本記事は2018年8月27日にD2C Rにて開催されたイベント「#MarketingLIVE vol.2」での発表内容を元にしたレポートです。近年、ゲームアプリ市場は成熟しつつあり、どのようにマーケティングを行うかが収益化のポイントとなっています。今回は、人気アプリの担当者の方が、実際に取り組んでいるマーケティングを、事例を踏まえて紹介します。

登壇者紹介

株式会社アプリボット 執行役員 佐藤裕哉 (さとう・ゆうや) 氏

事業の紹介

グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜』はフルボイスのカードゲームで、キャラクターとのチャットや電話も楽しめます。

撤退の危機から成長し学んだこと

『グリモア』は過去3回売り上げを大きく成長させたことがありましたが、全てプロモーションによるものでした。

売り上げを伸ばすためにはマーケティングがとても大事なのはもちろんですが、その前提としてプロダクトがイマイチだとどうしようもありません。そこで、まずはプロダクトに向き合い、その過程でマーケティングを洗練させていきました。そして、運営とマーケティングが噛み合ったときに効果を最大化することができました。

アプリを理解することは必要不可欠

マーケティングを洗練するにあたって、自社アプリへの理解を深めることはとても重要です。自社アプリを理解することで、効果的なバナーやCMのクリエイティブを考えることができます。『グリモア』などの“萌えタイトル”と呼ばれるゲームアプリは、ターゲットや好まれているポイントなどが比較的わかりやすいのが特徴です。ここでは、不良マンガRPGである『ギャングロードジョーカー』を例に考えてみます。

『ギャングロードジョーカー』の特徴

どんなユーザーがアプリを使っているのか

  • 30~40代の子持ちサラリーマン
  • 不良モチーフが好き

アプリのどの部分を好んでいるのか

  • 抗争 (ギルドバトル) とマンガ

アプリをどのように使っているのか

  • 礼儀正しく、ギルド交流とチームワークを重んじる
  • ギルドリーダーがとても大事で、メンバー集めやモチベーション上げなど奔走してコミュニティを運営している
  • リーダーがいて、励まし合い、コミュニティが形成されている
  • とても社会的な楽しみ方をしている
  • 全く不良ではない

このようにアプリへの理解を深めていくと、ターゲットのユーザー像が見えてきます。不良をテーマにしたアプリですが、ユーザーは暴走族のバイブル雑誌と言われている「チャンプロード」を読む層ではなく、ドン・キホーテにもあまり行かないという非不良層であることがわかりました。

また、プロモーションに関してはターゲットが男性だったことから、バナーに美少女のクリエイティブを使用していました。当初はCPIが安く、ROIも高かったものの、年数が経つにつれてクリエイティブの疲労が起きてしまいました。

そこで、「質の高いアプリがたくさんある中で、なぜ4周年も運用しているこのアプリを使ってもらえるのか」をアンケートや座談会、ヒアリングを通して徹底的に調査しました。ユーザーはやはり不良好きであり、新規のユーザーが今から始める理由として、あらためて不良好きをターゲットに振り切り、ゲーム内でも人気だったザ・不良クリエイティブを使い、効果を上げることができました。

勝ちクリエイティブが生まれたら、あとはPDCAを高速で回し、ROIを上げていくだけです。しかし、ROIを指標にするとどうしても判断が遅くなってしまいます。そこで、ROIの先行指標として、相関性がかなりあった課金CPAを採用したところ、PDCAがうまく回り、クリエイティブをさらに改善することができました。

もちろん、ROIの先行指標としてCPIが使えるならそれでもいいのですが、ROIに直結する先行指標を見つけることがクリエイティブを大幅に改善するためのポイントです。

プロダクトがイマイチだとどうしようもない

冒頭でも言いましたが、売り上げを伸ばすための前提として、プロダクトがイマイチだとどうしようもありません。『グリモア』は、リリース初日にTOPセールス142位と好調でした。しかし、その後DAUが伸び悩み、打開に迫られました。

DAUが伸び悩んだ理由は、プロダクトがイマイチだったからです。そこで、LTVやリテンション率を伸ばすための施策を打ちました。また、キャラゲーの強みを生かした新機能を搭載しました。

運営とマーケティングを噛み合わせて、効果を最大化

キャラゲーの強みを生かした新機能として、「more@」というものを追加しました。これは、アプリ内のキャラクターである63人の女の子とチャットや電話ができる夢のような機能です。この機能は既存ユーザーにとても喜んでもらえました。

