ゲーム市場全体の中でも今や絶大な人気を誇り、急成長を続けているゲームアプリ 。モバイル端末を使ってゲームをプレイするユーザーは増え続けており、2018年のゲーム市場における収益の半分以上はモバイルアプリによるものとなっています。

しかしながら、意外なことにゲームアプリの収益は2017年にアプリ市場全体の82%を占めていたのに対し、2018年には76%と減少しています。これは、ユーザーが非ゲームアプリに費やす時間が増えたことによる影響だとも言われていますが、これまでのアプリ内課金を主体とした画一的なマネタイズ方法に限界があるのではという見解もあります。

今回は、堅実な成長を続けてきたかに見えるゲームアプリ市場の現実と、多様化するマネタイズ方法をご紹介します。

飽和状態にあるゲームアプリ市場。ゲームアプリへの消費額も初めて減少した。

App Annieの調査によると、日本国内でゲームアプリへの消費額が2018年四半期に初めて減少したことがわかりました。前年比で見れば成長は続けているといえますが、2011年〜2014年の、右肩上がりで伸び続け1兆円市場に達したころの勢いとは雲泥の差です。ゲームアプリに参入している大手ディベロッパーの収益も軒並み落ち込んでおり市場はすでに飽和状態を迎えています

参照元: 東洋経済

 

ゲームアプリ市場が飽和状態にあるのには、以下のような原因が考えられます。

  1. 『パズドラ』『モンスト』のような爆発的なヒット作があまり登場していない
  2. 課金すればするほどゲームを楽しめるというシステムにユーザーが飽きてしまった

ゲームアプリのほとんどはこれまで「ガチャ」課金を収益の源泉としてきました。現在も、売上ランキングで上位を占めているのはガチャを用いたアプリです。この収益モデルは、かつてオンラインゲームに多く見られた月額課金制よりも課金顧客あたりの購入単価(ARPPU)を大きく増やすことができるため,非常に優れたマネタイズ方法だと思われていました。

しかし、継続課金によるパラメーターのインフレ問題があり、ある時点まではユーザー数の増加、購入単価の上昇が見込めるものの、長期的には減少が避けられないモデルであるともいえます。下のグラフのように、いくら人気ゲームであってもアプリ内課金モデルの限界ゆえに、一度収益の減少が始まってしまうと、それに歯止めをかけることはできないのです。

 

 

いまだにアプリ市場の収益の大部分を占めるゲームアプリですが、上で述べた飽和状態の市況を踏まえて、「ガチャ」課金モデル以外の収益化方法を考える時期に差し掛かっているのかもしれません。

ゲームジャンルごとに最適な収益モデルがある!

ゲームアプリと一口に言っても様々なジャンルがあります。実は、採用すべきマネタイズモデルはゲームのジャンルによって異なってくるのです。大まかにジャンル分けをしてみましょう。ゲームを遊ぶ際にユーザーに要求されるエンゲージメントとスキルのレベルで、最適な収益モデルは次のように整理できます。

 

 

1. ハイパーカジュアルゲーム/カジュアルゲーム

極力シンプルなUIで、チュートリアルなしに直感的にプレイできる。いわゆる「暇つぶし」ゲーム。カジュアルゲームのうち、よりゲーム性のシンプル化が進んだものがハイパーカジュアルと呼ばれます。

参照元: Happy Glass コップを水で満たしていくだけのゲーム。

 

気軽にプレイされる分、1セッションが短くLTVが低い傾向にあります。課金までして遊びたいと思うユーザーはほとんどいないため、主に広告収入によってマネタイズしている場合がほとんどです。カジュアルゲームに特化して収益を上げる方法を知りたい方は『カジュアルゲームをプロモーションする方法』をお読み下さい。

 

2. シミュレーションゲーム 

街づくりや経営など、現実世界を仮想体験するゲーム。

 

シミュレーションゲームや、ややゲーム性のあるカジュアルゲームになると、広告収入とアプリ内課金を組み合わせた収益方法がよく使われるようになります。

 

