激動のアプリゲーム市場で成功を収めている企業のマーケティングに迫る本連載。

第1回となる今回は、ジークレストが提供する女性向けパズルゲームRPG「夢王国と眠れる100人の王子様(以下、「夢100」)」のプロデューサー 兼 事業責任者を務める礎考宏氏にインタビューをしました。

ゲームを企画する男性プロデューサー

スマートフォンの普及とともに、毎年数多くのアプリゲームがサービスを開始しています。その一方で、人気を得続けるアプリゲームはほんのわずかと言えるでしょう。

そんな激動のアプリゲーム市場で、成功している企業もあります。その中の1つが、女性向けパズルゲームRPG「夢王国と100人の眠れる王子様(以下、夢100)」を開発・運営するジークレストです。

「夢100」は、2015年3月にリリースし、2018年8月には全世界1000万ダウンロードを突破。ゲームだけでなく、アニメや2.5次元の舞台化といった様々なコンテンツを打ち出し、女性を中心にさらなる人気を獲得しています。

この大人気女性向けゲームを支えるのは、なんと“男性プロデューサー”。

今回は、「夢100」のプロデューサー 兼 事業開発責任者を務めるジークレスト 取締役の礎考宏氏から、「夢100」のプロデュース方法について、さらにこれからのゲーム市場で作り手・売り手として求められる力についてお伺いしました。

今回のインタビュイー


株式会社ジークレスト 取締役 「夢100」事業部責任者
礎 考宏氏
2009年にサイバーエージェントへ新卒入社。グループ会社のQualiArtsでゲーム運用やマネジメントに従事。2017年4月にジークレストに異動し、同年10月取締役に就任。現在は「夢100」の事業責任者も務める。

女性ユーザー98%のアプリゲームを運営する男性プロデューサー

 

―礎さんは「夢王国と眠れる100人の王子様(以下、夢100)」においてどのような業務を担っているのでしょうか?

事業責任者兼プロデューサー 兼 事業責任者の業務を担当しています。事業責任者としてはメンバー管理や組織作り、プロデューサーとしては事業戦略や中長期の計画、プロモーションなど「夢100」の事業に関わるすべてを考えていますね。

 

― 「夢100」のエンドユーザーは基本的に女性ですよね? 男性である礎さんがサービスを運営するのは苦労も多そうだなと思うのですが……。

確かに、女性ユーザーが約98%なので、男性である僕では、女性が男性キャラクターにときめく気持ちを100%理解できているわけではないと思います。

正直全然わかっていないことだらけです。そのため「夢100」では、コンテンツ制作と企画開発の大きく2つのチームに分け、メンバーそれぞれの強みが発揮できるよう、コンテンツ制作と企画開発で役割を分担しています。

コンテンツ制作のチームではシナリオやイラスト制作などを行っており、女性メンバーが中心となっています。女性向けゲームやイケメンキャラクターが好きな、女子ゲーユーザーに近い気持ちを持ったメンバーが多いためこれにより、魅力的なキャラクターやストーリーを生み出せています。

企画開発は、企画・UI・システム構築を中心とし、男性メンバーも多く在籍しています。このチームは、市場やトレンドから宣伝的な部分まで客観的に分析する役割を担っている。僕は主にこの企画開発の部分で関わっています。

 

― メンバーの強みを活かす組織作りをしているんですね。

役割分担をすることで、様々な角度で意見が出てくるのでおもしろいですよ。その反面、最終的な意思決定をする時には、徹底的に話し合って進めていますバトルになることもありますけど(笑)。

 

― 色んな意見があるからこその苦労ですね(笑)。意見が割れてしまった場合はバトルになった場合は、どのように対処しているのでしょうか?

シンプルですが、コミュニケーションを密に取って進めています。あとは、みんな作り手であり、「夢100」のユーザーでもあるので、メンバーに「こうしたら感情が動くんです!」と言われたら、それを信じて進めている部分も大きいですね。

「夢100」を作るメンバーは大前提として、「夢100」を10年以上続くIPにしたいと考えています。

この考えを軸に、どういった施策を打ち出すべきかアイデアを出しているので、軸がブレていないようであれば、信頼して任せることも大事だと思っています。

原点回帰が功を奏した4周年記念企画

― 「夢100」を10年以上続くIPにしたいということですが、オフラインPRイベントやアニメ、2.5次元舞台化などゲーム以外の施策を打ち出していますよね。これには、どのような狙いがあるのでしょうか?

10年以上続くIPにするには、ゲームだけの提供では限界があります。であれば、作品の魅力を違う角度からユーザーに伝える必要があるのではないかと思い、イベントやアニメなど多角的な展開を行っています。

 

―競争の激しいゲームアプリビジネスだと、いかに売上を伸ばすかを考える事業者さんも多い中で、その打ち出し方は珍しいと感じました。

そうかもしれませんね。ただ、10年続いているモバイルゲームってほとんどありませんよね。だからこそ、10年続くIPにできたら、世の中にインパクトを与えることができると考えています。

 

― 10年続くIPにするという軸に沿った施策の中で「これはうまくいった!」と感じるものはありますか?

