ターゲットユーザーに愛されるアプリをデザインし、実現させるために、見逃してはならない重要なポイントがあります。 それは、徹底的なリサーチです。

このリサーチなしでは、アプリの開発チームは直感や予測だけに頼ることになってしまいます。つまりターゲットユーザーが実際に求めているもの、求めている理由、そしてそれを実現させる方法がわからないままアプリの開発を進めることになってしまうのです。ターゲットユーザーに満足してもらえるUXが実現できなければ、ユーザーの離脱にもつながりかねません。

34%のユーザーは、アプリをDLするかを決定するポイントとして機能性を挙げています。そして、アプリをDLしてもらえたとしても、ほとんどのユーザーはアプリに戻って来ず、中にはアプリを消してしまうユーザーもいます。良いオンボーディング体験ができなかったユーザーはすぐに離脱してしまう、というのが現状なのです。

では、どうすればユーザーに満足してもらえるUXを提供できるのでしょうか? その答えが、UXリサーチです。

アプリの開発を急ぐ前に、ターゲットオーディエンスについてたくさんの問題提起をし、ユーザーにとっての理想のアプリ体験に関する洞察をできる限り多く集めることが大切です。ここで、UXリサーチが必要となるのです。

まず最初にUXリサーチャーが考えるべき問題は、「ユーザーがなぜそのアプリをDLしたいと思うのか」ということです。多くのアプリデザイナーや開発者は、既にすべての答えを知っていると思い込み、統計を見落としがちです。アプリの見た目だけを重視し、App Storeで目を引くものを作ればたくさんのユーザーがDLしてくれるだろうと考えてしまうのです。

しかし、見た目よりもアプリの機能性がより重要なのです。

ミレニアル世代のユーザーに尋ねたところ、アプリをDLする決め手となるのは機能性であると答えたユーザーが48%であるのに対して、デザインであると答えたユーザーは37%でした。

また、デザインだけでなく、親しい友人からの紹介よりも機能性が重視されていることが分かっています。ミレニアル世代のユーザーは、競合他社のアプリではできないことをそのアプリに求める傾向があります。彼らは楽しみながら使えるアプリを求めており、アプリを使うことでポジティブな体験ができることを望んでいるのです。

ミレニアル世代は最もアクティブ率の高いユーザー層です。そして、彼らが重視するのはアプリの機能性やUXであるということを念頭に置いて、アプリの開発に取り組む必要があります。

アプリの開発段階において、UXリサーチャーはどのように関わるべきか

アプリの計画、開発、リリースの各ステージによってUXリサーチャーの役割は変わってきます。まずはユーザーの観察、そしてユーザーの理解から分析へと、最終的にアプリのプロジェクトにリサーチ結果が活用されるまで続きます。

UXリサーチャーは、各ステージにおける具体的な目標と注力するべき範囲を把握する必要があります。今回は、UXリサーチャーの役割をステージごとに詳しく分解して説明していきたいと思います。これらを参考に、ターゲットユーザーが求めているものを理解する方法を学び、それを活用してユーザーに愛されるアプリの開発を実現させましょう!

ステージ1. 観察 – 探偵としてのUXリサーチ

リサーチのステージは、観察から始まります。私はこれを「探偵ステージ」と呼んでいます。UXリサーチャーはデータの収集を始める前に、まずアプリのプロジェクトの全体像を把握する必要があります。

これは、自社アプリの解決すべき問題をはっきりと理解しておくことで、どんなデータを集めるべきかをより明確にできるためです。また、アプリ開発の関係者全員のビジョンやアプリに求める要望を把握し、会社の最終目標を理解しておくことも重要です。これらを理解した上で、ターゲットユーザーの望みやニーズ、ユーザー行動、さらに、ユーザーの一般的なアプリの使い方に至るまで、あらゆるデータを収集していきます。

キートレンドやリサーチによって得た洞察、また重要な研究結果などの情報を集めることで、アプリの開発の方向性を決める手がかりとなります。

このステージにおける目標は非常にシンプルで、ターゲットユーザーやアプリ業界のトレンドに関連する情報をできる限り多く集めることです。

集めた情報に関しては後ほど細かくリサーチするため、このステージではトレンドの存在理由などについては深く考え込む必要はありません。まずはデータや統計の収集に集中しましょう。ここで集めたデータからは、以下のような洞察が得ることができました。

1.ユーザーは、モバイル端末の使用時間のうち15%をゲームアプリに費やしているのに対し、ニュースアプリはたった2%である。

2.インターネットにアクセスする方法として、午前中はモバイル端末、仕事中はデスクトップ型のパソコン、夜はタブレット端末とモバイル端末を使用する人が多い。

3.アプリのアイコンの色では青色が圧倒的に人気であるのに対し、食事やドリンクのアプリで人気のあるアイコンの色は赤色が30%、青色は6%のみである。

特定のターゲットユーザーに関する詳細な情報を多く集めることも重要ですが、エンドユーザーの要望や行動のパターンを認識するうえで、UXリサーチャーにはこのようなモバイルアプリの統計が鍵となります。

ステージ2. 理解 – マーケットリサーチャーとしてのUXリサーチ

このステージでは、収集したデータを理解する工程に移ります。最初のステージで見つけた統計は、まだ単なる山積みされた数字でしかありません。ターゲットユーザーが求めるUXのデザインを始める前に、この集めた数字を理解する必要があります。

前回のステージでわかったこと

  • ユーザーはモバイル端末を午前中と夜に使用する
  • モバイル端末ユーザーはニュースを読むよりもゲームに時間を費やしている
  • 青色のアイコンがもっとも人気があるが、フード系のアプリでは赤色が人気である

このデータを理解するために、これらに「なぜ」を付け加えます。

  • なぜ、ユーザーは午前中にモバイル端末を使用するのか?
  • なぜ、モバイル端末ユーザーはニュースアプリよりもゲームに時間を費やすのか?
  • なぜ、青色は最も人気のあるアイコンカラーなのか?

