アプリ市場はますます拡大を続けており、App Apeの調査によれば、2018年9月時点で日本国内においてユーザー1人あたり平均80個ものアプリを所持していることがわかっています。しかし、その中で実際にユーザーが利用しているアプリは25個ほどであると言われています。

スマートフォンアプリの開発において、アプリのファイルサイズ(容量)は見落とされがちなポイントですが、多くのユーザーが何十ものアプリをすでに入れている中で、限られた容量のスマートフォンにサイズの大きいアプリをDLしたいと思うユーザーはいないでしょう。

しかし、実際にアプリサイズを小さくすることでアプリのDL数を増やすことはできるのでしょうか?アプリの開発現場には立たないマーケティングの担当者であっても、DL数に直接関係がある要素であれば、容量の問題については知っておくべきでしょう。

今回は、アプリサイズがDL数に与える影響と、実際にアプリの容量を小さくする方法について、実例を交えてご紹介したいと思います。

 

アプリサイズがDL数に与える影響

アプリサイズとDL数の関係性を示すデータとして、Segmentが行った調査を紹介します。

Segmentは、アプリの機能などには変化を加えず、アプリサイズだけを元々の3MBから99MB、123MB、そして150MBへと徐々に上げていき、DL数に影響があるのかを調べるテストを行いました。すると、アプリサイズを増加させたことで最大66%もCVRが低下するという結果が出たのです。グラフを見ると、サイズとCVRは明確に反比例の関係にあることが分かります。

縦軸が相対的なDL率(CVR)、横軸がアプリのサイズ(MB単位)。サイズが増加するほどDL率が減少傾向にある。 出典: Segment

そもそもiOSでは、150MB以上のアプリをWifi環境がないところでDLしようとすると、以下のような画面が表示され、Wi-Fiに接続するまでDLすることができません。この上限はiOSのバージョンアップとともに50MB⇨100MB⇨150MBと緩和されつつありますが、この表示によりユーザーがDLを諦めてしまう可能性は非常に高いと言えるでしょう。

出典: http://iphone-news.hatenablog.jp/entry/iphone-150mb-app-download-error-ios

またAndroidでは、Google Play Storeに掲載できるアプリは100MBまでという制限があり、それを超える容量でアップロードしたい場合は、拡張ファイルを使用する必要があります。また、100 MB(拡張ファイル含む) を超える場合、アプリのDLには Wi-Fi を使用するように勧告するダイアログがユーザーに表示されます。

さらに、アプリをDLする際にストレージが足りない場合、容量を大量に使用しているアプリが表示され、アンインストールを促します。サイズが大きい場合は、たとえDLされたとしてもアンインストールされてしまう可能性が高いと言えるでしょう。

出典: https://androidogate.net/play-store-app-can-not-download-and-update/

このアプリサイズとDL数の相関関係は、低スペック・低容量のモバイル端末が多い地域や、インターネット接続が十分整備されていない地域でより顕著になります。アプリサイズが10MB小さくなる場合のCVRを国ごとに調査したGoogleによるデータを見てみると、特にインドやブラジルのような新興市場において容量削減の効果が高くなっていることが分かります。

縦軸が10%サイズを下げた時のCVR増加率。 出典: https://asostack.com/aso-monthly-19-november-2017-black-friday-in-the-stores-apk-size-vs-d17cb53dcd29

 

アプリサイズを削減する方法

では、アプリサイズを小さくするにはどうすればいいのでしょうか?

Androidの場合、Android Studioが提供するAPK Analyzerを使うことで、アプリのAPKファイルの中でどのコンポーネントが大量に容量を使用しているのかを知ることができます。

例えば上のデータを見ると、アプリサイズを消費しているのは主に2つのフォルダであることがわかります。それぞれのデータを最適化することで、アプリサイズを約半分まで小さくすることもできるのです。

  1. classes.dex ( javaコードなどを含むDexファイル) →Android SDKに含まれている「Proguard」を使ってコードを圧縮する
  2. res (画像・アイコンなどを含むリソースファイル)→”shrinkResources”プロパティを”true”に設定することで、使っていないデータを検出しリソースを圧縮する

詳しい手順を知りたい方はAndroid Studio公式の『コードとリソースの圧縮』をご覧下さい。また、Qiitaの『世界最小のapkを作る』も参考になります。

iOSの場合、APK Analyzer最も手軽にアプリの容量を抑える方法は、アプリ内画像ファイルを小さいサイズに変更することでしょう。JPEGよりもサイズが小さいHEIFフォーマットを用いることも効果的です。その他詳細な方法を知りたい場合は『新規インストール時のアプリサイズを計測し、最適化を行なう方法について』を参照して下さい。

サイズ削減が悪影響を与えた例もある

ユーザーがアプリをDLするかしないかの意思決定において、アプリサイズが非常に重要なポイントであることは確かです。しかしながら、アプリサイズを小さくしたからといって必ずしもCVRが上がるという訳ではありません。最近公開され、海外のアプリマーケターの間で話題になっている事例を紹介しましょう。

フィットネスアプリ『Fitify』のリリース当時、アプリサイズはおよそ99MBでした。しかし、Androidアプリにおいてアプリサイズは100MB以下という制限があることや、潜在ユーザーがDLを諦めてしまう可能性が増えることを懸念し、アプリの容量の約85%を占めていたアプリ内動画の画質を少し落とし、99MBから57MBまでサイズを小さくしました。

そして、アプリサイズを変更した日から28日間と、変更する前の28日間におけるCVRを比較したところ、以下のような結果が出ました。

なんとCVRは、上昇するどころか、アプリサイズを小さくする前と比べて0.4%減少してしまったのです。容量削減の試みを行っても、アプリによっては必ずしもDLを促す要因になるとは言えないということです。しかし、この例の場合はサイズを削減する前から100MBに達していない(=ユーザーにWi-FiによるDLを勧告しない)アプリであったことを考慮する必要があるでしょう。

最後に

このように、アプリサイズを削減したことによって、必ずCVRが上昇するという確証はありません。しかしながら、アプリサイズが大きいことでユーザーがDLを躊躇したり、アンインストールしてしまう可能性を高めることは明らかです。自社アプリの開発リソースやマーケティングにおける優先順位を見極めながら、アプリサイズの変更は慎重に行うべきだと言えるでしょう。

 

参考記事