直近だと、4周年記念企画ですね。「Dear Princessプリンセス」というコンセプトで、オフラインイベントやファンミーティングの開催など、ファンの皆様ユーザーが王子様と姫体験を楽しんでもらう様々な企画を投じました。

 

今までの周年記念企画は、今まで見えなかった王子様の新しい一面や新しい体験の提供を行っていましたが、4周年では原点回帰を目指しました。たとえば、ゲーム内ではメインキャラクターのアヴィが最初に開放されたシーンを再現したイラストを提供しました。リリース当初から遊んでいただいている初期ユーザーの皆さんから多くの反応をいただきましたね。

 

― そういったユーザーの反応はどのように拾い集めているんですか?

2ちゃん(現:5ちゃんねる)やTwitterをとにかく漁っています(笑)。SNSや、ゲーム内にあるご意見ボックスでの感想をよく見ています。基本デスクに座っている間はずっと見てるくらいです。そこで、初速の反応を追いかけています。

また、ゲーム内にご意見ボックスがあるので、そこからユーザーの皆さんのご意見に目を通して、ご意見をもとに、次の施策に役立てることもあります。

新規ユーザー獲得の鍵“コラボ企画”に潜む課題

― 既存のユーザーにとても寄り添った施策が多いと感じるのですが、新規ユーザー獲得へのアプローチはしているのでしょうか?

一定数ですが、新規ユーザーを獲得するためのアプローチはしています。たとえばコラボ企画は、コラボした作品のファンを新しいユーザーとして取り込む狙いがあります。ただ、コラボはやり過ぎてしまうと、夢100のオリジナルキャラクターたちの登場機会が減ってしまうので、そのバランスが難しいですね。そのため、基本的には既存ユーザーあるいは以前ユーザーだった方向けの施策を考えることが多いです。

 

とはいえ、新規ユーザーを獲得しないと事業を続ける難易度が上がるため、コラボ企画以外の新規ユーザー獲得方法を模索しています。

 

― 模索していく上で参考にしている同様のIPコンテンツは何かありますか?

同じ市場でヒットしているタイトルはベンチマークしています。たとえば「プリンセスコネクト」や「Fate Grand Order」など、キャラクターの強いゲームの動きは追っています。

 

あと「刀剣乱舞」は、とてもIPの展開がうまいので注目しています。定期的に新キャラを追加したり、2.5次元の盛り上がりを作ったりしているので。舞台などもあって、舞台からゲームに流れるユーザーもいるので参考になります。

 

これらのゲームが展開するゲーム以外のコンテンツ、2.5次元やリアルイベントなどの最新トレンドは常に追いかけて、そこに対して夢100だったらどう展開していけばうまくいくのかを考えていますね。

 

今後のゲームアプリ市場で求められる力とは

 

―これまで数多くの女性向けゲームアプリのビジネスが展開されており、今後ますます展開が加速していくと思います。礎さんが思う作り手・売り手として求められる力ってなんだと思いますか?

自分の興味関心や好きの領域がある人は強いのではないでしょうか。イケメンキャラクターが好きだとか女性向けゲームの市場がおもしろそうだと思える人なら、うまいイラストやおもしろいシナリオが書けなくても頑張ることができるんです。

 

 

なので、ゲームアプリ業界においてオタクであることは才能になります(笑)。

 

― プロデューサーという仕事に関しても同様の考えですか?

プロデューサーには大きく分けて2つのパターンがあると考えています。

1つ目は、もの作りに特化した良い戦略・良いサービスを生み出せる天才肌な人。このタイプの人はとにかく自分の強みを磨き続ければ問題ないと思います。

2つ目に総合的にバランス良く戦略・サービスを生み出す堅実的な人。ゲーム開発の難易度があがっているので、このタイプの人は悪く言えば柔軟性がないため、とにかくアプリ開発に関わる必要なことはすべてインプットして理解しないと危険です。

アプリゲームに必要な3D開発の知識、マーケティングや分析、プロモーション、組織のマネジメントなどありとあらゆる理解を深めて対応できる力が必要なんじゃないかと。

また、2つのパターンともに、事業や組織の管理ができる人であることが必須になると思います。これからスマホゲームの1タイトルあたりの開発規模はどんどん大きくなっていく。そして、開発人数も増えていくと思います。

その中で、いくら優秀な人を集めたとしても、チームとして機能しなければ良いものは作れません。そういったマネジメント力のあるプロデューサーを育てていくことが、今後のスマホゲーム市場では重要かもしれません。

 

「夢100」を10年以上続くIPタイトルへ

― 礎さんご自身は今後プロデューサーとして、どのようなキャリアビジョンを描かれているのでしょうか?

「夢100」を伸ばしていきたいというのは前提に、「夢100」のようなIPを複数作っていけるようなプロデューサーになりたいと思っています。

たとえば、「神撃のバハムート」「グランブルーファンタジー」を手がけたプロデューサーであるCygamesの木村唯人さんは本当にすごいですよね。複数タイトルを生み出し、ヒットへ導き、人気を持続させている。

僕もそんな風に、複数の人気タイトルを生み出せしてヒットさせられるようになりたいと考えてます。

 

― それでは最後に、「夢100」のプロデューサーとして今後の抱負をお願いします。

先ほども少しお話ししましたが、「夢100」を10年以上続くIPタイトルにしていきたいです。
ゲームを主軸として、これまでもアニメや舞台など色々なコンテンツを活用して展開してきました。これらのコンテンツを今後も活用しつつ、新しい施策も考えているのでファン、ユーザーの皆さまんには楽しみにしていただきたいもらいたいと思っています。

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