もちろんターゲットユーザーの習慣や行動、要望を特定することは欠かせませんが、ユーザーの感覚や行動の理由を理解しないことには、根拠なく闇雲にアプリを開発することになってしまいます。そのため、特定できたデータに対して、なぜそのような結果になったのかを検証する必要があるのです。

ここでマーケティングリサーチャーが活躍します。ターゲットユーザーの考えや行動の理由を深く理解するうえで、以下のような様々なリサーチ方法が活用できます。

インタビュー: インタビューを実施することで、ターゲットユーザーから直接情報を収集することができます。Q&A形式のインタビューや、さらにオープンな会話形式のインタビューなどを行うことで、ターゲットユーザーが実際に求めるものに関して必ず何かしらの発見を得ることができるでしょう。

調査: ターゲットユーザーの調査やアンケートを実施することで、小さなデータではありますが、膨大な量のデータを収集することができます。インタビューで得られるような具体的な答えは得ることができない可能性はありますが、より多くのユーザーに届き、異なる視点の情報を多く集めることができます。

カードソート: カードソートとは、リサーチャーがターゲットユーザーに対していくつかの重要な用語を与え、それらの用語を重要度によってユーザーにカテゴライズしてもらうことを指します。これを実施するに当たって、ユーザーのためにカテゴリー名を作ったり(クローズドカードソート)、もしくはユーザー自身にカテゴリーを作ってもらったり(オープンカードソート)することもできます。

A/Bテスト: A/Bテストを実行することで、UIを考える際にどの要素が最も成果があるのかを特定することができます。テストしたい特定の要素(ボタンや見出し、カラーなど)に対して2つのバリエーションを用意し、ランダムに選んだターゲットユーザーに見せることで、どのバリエーションが最も良い結果が得られたかを分析することができます。

ステージ3. 分析 – 考古学者としてのUXリサーチ

考古学者が遺物を分析して歴史についての事実を導き出すように、UXリサーチャーは調査結果を分析して、ターゲットユーザーの具体的なイメージを作り、アプリ開発を導かなくてはなりません。

ここで、UXデザイナーが活躍します。

このステージでは、前述した2つのステージから得られた調査結果を分析し、アプリに応用していきます。以下の項目のように、最初の調査で得られたデータと2つ目のステージで集めた定性情報を組み合わせ、アプリの方向性に関する結論を引き出していきます。

  • ユーザー求めるアプリと、その理由から、どんなトレンドが見えてくるか?
  • ターゲットユーザーが最も楽しんでいる特定のUX機能はあるか?
  • どのような機能性があれば、アプリを継続的に利用してもらえるか?

収集した発見と共に、ターゲットユーザーのペルソナを具体的に組み立てます。

これまでに集めた情報を用いて、ターゲットとするユーザー像を作ります。これには、ユーザーが求めているもの、求めている理由、アクセス方法、使用目的などの内容が含まれます。ユーザーが一番解決したいと思っている問題や、その問題に対してどのような解決策を求めているのかを明確にすることが重要です。これは具体的であればあるほど、より良くなります。また、ひとつのペルソナを組み立てるだけで終わらせないようにしましょう。わずかに異なったニーズやモチベーションを持った、複数のターゲットユーザーがいることを忘れないでください。

次のステップは、アプリ開発チームに調査結果を提示することです。これにより、開発チームの方向性がユーザーの求めているものと同じであるかを確認することができます。

調査の提示には、以下のように様々な方法があります。

報告書: 最も一般的なのは、報告書で調査結果を提示するという方法です。この形式を使うことで、これまでに集めた調査結果や洞察をすべて組み込むことができる一方、あまりに多くの情報を詰め込みすぎて、伝わりずらくなってしまう可能性もあります。最も重要な調査結果やターゲットユーザーのペルソナを手短にわかりやすく明記し、簡単に理解できる報告書を作成する必要があります。

プレゼンテーション: 食事などを用意してアプリ開発チームに集まってもらい、重要な調査結果や洞察をプレゼン形式で発表するという方法もあります。退屈で堅苦しいプレゼンにする必要はなく、より視覚的なものを多く含め、最も重要な調査結果に焦点を当てましょう。プレゼンは、必ず開発チーム全員の関心を引くもので、簡単に理解できる内容にしてください。

ポスター: ポスターを使ってターゲットユーザーのペルソナを提示するという方法であれば、一目で要点を理解してもらうことができます。また、作成したポスターをオフィスに飾ることで、アプリの開発中も常にターゲットユーザーのことを念頭に置いておくことができます。以下の画像は、『MailChimp』のターゲットユーザーの2種類のペルソナです。このように、シンプルでわかりやすいデザインにするように心がけましょう。

まとめ

ターゲットユーザーに愛されるアプリを開発するためには、無闇に進めるのではなく、時間をかけて徹底的なUXリサーチを行うことが大切です。このリサーチ結果が、アプリ開発の方向性を決めるのです。

ユーザーを満足させられるUXが実現できなければ、ターゲットユーザーはすぐにアプリを去ってしまうでしょう。アプリの見た目が素晴らしいものであるからといって、必ずしもターゲットユーザーが求めているUXを提供できるとは限りません。ターゲットユーザーのことを学び、要望や行動理由を明らかにし、調査結果に沿ったモバイルアプリを開発しましょう。

この記事は、Apptentive社のブログ”What Role Does UX Research Play In Creating Better Apps?“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Apptentive in English under the permission from the author.