3. RPG

キャラクターを操作し、架空の状況下で与えられる試練を乗り越えて目的の達成を目指すゲーム。

4. 戦略系ゲーム

軍隊の指揮者のように、兵隊に行動を指示して戦闘するゲーム。

参照元: 大三国志

RPGや戦略系ゲームなど、プレイヤーにある程度のスキルが求められ、エンゲージメントの高いジャンルになればなるほど、ユーザーは課金をすることでゲームに勝ち進むチャンスを得ようとするため、マネタイズ方法はアプリ内課金が向いている傾向にあります。

5. ハードコアゲーム 

初心者では操作が難しいヘビーユーザー向けのゲームで、基本的にはPCかコンシューマーでのプレイを想定して作られます。しかし最近は「荒野行動」や「PUBG」など、アプリでもハードコアに分類されるゲームが数多く登場してきています。ゲームセッション時間が長いため、LTVは高くなる傾向にあります。

 

オンラインのハードコアゲームにおいては、開発の初期費用や維持費がかかることから、安定した収益の得られるサブスクリプションモデルが主に採用されています。

一方、アプリのハードコアゲームの場合はアプリ内課金モデルを採用し、重課金ユーザーを集める方法が主流です。しかし、Appleがゲームの定額課金サービスApple Arcadeを今秋に開始することもあり、今後はサブスクリプションでプレイできるハードコアゲームが主流になってくる可能性もあるでしょう。

 

前述したように、ガチャ課金による収益モデルには長期的に見ると限界があり、マネタイズ方法を多様化することが求められている時代です。一つのマネタイズ方法に頼るのではなく、様々なマネタイズモデルを採用することで、ユーザーは「アプリをより楽しむための方法」を選ぶことができるようになります。

 

さらにGoogle Playが調査した、各ゲームアプリにおける「課金ユーザーの復帰率(チャーン後に再びアプリに戻ってくる確率)」と、「課金額トップ5に入る重課金ユーザーによる収益の割合」を比較したデータを見てみましょう。

 

両者には明確な相関関係があります。すなわち、重課金ユーザーに依存しているアプリほど、ユーザーの復帰率が低くなってしまう(=ユーザーが早くいなくなるリスクが高い)ということです。

よって、100人のユーザーに100円ずつ課金してもらう方が、1人の優良ユーザーに10000円課金してもらうよりも持続性のあるマネタイズが期待できます。だからこそ、やみくもにガチャ課金を導入するのではなく、様々な課金方法を提供し多くのユーザーを引きつけた方が、長期的に見れば効率的に収益を上げることができるのです。

今年に入って、収益方法を一つのアプリの中で多様化することが、Google Play公式も紹介する海外のトレンドとなっています。

 

ゲームアプリの全収益モデル一覧!それぞれのメリットって?

マネタイズ方法を多様化するためには、まずどんなマネタイズモデルがあるのかを知っておく必要があります。ここからは、現在ゲームアプリに利用されているマネタイズモデルと、それぞれの特徴を一覧でご紹介します。

 

アプリ内課金

参照元: Medium

アプリ内課金は、金額を支払った分だけユーザーがアプリ内の特典をもらえるマネタイズモデルです。最近では、広告収入だけに頼っていたハイパーカジュアルゲームの開発者がアプリ内課金を導入するケースも目立っています。

その理由として、以下のようなポイントが挙げられます。

 

  • アプリ内課金をベースにしたマネタイズモデルは、運用コストが必要な広告とは違い、少人数でのオペレーションが可能であるため。
  • 広告収入に頼る場合よりも収益化のために必要とするインストール数が低いため、リリース初期の段階から長期的に見た収益プランの設計が可能であるため。

 

広告とアプリ内課金の併用が収益をアップさせたケースとしては、「中年騎士ヤスヒロ」というゲームの例があります。詳しくはアプリ内課金が小規模開発者にもたらす可能性 〜「中年騎士ヤスヒロ」の事例〜をご覧下さい。

 

 