既存のユーザーに刺さるクリエイティブや機能は、アプリをまだDLしていないユーザーにも刺さるため、プロモーションでも大きな効果がありました。これが、運営とマーケティングが噛み合って効果が最大化した最初の成功事例です。

コアファンになってもらう

『グリモア』のマーケティングでは、様々な施策を行ってきましたが、大きく効果が出たのはコラボや◯周年などの施策、CMのみでした。しかし、この3つの施策のみをやっているだけでは、他社アプリとの差別化ができず、市場で勝ち抜くことはできません。ここで重要になってくるのが、コアファンになってもらい、アプリを長く愛してもらうということです。

ファン化してもらうには、グッズなどを作り、ユーザーが常にコンテンツに触れられるようにする必要があります。そうすることで、常にリテンションしている状態になり、アプリにも戻ってきてもらいやすくなります。ただ、ファン化といっても抽象的で、KPIという形で数字にするのは容易ではありません。今回は、『グリモア』で打ってきた施策のなかでも、費用対効果の高かった施策をお伝えします。

1.アプリ自体を見直す

コアファンになってもらう前提として、ストーリーやキャライラストなどのゲームのコアとなる部分の戦略はとても重要です。その戦略を満たした前提でですが、毎日ログインすることでアイテムやコインなどがもらえるログインボーナスなどのアプリ内施策がリテンション施策としてもとても効果的でした。

また、アプリ内施策として、話題性もあり、頻度も多く提供できる季節性のイベントや定期的なイベントも行いました。例えば、グリモアでは年末の風物詩となっている「右斜め上コラボ」を実施しています。例えば小林幸子さんやや富士そばさんなどとコラボを行っています。クリスマスから年末までは意外とどこも話題性のあるイベントを行っていなかったので、そこで競合との差別化を行うことで、ユーザーが面白がってSNSでシェアしてくれたり、“この時期になると何かしらの面白いイベントを行っているアプリ”というイメージを根付かせたりすることができます。

アプリ内施策やプロモーションはどのアプリもやっていることなので、差別化を図るために改善施策をまとめてアップデートするということもしました。まとめてアップデートすることで話題になります。『グリモア』では、「神アプデ」と言ってもらえることを一つのKPIとしています。

2.ユーザーの琴線に触れるコンテンツ

ユーザーに一番刺さるコンテンツを作成するには、ユーザーがゲームの何にハマっているのかを理解した上で設計する必要があります。『グリモア』はストーリーとキャラクターを推しているので、キャラソンを作る場合は裏世界のストーリーを描くようにしました。

また、表世界のストーリーを音楽にした「ピクチャーレコード」と裏世界のストーリーを音楽にした「リバースレコード」では、後者の方が再生数が伸びました。この結果からも、ユーザーを分析することがいかに重要かがわかっていただけると思います。

3.ゲーム友達 (ゲームコミュニティ)

身近に同じゲームをやる人がいるというのは、それだけで継続してプレイする動機となります。『グリモア』ではリテンション率をあげるために、生放送やリアルイベントの実施、カラオケへのキャラソン導入を行うことでリアルなつながりを提供しました。

しかし、事業目線ではこう言った取り組みはコストも大きく、無限にできるものではありません。ユーザーも楽しいし、事業にもつながる落とし所を常に探すことが重要です。例えば、キャラソンは当初プロモーション案として出ましたが、最終的にはガチャとして販売することにしました。その結果、売り上げにもつながり、ファンも喜んでくれ、継続してファン化施策として数をリリースすることができるので、リテンション率も上昇しました。また、生放送では、生アテレコのキャラ攻略ゲームのあとに、ゲームの結果内容に応じた無料ガチャや出演声優さんのキャラガチャを実施しました。その結果、DAUが増え、売り上げにも貢献しました。

まとめ

アプリを成功させるには、アプリを理解することが一番重要です。その上で、ファン化させるためにユーザーに何が刺さっているのかを徹底的に分析することが必要不可欠です。何が刺さるのかがわかったら、ファン化するためのフックを作りましょう。ここで、「more@」のような競合と差別化できる武器を作れると効果がとても大きくなります。その武器を使ったマーケティングでは、事業につなげるということを常に意識することが重要です。ご清聴ありがとうございました。