はじめに

ユーザーを獲得するには、高いクリック率やインストール数、ユーザーの継続率を維持することができる広告が必要です。このような広告を打つことで、顧客単価が上がってしまう現状を打開することができます。

本記事は、ベルリンで行われた『App Growth Summit』でパネルディスカッションをした3人のモバイルマーケターのお話をまとめたものです。数多くのクリエイティブを毎週制作し続けている彼らからコンバージョン率が改善するような効果的な広告をどのように生み出しているのか学びましょう。

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Wooga社のElena Tsarkova氏、Wargaming社のRaymond Cheung氏、Fluffy Fairy Games社のJuliane Besler氏がサミットでお話された内容は下記のとおりです。

  • チームの編成方法
  • アウトソーシングすることの賛否
  • クリエイティブの制作プロセスは?
  • クリエイティブをテストし、デザイナーにフィードバックする方法
  • シネマティクスよりもゲームプレイ動画の方が優れているのか?
  • 2018年の次のトレンドは?

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チーム構成

一般的にUAマネージャーは「どのような広告がどれくらい必要とされているのか」を明確にすることが求められます。大きなチームの場合、通常はマーケティングプロデューサーが社内チームと外部の代理店やフリーランスとの繋がりを管理するのです。

一方、Fluffy Fairy Games社の社内チームがUAマネージャー3人、デザイナー2人、マーケティングマネージャー1人で構成されているように、小さい会社の場合は代理店などを通さず直接やり取りをおこなうことが多いと言えます。

Idle Miner Tycoon – Music video

Fluffy Fairy Games社による『Idle Miner Tycoon』のミュージックビデオ

Fluffy Fairy Games社では、「月曜日の打ち合わせ」から「金曜日の評価会議」までを通じて制作をまとめます。この毎週のサイクルとゲームのアップデート頻度を連動させるのです。チームは「どのような広告クリエイティブのアイデアについて話し合ったか」そしてその「優先度の高さや低さ」といった内容を記録するため、Googleスプレッドシートを活用しています。また、会議終了後に「その週に終わらせなければならないもの、延長しても問題のないもの」を同じシートにまとめるのです。このような環境下によって、Fluffy Fairy Games社は新しい動画を2~4日おきに制作しながら、毎週新しいアプリのアイコンとスクリーンショットの制作を可能にしています。広告クリエイティブのその他フォーマット(GIFや静止画)、アドネットワークによって制作されるプレイアブル (遊べる) 広告は優先度が低めです。

“広告クリエイティブの新しいアイデアを試し続け、クレイジーになることを恐れずに”

Elena Tsarkova氏, UAマネージャー(Wooga社)

Fluffy Fairy Games社が2タイトルを運営している一方で、Wooga社は現在4タイトルを同時に運営しています。その業務量は全体的に増え、チームは毎週10〜20件の広告を制作し、その内訳は、動画が85%、静止画は10%、プレイアブル広告は5%です。この規模になるとマーケティングプロデューサーとクリエイティブディレクターのUAチームのサポートは必要不可欠になります。プロデューサーには全広告の効率的な制作と時間の管理をする責任があるのです。一方、クリエイティブディレクターは、広告の質やブランドイメージに合っているか監修を行い、開発の技術面はマーケティングプロデューサーとクリエイティブディレクターの両者が担当しています。

Bubblie Island 2 – Thumb

極めてシンプルだが、高いコンバーション率を誇るWooga社『Bubble Island 2』の動画広告

インハウス VS アウトソーシング

Wargaming社やGameloft社のような巨大運営会社であれば、社内にクリエイティブチームを抱えることは多くあります。パリを拠点とするGameloft社は、クリエイティブのメイン拠点をバルセロナに置き、ブダペスト、ソフィア、パリ、ロンドンなど他にも多くの都市で新規ユーザー獲得のためのオフィスを構えているのです。Wargaming社は、ミンスクのオフィスにMCS(Marketing Creative Studio)があり、150人ものアーティストによって構成されています。彼らを数人のプロデューサーが管理し、各アーティストは膨大なポートフォリオから厳選されたタイトル(デスクトップ向け、コンソール向け、モバイル向け)に特化して制作を行っているのです。

