モバイルアプリサクセスストーリー:  Slackはどのようにして成功したか

はじめに

ご存知の通り、AppSamuraiではアプリのマーケティングに最も役立つテクニックをご紹介しています。みなさんはおそらく我々が紹介しているテクニックに感心しているかと思いますし、どれも理論上は素晴らしいテクニックばかりですが、果たして現実の世界ではどのように役に立つのでしょうか?それは実際にそれらのテクニックを利用した結果を見てみないと誰にもわかりません。
という訳で、私たちがご紹介する全てのグロースハックのテクニックが本当に有効だという証拠を、有名アプリのサクセスストーリーとともにお届けします。最も目覚ましいサクセスストーリーにみなさん刺激を受けることでしょう。今回はSlackについてご紹介し、素晴らしいカスタマーエクスペリエンスの提供が、アプリの驚異的な急成長に結びつくことをお伝えします。

 

Slackは圧倒的な速度で企業価値を高めている

 

優れたアイデア

2012年、Slackの全チームがGlitchというゲームの開発をしていました。メンバー同士の間でコミュニケーションをとるためのツールを探していた時にSlackが誕生しました。彼らは、アイデアをメールで送り合っていては開発が遅れてしまうことに気づき、プロジェクトの一部一部を共有するための解決策を探し始めたのです。そしてすぐにSlackの開発へと踏み出しました。その頃SkypeやIRC1)サーバを介して会話をするサービスのような代替手段はありましたが、社内コミュニケーション向けに作られたものは何一つありませんでした。こうして彼らは、Slackに似たサービスの必要性を吟味しました。そういったことも含め、多くの要素がSlackの創業者であるStewart Butterfieldたちが立てた計画に影響を与えました。

 

Slackが400万のアクティブユーザーを獲得するまでの軌跡

 

Slackはどのようにして成功したか

ではSlackがどのようにして急速に成功をつかんだのかを見ていきましょう。彼らが成し遂げていることの数々を知ったら、目が回ってしまうほど感心してしまうでしょう。

 

Slackの驚異的な成長の軌跡(縦軸はSlackのDAU。単位: 100万人)2)ベータ版を配布した2013年8月から約1年でユニコーン企業の仲間入り、2016年時点で企業価値が4000億円を越えた。

 

ユーザーのフィードバック

Slackの成長の鍵はユーザーのフィードバックです。彼らは、企業設立当初からどんな戦略においても、顧客と繋がること、その顧客からフィードバックをもらうことに集中しています。Slackは、Twitterアカウント、サポートページ、そしてApp Storeの詳細説明などあらゆるところで、「我々はユーザーに起こり得るどんな問題に対しても力になる」と、意思表示しています。

 

Slack ヘルプセンターのトップ画面

 

優れたアプリのオンボーディング

新規ユーザーにとってオンボーディングが大事であることを示すために、下記にいくつか画像を用意しました。アプリのオンボーディングは、ユーザーがそのアプリを気に入るか気に入らないかを決める瞬間です。Slackのオンボーディング画面は、Slackが直観的にわかりやすいデザインであること、複数のチャネルを選択できること、そして同僚と迅速にコミュニケーションできることが魅力として打ち出されており、多くのユーザーがSlackを試してみようという気になります。

 

 

ベータ版の公開

ソフトローンチ3)新製品や新サービスの販売に先駆けて、限定地域・対象にのみ試験的に公開することの主な長所と短所は過去の記事でまとめてお伝えしました。Slackの場合、ベータ版を公開してから7ヵ月の間に集められた情報は、次にやるべきことをしっかりと示していました。彼らは、一般公開に向けて改善すべき点を知るために、(ベータ版を配布した)8,000もの企業とともに走り出したのです。

 

 

フリーミアム

以前にモバイルアプリのプライシングモデルに関連した記事で力説した通り、まずユーザーにアプリを無料で試してもらい、その機能が気に入られたらお金を払ってもらうという手段は成功への鍵です。通常ここでアプリをどのようにして逸品に仕上げるかが課題となりますが、Slackは既に優れたアプリでした。従って、Slackがあっという間にユニコーン企業の仲間入りを果たしたのも不思議ではありません。

 

Slackの魅力的な価格体系の説明

 

ASO対策

SlackのApp Storeページを見ると、簡潔なアプリタイトルと適切な詳細説明、そして素晴らしい評価が目に入るでしょう。もう少し詳しく見てみると、最終アップデートが数日前であり、詳細説明にはユーモアが交えられているのが分かるでしょう。他には、スクリーンショットの背景にそれぞれ異なる色を使っていて、それがSlackのアイコンのテーマに沿っているということも気の利いた部分です。言い換えると、入念にデザインされたSlackのApp Storeページは、非の打ちどころのない印象を生み出しています。

