思い込みで収益が下がっているかも?競合に差をつけるアプリのA/Bテスト

 

経営者であれば競合分析の重要性に異を唱える人はいないでしょう。ですが、競合分析によって「ふむ、競合がXXをやっているのであれば私たちもそれをやらなくては!」という考えに陥りやすいのも事実です。

 

しかしながら競合がやってうまくいったことを自社でやってもうまくいくとは限りません(Zune 1)Microsoft社によって開発されたポータブルオーディオプレイヤーのブランド名。2006年の販売開始から約5年で生産終了が決まったのような失敗例もあります)。

 

こちらはアジア市場向けのマッチングアプリ「Paktor」のA/Bテスト事例です。このアプリでは、マッチングの可能性がある相手へ興味を示すためのボタンとして親指を立てるアイコンを使用しています。しかしながら他のマッチングアプリでは同じ目的のボタンでも、ハートやチェックなど様々な種類のアイコンを使用しています。メッセージボタンのアイコンについても同様です。「Paktor」のチームは、いいね率や再訪率などのエンゲージメントを改善する方法について議論を重ねました。彼らは、親指を立てるアイコンからハートのアイコンに変えることでエンゲージメントを改善できるに違いないと考えていました。アプリの目的である「愛」をより反映しているというもっともな理由があるだけではなく、多くの競合が既にハートのアイコンにすることで成功していたからです。

 

元のアプリ             ハートのアイコンバージョン

 

 

インターネット上で出会うことが一般的になりつつあるのとともに、マッチングアプリの数は増えています。しかしアプリによらず、「マッチングの可能性のある相手へ興味を示す」というコンセプトの核は、全てのインターネット上での出会いに共通します。マッチングアプリにはすべからく「私はこの人が好きです。」「この人のことを知りたいです。」といったことを伝える何らかの機能が実装されています。しかし相手に興味があることを表現しているアイコンはアプリによって異なります。

 

Coffee Meets Bagel                                Tinder                                 Match.com

 

この「イエス・ノー」の表現は間違いなくマッチングアプリで最重要のアイコンです。ユーザーがこれをクリックしなければアプリでマッチングは生まれません。つまりクリックされて初めて出会い系アプリに価値とエンゲージメントが生まれるのです。マネタイズ戦略がなんであれ、エンゲージメントが高いリピーターの数を増やすことが鍵となります。

 

「Paktor」はどのアイコンが最も多くのエンゲージメントを生み出せるかを考えました。そして彼らは求愛を示すのにはハートがより良いと仮定し、元々そのアプリが使っていたアイコンである親指を下げたものと立てたものの組み合わせと、×とハートの組み合わせでA/Bテストを実施しました。

 

  元のアイコン            新しいA/Bテスト 

 

A/Bテストを実施したのは「Paktor」開発チームの英断でした。というのも、(より良いエンゲージメントが得られると思っていた)×とハートのコンビネーションではエンゲージメントが6%下がり、月間成長率にすると26%もの差になることがわかったからです。

 

×とハートのアイコンはTinderやClover、Hingeのようなマッチングアプリでうまくいっているという事実があるにも関わらず、「Paktor」はハートのアイコンはアジア人ユーザーにとって相手に示す親密度を表すアイコンとしてしっくりくるものではないと考え

 

Clover                                     Hinge

 

ハートのアイコンは再訪率を2.3%も下げていることが統計的にみても明らかになりました。これは年間11%もの収益の損失です。

 

「Paktor」はテストせずにアイコンを変更しようとしていました。×とハートのアイコンが良いと信じ込んでいたからです。彼らがこのA/Bテストから学んだのは、全ての仮説にはテストをする価値があるということです。

 

この記事は、HIPMOB上の記事 “A/B Test to Stay Ahead of the Competition“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on HIPMOB in English under the permission from the author.

注釈   [ + ]

1. Microsoft社によって開発されたポータブルオーディオプレイヤーのブランド名。2006年の販売開始から約5年で生産終了が決まった