Spotifyはどのようにアジアの難しい6市場を制したか。上陸前の日本の事例もご紹介!Part2

この記事は、Spotifyのグローバル展開の徹底分析の第二部(Part2)です。1億人以上のユーザーを獲得するためにSpotifyが実践している9つのグローバル成長戦略はこちら

 

ユーザーに合わせて現地の商品や支払いシステムを決める

Spotifyのアジア戦略は、ターゲットの市場で人気のあるローカルコンテンツの改善を含みます。言い換えると、東南アジアで大流行しているKpopミュージックの著作権を得るのに重きを置いているということです。
そして彼らがリスナーとアーティストを獲得できてくると、彼らは支払いシステムやパートナーシップに投資することに注力します。そうすることで実際の取引が円滑に進むからです。

 

「簡単な」支払いシステムとローカルの人々の習慣は、単に関連しているだけでなく依存関係にあります。

 

Kaur氏はアジアと中南米での拡大から学んだ主な経験としてこう述べていて、だからこそ彼女たちは通信業者とのパートナーシップに依存しています。

 

彼女はCampaign Asiaで「アジアでの通信事業者パートナーは、私たちの事業の大部分を占めています。良い支払い方法はたくさんあります。その中から私たちに合ったものを見つけるのです。」と述べました。

 

そして彼らはそれを見つけました。

 

インドネシアとフィリピンでは、他の先進国の市場と比較して、クレジットカードでの支払いは珍しいので、Spotifyは現金支払いを初めて提供しました。また、銀行振り込み、ATM、Doku Wallet(インドネシアの決済サービス会社)、コンビニエンスストアでの支払いなど、他の一般的なオプションも利用できるようにしました。

 

Spotifyは、シンガポールのSingtelと協力してSpotify Premiumユーザーのモバイルデータ通信を無制限にしたように、電話会社のIndosat Tbk PTとパートナーシップを組んで毎月の契約プランを提供しています。

 

その地域の人々の期待に沿って価格を調整する

これは利益をあげる一つの手段です。なぜなら価格設定次第でお客様を満足させることができるからです。満足度の高いユーザーはより多くの新規ユーザーを呼び込むので、たとえ低価格でサービスを提供しても、長期的に見ると全体の収益を上げることができます。
Spotify Premiumは現在、シンガポールでは月額7.10ドル、香港では6.2ドル、香港では5ドルで提供されています。これは、Spotifyがアジアで働いて見つけ出したベストプラクティスです。フィリピンとインドネシアでは4ドル以下です。これらは全て、アメリカでの提供価格である10ドルを元に調整されています。

 

 

 

(世界の他の市場ではどういった価格なのかは、非公式のSpotify価格指数をご覧ください。)

 

予期せぬヒットに備え、うまく対応する

Kaur氏によれば、今でこそSpotifyのアジア市場におけるデジタル広告のポートフォリオは様々な企業で構成されていますが、最初はそういった企業を獲得できていなかったそうです。

 

「最初は音楽と何かしら親和性があって自らやりたいと言ってくるような企業が良いと思っていました。」しかしながらSpotifyは金融業界がSpotify上で広告宣伝に成功しているのをみて考えを改めました。たとえば香港の大手保険グループであるFWDは2014年にMob-Ex awardsという広告カンファレンスでSpotify上に出した広告を評価されて3つの賞を受賞しました。「実際にわかったことは、デジタル広告と音楽はどんな業界とも交わることができ、とてもクリエイティブなやり方ができるということです。」とKaur氏は言います。

 

 

日本上陸

「Coming Soon」から数年後、Spotifyは高い期待がかかり多くのハードルのあった日本にて、とうとう今月の初旬に招待制のサービスとして開始しました。数あるハードルの多くは、デジタルコンテンツの欠如に根ざしています。日本は、世界第三位の経済大国であり、周りの国に持たれるハイテクなイメージから考えれば衝撃的な現実です。

 

Spotifyのリリース当初、年間売上高30億米ドルもあり世界で二番目に大きい音楽市場があるにも関わらず、Spotifyの日本でのローカルパートナーである広告代理店の「電通」は、日本の「デジタル音楽」市場はまだ初期段階であると考えていました。なぜなら日本にはオーディオ広告というものを広く受け入れられる土壌がまだないからです。
2015年には、Apple、Google、LINE、AWAなど音楽ストリーミングの強豪たちが続々と日本でサービス開始しましたが、どのサービスもそれほど成功しませんでした。ダウンロード率は高く、無料お試し期間があるにも関わらず、「有料へのコンバージョン」という壁に皆ぶち当たりました。

 

 

Spotifyは、完全な無料体験とユーザー間のシェアの容易さから、ストリーミングサービスに影響を与える第一人者となりました。ドイツでは、日本と同様CDのセールスが市場を支配していて、1998年から衰退していましたが、2012年のSpotifyの上陸に伴い、再び音楽市場が活気を取り戻しました

 