 

SlackのApp Storeページ

インフルエンサーであることのメリット

Slack創業者のStewart Butterfieldは同僚と一緒にFlickrを立ち上げて以来、テクノロジー業界で著名人となりました。その写真共有サービスはGame Neverendingというゲームを開発している間に生まれたアイデアです。実際にはGame Neverendingは失敗に終わりましたが、Flickrは2004年にYahoo!に買収されました。Stewart ButterfieldはYahoo!を退社した後、ゲーム開発に戻りGlitchの制作に集中しました。Glitchもまた今一つ結果が出ず、Game Neverendingと同じ運命を辿りましたが、代わりにSlackという非常に大きな成功を生みました。要するに、Slackを立ち上げる以前からStewart Butterfieldは多くの人から注目されていて、それがSlackの進歩にいろいろな面で影響を与えたということです。さて今や気になるのは、「また彼が新しいゲームの開発に乗り出したら何が起こるだろう?」ということですね。

 

 

ソーシャルメディアの活用

ソーシャルメディアの利用においてSlackは、苦労して一度に全ての場所へ登場しようとするのではなく、Twitterのみを使って情報を発信することに決めました。よってTwitterは、Slackのサービスを向上させるために、Slackユーザーと繋がりすべてのフィードバックを受け取る重要なチャネルとなっています。そして、TwitterはSlackファンからたくさんの感謝や応援のメッセージを受け取る場所でもあります。

 

 

リファラルマーケティング

ご存知の通り、ユーザーはアプリを気に入ると、口コミでそのアプリの情報を広げてくれます。Slackの場合、リファー(紹介)するユーザーはチーム(複数人)で、それが他のチーム(複数人)に対してSlackを使うように勧めるため、急激な成長を実現しているのです。リファラルマーケティングは有益なユーザーをアプリに呼び込む連鎖反応を引き起こしますが、特にSlackでは驚異的な成果が見られます。

 

 

マスコミでの取り上げ

報道機関が社内コミュニケーションツールとしてSlackを利用してそれを気に入れば、自然とそれを記事にしてしまうというのが、Slackがニュース記事になるプロセスです。Slackが評価額0から40億ドルへ大きく成長した裏話の記事は嘘みたいな内容ですが、驚くなかれ、それは真実なのです!

 

Slack: 組織的転換の触媒となるもの

「私たちは、情報過多の克服、ストレスからの解放、今まで役に立たなかった企業活動から莫大な価値を引き出す機能となるものを提供しています。そしてより良い組織、チームを作る手助けをします。」by Stewart Butterfield (CEO, Slack)

 

連携の充実

Slackを支える哲学のもう一つの長所として、Slackは誰とも競い合おうとしていないことが挙げられます。その代わりに、Slackのカスタマーエクスペリエンスをより良くするための新しいソリューションを見つけようと力を尽くしています。ゆえに、ユーザーが仕事をするのをより簡単にするために、Slackのコミュニケーションサービスをユーザーが利用可能な他のツールと連携させることは、間違いなくSlackが進むべき正しい道です。

 

 

おまけ:  プロダクトへの配慮

可能な限り多くの人の役に立つような素晴らしいプロダクトを開発しなければ、上記で説明してきたことのどれも効果がありません。簡単に操作できて誤りのない、規定通りのアプリが、ロイヤルユーザーの獲得をもたらすということは言うまでもありません。

 

 

まとめ

Slackのサクセスストーリーから学べる貴重なノウハウはたくさんあります。しかし、Slackのチームがユーザーに注目してもらうために行った全プロセスの中で最も重要な要素は、ユーザーに素晴らしい体験を提供することです。マーケティング予算がどんなにたくさんあろうとも、顧客のことを考慮せず、また顧客と繋がる時間を用意しなければ、すべての戦略は疑いなく失敗に終わります。成功するためには、アプリを通してユーザーを助けることに集中して努力することが必須であると覚えておきましょう。

 

この記事は、AppSamurai社のブログ“Mobile App Success Stories: How Slack Did It”を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on AppSamurai in English under the permission from the author.

注釈   [ + ]

1. サーバを介して会話をするサービス
2. ベータ版を配布した2013年8月から約1年でユニコーン企業の仲間入り、2016年時点で企業価値が4000億円を越えた。
3. 新製品や新サービスの販売に先駆けて、限定地域・対象にのみ試験的に公開すること