Uberは巨大ビジネスへと成長しました。企業評価額は600億ドルを超え、世界300以上の都市に展開しています。さらにそのうち80の都市で現在収益を上げています。しかし、今後もその水準の収益を維持できるのでしょうか?

 

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Uberは現代人にオンデマンドの交通手段を与えてきました。
2009年以来、Uberは目を見張るような高成長を見せてきました。多くの国のお茶の間にその名が広まり、ハイテク業界でいう「オンデマンド世代」の筆頭サービスになりました。Uberはこのビジネスモデルを最初に打ち出したわけではないかもしれません。しかし、彼らにはオンデマンドビジネスモデルの代表例であるという自負があるでしょう。

 

今日、オンデマンドビジネスの可能性は無限大です。たとえば、

 

  • 洗濯物がたまってる?Washioを使えます。
  • 何かを届けたい?Postmatesを使えます。
  • 花を贈りたい?Bloomthatはどうでしょう。
  • 髪が伸びてきた?Shortcutで切れます
  • 引っ越しする?それならLuggが使えます。

 

まだまだあるのです!Uber for Xは様々な業界にオンデマンドビジネスを導入する合い言葉になっています。

 

しかし、もしビジネスモデルが違ったらどうでしょう。Uberのようなオンデマンドのビジネスモデルの企業がサブスクリプションのビジネスモデルを導入したら何が起こるのか、これを考えてみる価値はあると思います。

 

Uberがサブスクリプションモデルを導入した場合のユーザー体験の変化

まず、Uberがサブスクリプションモデルを導入したら、ユーザーの支払い方法はどうなるのかをきちんと定義しましょう。一概にサブスクリプションモデルといっても以下のように多くのパターンが考えられます。

 

1.月額定額で移動に使える「Uber マイル」を購入する。

2.月額定額でUberの利用料を支払い、移動時に前払いする。

3.月額定額でUberの利用料を支払う。

4.移動ごとに支払い、月額定額で追加機能(たとえばビジネスマン向けの機能)を購入する。

 

では、もしUberが一番上のビジネスモデルに変更したら、ユーザーにとってUberはどのようなものになるのでしょうか?

 

まず思い浮かぶのは料金体系がシンプルになるということです。この料金体系でUberの利用者がある程度計画的にサービスを利用することができれば、(たとえば毎月何マイルUberを利用して移動するかを把握してUberを使うと、)それに対応した料金のプランを選択することが可能になります。さらに、(特に一度のサービス利用にいくらかかっているかがわかりにくい現在の料金体系や、変動料金制などと比べると)自分がいくら支払っているかがわかりやすくなります。加えて、他の交通手段の価格と比較しやすくなるのです。

 

ユーザーの他サービスへの乗り換えを減らすこともできます。今だったら、10分以内に到着するUberのドライバーがいないとき、Lyft 1)アメリカのカーシェアリングサービス か公共交通機関を使ってしまうでしょう!しかし、もしあなたがUberに前払いしているとしたら、10分待って前払いしたマイルを使おうとするでしょう。

 

ユーザーのサービスに対する期待と要求が高まることも考えられます。もし、月額支払っていたら、Uberには常によいサービスを提供することを期待するでしょう。Uberがそうすることを信じて前払いしているのです。もし、よいサービスを受けられなかったら、または、困ったことがあったら、問い合わせすることも増えるでしょう。

 

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    「今月分のマイルがそろそろつきちゃうからこの辺で下ろしてもらえませんか?」

 

サブスクリプションモデルを導入した場合のUberの収益モデルの変化

まず、価格設定が柔軟にできなくなるでしょう。現在、Uberの重要な強みの1つは常に価格を微調整し、ユーザーのニーズと他の外的要因に合わせて最適化できることです。変動価格制を使うと、特別なイベントや、コンサートなど繁盛し、サービスへの需要が高いときに価格をつり上げることができます。価格が均一なサブスクリプション制を導入した場合、(変動価格制の前払い制度を作らない限り)そのような微調整は不可能になるでしょう。

 

さらに、料金プランを利用者の地理的な条件に合わせて制作しなければなりません。Uberは様々な客層に様々な状況で利用されています。つまり、1つの料金プランで利用者全員が納得することはないでしょう。Uberは利用者と利用状況にあう料金プランを作成するために調査をしなければならないでしょう。

 

ビジネスを数量的に測定し、予測できるようになります。もし、ユーザーが月額定額を支払うようになれば、Uberは月額定期収入を算出できるようになります。Uberがサブスクリプションビジネスから定常的に生まれる利益を手に入れることで、測定できる指標には以下のものがあります。

 

