コラボカフェやファンイベントなど、アプリゲームではすでに一般的となったオフライン施策。海外でもAmazon Goに代表されるように、オンラインからオフラインへの展開というムーブメントは加速しつつある。

「デートにコミットする」をコンセプトに掲げ、マッチングからデートの予定調整、そしてレストランの予約までを数回のやり取りで完結することができるデート直結型“デーティングアプリ”の「Dine(ダイン)」も、オフラインの施策を積極的に行っているサービスの1つだ。

そのDineが会員制スナック「Snack Dine」を東京・恵比寿にオープン。オープンから日はまだ浅いものの、すでに週末には新しい出会いや居場所を求める男女が訪れており、大人の社交場として静かに人気を集めている。

なぜDineはオフラインであるリアル店舗を、しかも「スナック」をオープンしたのか。Dineを運営する株式会社Mrk&Coの上條景介氏に、Snack Dineの狙いについてお話を伺った。

プロフィール

上條 景介氏

株式会社Mrk & Co 代表取締役CEO

東京農工大学工学部卒業。2008年、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。社内新規事業立案制度で優勝​、社長室に配属。ソーシャルゲーム事業の立ち上げに参加し、DeNA初のソーシャルゲーム「海賊トレジャー」をリリース。​2015年、DeNAを退職し、株式会社Mrk&Coを共同創業。2016年​「​デートにコミット」したデーティングアプリ「Dine」(ダイン)をアメリカとカナダでローンチし大きな話題に。日本では2017年11月にリリース。

新しいコミュニティを提案する「次世代型スナック」

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─Snack Dineについて教えて下さい。

上條 景介氏(以下、敬称略):Snack Dineは「次世代型スナック」であり、「これまでのスナックをリプレイスする」というのがテーマ。Dineのユーザーさんの中から、お店の会員権を獲得できたお客様とそのご友人のみが入れます。

─お店の会員権は審査制とのことですが、その基準はどのようになっているのでしょうか。

上條:詳しい仕組みをお話できませんが、Dine内の人気度や過去の通報履歴等から判断しています。おかげさまで当初の想定以上の会員申請をいただいています。

─そもそもスナックとはどのような場なのでしょうか。

上條:お酒を楽しむ場所がバーであり、お酒と一緒にコミュニケーションを楽しむ場所がスナックだと思っています。男女だけでなく、同性同士や店員と客、さまざまなコミュニケーションがこの狭い空間で毎晩生まれています。ある種の「コミュニティ」とも言えるかもしれません。

─スナックを現代風にリファインするため、こだわったポイントを教えて下さい。

上條:まずはお店に立つ人なのですが、出すお酒はプロのバーテンダーとソムリエが作っています。しかしスナックといえばママ。当初は雇おうと思っていたのですが、実は今お店で立っているママは全員Dineのユーザーさんなんです。すでにお店に来たことのあるユーザーさんで、接客もできそうな方をスカウトしています。今は全員で20名ほどいると思うのですが、リピーターも多くてすでに何回もやってくださっている、いわゆる常連のママさんもいっぱいいますね。

Snack Dineはお店の内側も外側も、みんなDineユーザーだからこそ、居心地の良いコミュニティなんです。

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─お店のシステムで工夫されたポイントはありますか。

上條:Snack Dineのメニューはアプリをインストールしないと見られない仕様になっています。それだけでなく、アプリの中でその場にいる他のお客さん全員のプロフィールが見られるんですよ。

普通ならいきなり声をかけても、「今日暑かったですね」みたいな浅い会話しかできませんが、プロフィールを見ながら話しかけられることで、「広告会社にお勤めなんですね。私もネット広告の仕事をしているんですよ 」というように最初から深いトピックで会話を始められるんです。もちろん、その場でアプリからDineのリクエストも送れますし、次のデートの予約もできるんです。

リアル店舗だからこそ得られる、サービスとしての「信用力」

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─最近では、一部の若者の間でスナックブームが起きています。

上條:オンラインサロンが流行った背景と同じですが、職場と家以外で自分の拠り所となる、サードプレイスがみんな欲しいのだと思います。そしてそれはオンラインではなく、オフラインのリアルな場所で、です。