リワード広告

参照元: Medium

リワード広告は、広告の視聴など収益につながる行動をとったユーザーに対して、アプリ内インセンティブなどの特典を与える広告フォーマットです。Google AdMobの内部調査によると、これまでは広告収入がほとんど無くアプリ内課金からの収益に頼っていたアプリ開発者が、このリワード広告を導入し始めている傾向にあることがわかっています。

このモデルを使うメリットには以下のようなポイントが挙げられます。

 

  • ユーザーが特典をもらえる方法を選べるようになる(動画視聴または課金)
  • 非課金ユーザーのリテンション率を向上させることができる
  • リワード広告を利用する非課金ユーザーが、満足度の向上によりその後課金してくれる可能性が高い

 

3つ目のポイントは意外に思えるかもしれませんが、実際に、最初のプレイ時にリワード広告を視聴したユーザーは、視聴していないユーザーよりもその後課金をする傾向にあることがわかっています。

 

有料アプリ

これは最もシンプルなマネタイズ方法ですが、無料アプリがあふれる中で有料のアプリをDLしてもらうのは難しく、アプリの収益ランキングを見ても、無料アプリばかりが上位にランクインしています。

 

しかしながら、有料アプリにもいくつかのメリットがあります。

  • 無料アプリばかりがあふれているため、有料アプリにおいては競合が少ない
  • 有料アプリを購入してくれるユーザーはエンゲージメントが高く、長期的に利用してくれる可能性が高い
  • 広告が表示されないためユーザーがストレスを抱えにくく、無料アプリよりも高いクオリティのユーザー体験を提供することができる

 

以上の3つがこれまで主に利用されてきた収益モデルですが。ここからは近年新しく登場したモデルを紹介します。

 

フリーミアム

参照元: NEW BREED+

 

フリーミアムとは、Free(無料)とPremium(プレミアム)を組み合わせた造語で、基本的な機能は無料で提供し、それ以外の機能へのアクセスは有料になるマネタイズモデルです。

音楽視聴アプリ「Spotify」はこのモデルを起用した代表的な例で、無料版には広告、シャッフル再生のみ、スキップできる回数が限られているなどの制限がありますが、プレミアム版にアップグレードすることで広告なしで好きな曲を再生できるようになります。

一定期間をすぎると自動的に有料に切り替わる無料トライアルと違い、ユーザーは最初にクレジットカード情報などの登録をする必要がなくいつでも好きな時に有料に切り替えることができるため、無料版をDLしてもらえる可能性が高くなります

そのため、フリーミアムモデルのマネタイズにおいては、とにかく、できるだけ多くのDL数を獲得することが重要になります。

 

サブスクリプション

参照元: Medium

月額など定期的に料金を支払うことで特定のコンテンツやアイテムにアクセスできるサブスクリプションモデルは、主に漫画アプリなどのコンテンツ系や、ツール系アプリで多く利用されています。しかしここ数年で、ゲームアプリにおいてもアプリ内課金の代わりにサブスクリプションモデルを使ってマネタイズを図ろうとする開発者も増えてきています。

Google Playのデータによると、ゲームアプリのサブスクリプション登録をしているユーザーの70%がこの課金モデルに対して好意的な反応を示していることがわかっています。

大ヒットを記録しているゲームアプリ『モンスト』の開発者であるXFLAGは、サブスクリプション登録をしているユーザーは、登録前と比較して1日のプレイ時間が20%向上したと述べました。

サブスクリプションモデルは長期的で安定した収益を得ることができるモデルであり、ユーザーが特定のアイテムに対して課金したことに後悔し、離脱してしまうリスクを避けることができます。

 

まとめ

ゲームアプリにおけるマネタイズ方法のトレンドは、これから大きく変化していくことが予想されます。今まで、アプリのジャンルによってマネタイズ方法が決定される傾向にあったゲームアプリ市場ですが、今後はひとつのマネタイズモデルに頼るのではなく、ユーザーにアプリへの支払い方の選択肢を多く与えるためにも、マネタイズ方法を多様化する必要があるといえるでしょう。

今回ご紹介した内容を参考にして、現在のマネタイズ方法を見直し、今の市況の中で収益化により適したマネタイズモデルを模索してみるのはいかかでしょうか。

 

参考記事