電通エンターテイメントUSAの社長である坂田雄馬さんは、電通は「Spotifyが日本市場のオーディオ広告のパイオニアになる」と期待していると語ります
Spotifyがこのユニークで難しい新市場で足場を手に入れたかどうかはまだわかりませんが、上陸前の体制から有益なベストプラクティスを学ぶことはできるでしょう。

 

将来のユーザーを気にかける

Spotifyは、新しいユーザーを特定のサブドメインの「coming soon」ページにリダイレクトさせることでこれを実現しています。これは日本の例ですが、訪問者に「準備中」とアナウンスしています。

 


 

新しい市場に合った新製品を見つけ出す

日本の頑強なCD業界の巨人に対峙するためにーCDはいまだに、日本における音楽の売上の80%を占めています。しかし世界では、CDは既に技術遺産とされている希少な媒体なのです。ーSpotifyは、ユーザーの考え方を、プラットフォームや大規模なストリーミングに変えようとしています。

 

音楽業界コンサルティングのMusic Solutions社の社長であるSebastian Mair氏によると、このSpotifyの挑戦は、Spotifyがフリーミアムで楽曲を提供し続け、その楽曲の質と選曲を保証しているということを意味します。同時にローカルコンテンツに重きを置いていて、国内アーティストを支持する日本の音楽のファンの内85%を抱えています。

 

彼は、現段階のSpotifyには、「リリースする上で最低限埋めなければならない欠点がいくつもある」と言っています。しかし、「ほぼ無料」の聴き放題サービスはないので、これはSpotify Japanにとって明確な機会であり、Spotifyアジア全体の戦略にも沿っています。

 

Kaur氏は昨夏の7月に、「ローカルミュージックの曲数がかなり増えるまでは、我々は市場に参入しない傾向にあります。なぜなら、本当に強力なローカルコンテンツがあるかを確認したいからです。」と言いました

 

Mair氏曰く、ブランドの明確な位置付けを除いて、Spotify Japanは「常に自分の世界であるかのような状態の」市場にサービスを適応させる必要があります。この目的を果たすべく、Spotifyは日本の多くのオンラインゲーマーのために、カスタムゲームモードを用意しました。また、カラオケの歌詞をサポートするためにプレイステーションと提携し、プレイステーションミュージックの楽曲も提供できるようにしました。

 

最初のローカルユーザーでローカライズをテストする

Spotifyは、新市場に参入する際リリース直後に「招待制」の戦略を用いることがよく知られています。これにより堅実で忠実なユーザーベースを長期間獲得しています。

 

このベータテスト期間は全く無駄ではありません。Spotifyのローカルチームは、全てのユーザーからのフィードバックと反応を元に製品を改善し、製品を市場に合わせ、公式リリースを成功させる新しい方法を調査します。

 

Kaur氏によれば、これらの製品への反応は、「本当にどこからでも来る」そうです。そしてそうした反応は最終的に、Spotifyのグローバルサービスに影響を与えます。「フィードバック」を受けて、ユーザーにとって最善の決断を下すことができるようになったようです。

 

「この先より多くの国に参入するたびに、ただそこにブランドを構築するのではなく、そこで得た新しい発見を生かすことを大事にしていきます。」とKaur氏は強調しています

 

リリースの前に経験豊富なローカルチームを構築する

Spotifyが日本に展開する計画を発表する前に、同社は2016年1月に日本チームのメンバーを12人雇用するなど、ローカルチームを構築していました。彼らはまた、東京での事務所設立に取り掛かっていました。
これは、「人」が重要であるという深い理解から来ており、その地域の消費者やビジネス文化を理解している「人」は大きな影響力があります。急成長を遂げているチームの求人広告によると、流暢な日本語が話せるか、日本語に固有の文化的なニュアンスを先天的に理解しているか、というのがほとんど全ての役職で必要不可欠な条件です。

 

 

常に長期的に考える

現在のアジア市場はKaur氏のチームを「かなり忙しく」していますが、アジアの他の地域に進出する計画があり、常に次のやるべきことを考えています。

 

会社が損益分岐点に対してどうか尋ねられると、Spotifyの海外支社および事業開発の責任者であるFaisal Galaria氏は、「短期的な利益ではなく、それを上回る長期的な成功を目指しています。」とイギリスのpaidContent紙で語りました。

 

「我々は、収益性を重視して競争するよりも、1つでも多くの国に企業を据えることに集中しています。それにはかなりの投資が必要です。」

 

Spotifyは、中国の巨大な市場に参入するのか、それに伴う99%の海賊版音楽の拡散をどうするのかということについて口を閉ざしています。今のところ、Spotifyは最初に参入した市場に焦点を当てていますが、本当のところはわかりません。おそらく数年後にはこれまでと違う見出しの記事を中国語で見ることになるでしょう・・・

 

この記事は、OneSky上の記事 “How Spotify Wins 6 Challenging Markets in Asia (Includes Japan Pre-Launch Case Study)“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on OneSky in English under the permission from the author.