以前、「Yakiniku Dine」という、一夜限りで男女9組だけ入れるポップアップ店を開いたのですが、18人の定員に対して1000人ちかくもの応募が集まったんです。値段もけっして安くはありません。「若者はコミュニケーションが苦手になった訳ではなく、ただ特別な場所を求めていたんだ」と、そこで確信しました。

最近ではSNSの普及によって、「いかに自分が特別な場所で過ごしているのか、みんなに知ってもらいたい」という欲求が一段と強くなったと思います。特別な場所、話題性のある場所に行くだけでも楽しいのですが、それを発信するのも楽しい。そこで、Dineのユーザーさんにとって何か特別となるような、みんなが来たいと思える場所を作ろうと思ったんです。そこで現代の若者に受け入れられるようにアレンジしたスナックである、Snack Dineを立ち上げました。

─以前開催したリアルイベント、「Yakiniku Dine」とSnack Dineの違いはどこにあるのでしょうか。

上條:Yakiniku Dineは「特別感の演出」として、Dineの中でも最上位ブランドとしての位置付け。あえて振り幅の一番上のイベントを開催することで、「Dineはこういう世界観である」と発信することが目的でした。

Snack Dineは同じリアルでの施策ですが、その目的は全く違います。Snack Dineの目的は「Dineの信用力」を獲得すること、そしてもう一つが今までリーチできなかった新しいユーザー層の獲得です。

世の中ではマッチングアプリは怪しいものと思っている人がまだまだ多いんです。特にインターネットに疎い人からは特に怪しいと思われています。そんな彼らにとって、「リアルでも店舗を持っている」というのは会社のステータスとして、1つの「信用力」になるんです。

また、そうしたインターネットに疎いユーザー層の獲得も目的にしています。ここにはDineのユーザーさんが友達を連れてくるんです。そしてその友達はDineなんて知らない人がほとんど。「え!Dineなんか知らなかったけどめっちゃいいじゃん!」という友達の言葉が聞きたくて、ユーザーさんは非会員の友達を連れてくるんです。

オフライン展開の鍵は「新しいコミュニケーション」の創造

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─アプリサービスの企業がリアル店舗を出店されるメリットはどこにあるのでしょうか。

上條:特にマス向けの広報戦略的なメリットはあるでしょう。実際、女性誌やテレビからの取材依頼が頻繁に届いています。もしDineがアプリしかやっていなかったら、こんなに注目されることはなかったと思います。

ビジネスの大局観的な視点からの話をしますと、僕は世界的に「IT企業がリアル店舗を持つ」というムーブメントが加速すると思っています。

一昔前、リアル店舗が自社アプリを作るという流れがありました。マクドナルドやスターバックスのアプリをイメージしてください。しかし今、シアトルのAmazon Goや、中国のLuckin Coffee、ニューヨークで話題のSweetgreenなど、IT発のリアル店舗の出店がますます増えてきています。基本的にはITのマーケティング力をリアルでも活用して店舗を増やしていくという戦略です。

─しかし、日本でもそのムーブメントはくるのでしょうか。

上條:確かに、日本ではイマイチ流行りそうにない。日本でAmazon Goをやっても、競合にはすでにセブンイレブンがいます。つまり、モノが充足している日本の社会において、コモディティ商品の改革なんてたかが知れているんです。

では日本において、IT企業がリアル店舗をやる意味はどこにあるのでしょうか。私は新しい「コミュニケーション」の形を作ることだと思っています。

例えば、飲食店で美味しいものが食べられるのは、日本ではもう普通なんです。欲しいものがどこでも買える。じゃあ、今の現代に必要なものってなんだろうと考えると、「コミュニケーション」だと思っています。最初にも話しましたが、みんな居場所が欲しいんです。お酒なんてどこでも飲める、けどどこでも落ち着けるわけではない。

Snack Dineは、Dineユーザーにとっての「居心地の良い、出会える場所」を目指していきます。僕らもけっこう楽しみながら運営していまして、もしかしたら今後、店舗数を拡大するかもしれません。

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<取材・文=大木一真 写真=矢野拓実>

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