  • 顧客生涯価値(LTV)、つまり、ユーザーが一生のうちにどのくらい支払うかを計測できます。この指標と顧客1人あたりの獲得コストを比較することで、リスクを抑えた新規顧客獲得戦略をたてることができます。
  • チャーンレート、つまり、ユーザーがどのくらいサブスクリプションから離脱したかを計測できます。この数値に着目することで、どのくらいのユーザーが製品に満足しているかがわかります。

 

注:2015年の12月に行われた最新のUberの資金調達に明るい人物によると、Uberは全世界で年間のランレート 2)直近の実績値の傾向がそのまま続くと仮定した場合の将来予測値 が100億ドルものぼる金額を集めたと言われています。通常、企業は特に業績がよかった月の指標を選んで、それを12倍して年間の数値を計算します。(そのため実際の値とはおおきくかけ離れています)そうだとしても、もし本当に、Uberが継続的にサブスクリプションから収益を得られるとしたら、月間のランレートは8億ドル以上にもなります!

 

そして、顧客獲得がより難しくなるでしょう。現在、Uberが将来見込める顧客を得るために行えばよいのは、ただアカウントを作ってもらい、クレジット情報を入力してもらい、まず1回利用してもらうだけです。もし前払いをしなければならなかったら、ユーザー側のリスクが増してしまいます。キャッシュバックのキャンペーンや、無料体験期間を設定することで緩和できるかもしれませんが、効果は限定的でしょう。

 

Uberがサブスクリプションモデルを導入しない理由

今後数年にかけてのUberの戦略について明確に理解できている人は少ないですが、私は次の理由からUberはサブスクリプションモデルを導入しないと思います。

 

1.顧客は自らが利用したいタイミングでサービスを利用する、という消費者行動をUberは理解しています。また、Uberがサービスの質を高水準に保っている限り、競合他社は多くありません。そのため、前払い制度でユーザー流出を食い止める必要は無いのです。

 

2.Uberはリリースから急速な成長とマーケットを広げることに集中してきました。そのため、Uberにとってビジネスゴールは陣地取りと同じで(収益を上げている地域もあるとはいえ)収益の最適化をしていないのです。

 

3.ユーザーにとっては利用1回あたりの料金表示の方がよいでしょう。今までにUber利用料と、同じ距離移動したときの高すぎるタクシー料金を比べたことはありませんか?サブスクリプションモデルだとそれができなくなってしまいます。

 

4.サブスクリプションモデルではドライバーへの支払いが複雑になってしまいます。

 

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「無制限のサービスプランのおかげで、静かに新聞を読むためだけにUberが使える!」

 

サブスクリプションビジネスとオンデマンドビジネスの違い

「オンデマンド」と「サブスクリプション」は少し異なるユースケースを提供しているのです。

 

「サービスあたりの価格重視」のオンデマンドビジネスでは、サブスクリプションを提案することはよい選択ではないかもしれません。なぜなら、ユーザーは前もって支払う必要があり、顧客獲得のハードルがあがるからです。しかし、Uberはサービスをより気軽に利用してもらいたいのです。もし、サービスの内容がよければ、ユーザーはUberを再び利用するでしょう。これはいままでの「サブスクリプション」タイプの製品とは大きく異なります。(純粋な取引1回ごとの価格ではなく)サブスクリプションタイプの製品は固定価格で取り扱われます。

 

もし、この問題を別の視点から見れば、この2つのビジネスモデルが両立不可能なのは明らかでしょう。たとえば、ChartMogulのユーザーは収益を分析するためのSaaSのプラットフォームを利用するために、(月単位、または年単位)のサブスクリプションをします。ここで、サービスを1回利用するごとに請求をすることは全く意味が無いことです。うまくいかないでしょう。アカウントにログインする度にお金を払いたい人などいるでしょうか?

 

もちろん、この2つのモデルが被る範囲もあります。たとえば、洗濯物ビジネスです。Uber for laundryといったスタートアップも考えられますし、サブスクリプション型のサービスを考えることもできます。

 

いろいろ述べましたが、基本的な法則はこれです。

  • 取引重視価格 = オンデマンド、サービス1回あたりの価格
  • 期間重視価格 =サブスクリプション、固定価格

 

ハイブリッドなビジネスモデルの可能性

1つのビジネスの中でオンデマンドモデルとサブスクリプションモデルをうまく組み合わせるとは可能なのでしょうか?

 

Uberの場合、サブスクリプションを用意してもよいほど頻繁にUber を利用する客層は一定数存在します。この場合では、1週間に何時間か継続的に利用するユーザーです。特に、サービスを利用する予定が決まっている人は、マイレージと時間を前もって購入することで、お金を節約でき、さらなる利益を享受することができるでしょう。

 

この記事は、CHART MOGULのブログ記事 ”What if Uber was a subscription business?”を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on CHART MOGUL in English under the permission from the author.

注釈   [ + ]

1. アメリカのカーシェアリングサービス
2. 直近の実績値の傾向がそのまま続くと仮定した場合の将来予測値