテンツの人気がより高まっており、チームではこれを「エンタメのスナック化」と言っています。この流れはマンガにも訪れる気がしているので、マンガというフォーマットの良さを活かしつつ、なにか変えられる要素があるかもしれないという視点は持っておくようにしています。

 

もうひとつは、「エンタメの民主化」の流れです。たとえばTikTokは、動画を観るよりも撮るのが楽しいから、今のような人気が出たのではないかと考えています。つまり、質の高いコンテンツを消費するというよりは、自分のコンテンツを発信することへと世の中の欲求がシフトしているとすれば、マンガも新しい在り方を求められている時期かもしれません。

 

そうなると、普段は別の仕事をしている人が、気軽にマンガを描くようになるということももっと広がるでしょうし、そうなると「連載」というマンガの王道にも変化が来るかもなと思っています。

 

マンガボックスがこれから取り組むこと

 

ー語っていただいたようなマンガビジネスの未来をふまえて、直近マンガボックスとしてはどのようなことに力を入れていきますか?

安江:やるべきことはたくさんありますが、まず注力するのは「作家さんの採用・育成」です。

面白い作品を作るには、優秀な作家さんの採用と育成が不可欠。最近は、新人発掘の目的で「マンガボックス編集部杯」というグランプリを開催しています。優勝者は、実際に連載を持つことができるという仕組みです。

 

藤井:育成面では、DeNAというIT企業ならではの強みを活かしたやり方でユーザーの方の満足度を上げつつ、作家さんの満足度の向上を目指しています。

具体的には、ユーザーさんの声をリアルタイムに作家さんに届けられるシステムを考えています。たとえば、ユーザーさんが読むのを途中で辞めたポイントを集計し作品作りの参考にしてもらったり、あるいはファンレターをもっと効率的に気軽に贈れる/貰える関係を構築したりする仕組みを、ABテストを繰り返しつつ検証しています。

 

「デジタルをベースとした出版社」として作家さんとユーザーさん双方の満足度を上げるべく、それに適したやり方と組織体制を日々模索しています。

 

ー最後に、8月に開催されるaCrewのマンガミートアップに向けて、意気込みをお願いします。

安江:前回のミートアップでは、かなりぶっちゃけトークをしました。今回も、冒頭に述べた売上の実態なんかもお話しできると思います。

 

他社さんに聞いてみたいのは、新しい才能の発掘について。僕はエブリスタ(小説投稿サイト)の社長も兼任していて、小説やマンガなどエンタメ全般をみていますが、どう新しいクリエイターを発掘していくかが、エンタメビジネスのコアだと思っています。

くわえて、マンガビジネスの3年後、5年後をどう考えているかを語り合って、一緒にマーケットを作っていければと思っています。

【執筆】池野花【撮影】櫻井文也【編集】Growth Hack Journal編集部

 

8/1(木) aCrew for comic 開催!

人気マンガアプリの最新グロース手法、マネタイズ戦略をひも解く

開催日時: 8/1(木)18:30〜

イベントテーマ

今回のテーマは「マンガアプリの最新グロース&マネタイズ」 です!

アプリ業界で今なお勢いのある市場の一つである漫画アプリ。 コミック誌の発行部数が落ち込む中、デジタルコンテンツとしてのマンガは、スマートフォンで楽しめる手軽さもあいまって、年々売り上げを伸ばしています。

現在は大手出版社から新興ベンチャー企業まで、様々な企業が漫画アプリを提供しており、ビジネスモデルに工夫を凝らしたサービスも次々と登場し、ひときわ盛り上がりを見せています。

そこで本イベントでは、人気の漫画アプリの担当者をお招きし、ユーザー獲得や継続、マネタイズ、コンテンツ戦略などにどう取り組んでいるかをお話していただきます。

漫画アプリ事業者のみならず、Webでコンテンツビジネスをされている方や新規事業のヒントを見つけたい方にとってためになること間違いなしです!すでにアプリの開発・運営に携わっている方だけでなく、これからアプリ事業への参入を検討されている方もぜひ気軽にご参加ください。

登壇者・予定テーマ

株式会社ディー・エヌ・エー / サービス名「マンガボックス」編集長 安江亮太 氏

テーマ(仮):マンガボックスのマネタイズの歴史

 

コミックスマート株式会社 / サービス名「GANMA!」 取締役  福西 祐樹 氏

テーマ(仮):GANMA!の「サブスク」と「顧客分析」について

 

taskey株式会社 / サービス名「peep」マーケター・コンテンツプロデューサー 許斐 亜斗 氏

テーマ(仮):peepのグロース施策

 

Repro株式会社  代表取締役CEO 平田 祐介

テーマ(仮):No.1アプリマーケティングツールが語るマンガアプリのグロースの勘所

 

トークセッション

モデレーター:Repro株式会社  代表取締役CEO 平田 祐介

パネリスト:上記登壇企業3社

 

↓ イベント詳細・申込みはこちらから ↓

https://repro.connpass.com/event/138182/

主催:Repro株式会社

開催日時:8/1(木)

開催場所:Repro株式会社

東京都渋谷区代々木1丁目36−4 全理連ビル

参加費:無料

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