Wargaming社は『World of Warships Blitz』のようにデスクトップ向けタイトルのために制作した素材をモバイル向けタイトルに素早く活用することができます。アーティストがゲームやそのプレイヤー、ブランドをより深く理解できることが、インハウス型の主なメリットです。

対照的に、ベルリン拠点のカジュアルゲーム運営するWooga社は、広告クリエイティブをすべてアウトソーシングに任せています。5社の代理店とフリーランスと共に働いているので、ヒットゲーム『Bubble Island 2』や『June’s Journey』、最新タイトル『Tropicats』の広告制作において、新しいアイデアや多様性の欠如に悩むことはありません。アウトソーシングの大きなメリットは、運営会社が多くのゲームを短期間で一度に(ソフト)ローンチする際に素早く対応できる点です。アウトソーシングによって新規ユーザー獲得や、アプリ規模の拡大を実現できるでしょう。

“私は有用なクリエイティブを一度におよそ4〜10個持つようにしています。そのクリエイティブのパフォーマンスが低下してきたら、新しいクリエイティブを常に補充するようにしているのです。”

Antti Paikalla氏, UAマネージャー(Small Giant Games社)

クリエイティブの制作プロセス

制作をうまく進行させるためには、クリエイティブブリーフは必要不可欠です。Fluffy Fairy Games社のような規模が小さいマーケティングチームは、口頭による簡単な打ち合わせで十分でしょう。その際には、重要な要件を書き留めておくことで思考の整理になり、打ち合せ後の認識の相違を防ぐことができます。

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クリエイティブブリーフをより膨らませる際は、Wooga社のElena氏は技術的な要求だけでなく、好きなクリエイティブの方向性(テーマやトーン、前回の活動で得た成功事例によるインサイト)も同時に示します。クリエイティブブリーフを新しく作成する際に必要なことは、前回の活動に対する緻密な分析、複雑なパフォーマンスデータを言語化して明快で分かりやすくすることです。

Elena氏はCTA、カラー、広告コピーで検証を行い、その検証で勝ち残った広告を繰り返し活用する手法を好んでいます。パフォーマンスが悪いものは排除し、それぞれのクリエイティブにとって、新しいコンセプトとなるアイデアを提案するのです。このようなクリエイティブの会議は隔週で行われます。通常は広告を公開するまでに微調整をするためのフィードバックが2回必要です。

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Wooga社のクリエイティブブリーフ(上)と視覚化したコンセプト(下)

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Wargaming社では、プロダクトマーケティングマネージャーがクリエイティブの流れをコントロールしています。前回のキャンペーンのパフォーマンスを分析し、「特定のクリエイティブがなぜ成功したのか」、「どのバリエーションを次にテストすべきか」を調査するのです。

Raymond 氏はクリエイティブの中からベストパフォーマンスだったものを参照し、新しいゲームの内容や季節感をベースとしたコンセプトの方向性を定めるという手法を好みます。その後、この情報はミンスクを活動拠点としているプロデューサーのVitaliy Kolomiyets氏に伝えられるのです。彼はMCSチームの編成をしており、英語のブリーフィングをロシア語に翻訳しています。

コンセプトは様々なフォームによってプレゼンがなされます。参考イメージ付きのストーリーラインの場合もあれば、他の動画のスナップショットを含めたストーリーボードの場合もあるのです。通常、そのフォームはコンセプトによって異なります。Vitaliy氏はほとんどの広告の調整も担当しており、主要なものはプロダクトマーケティングマネージャーと相談しているのです。

“自社のポートフォリオまたは競合他社の広告を参照として共有することで、チームの全員が広告の見た目や雰囲気を共有するのに役立てることができます。”

Raymond Cheung氏, プロダクトマーケティングマネージャー(Wargaming社)

長期的な計画となると、Raymond氏は広告制作の詳細が書かれた1ヶ月間のロードマップを作ります。そこには動画約15本とプレイアブル広告1件が含まれており、横に四半期の予算立て計画と、予想されている仕事量をまとめて並べています。予算の約10%は新規のフォーマットのテスト、配置やアドネットワークに割り当てられます。これは、ほぼすべての企業で取り入れられていました。

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『Soviet Destroyers』広告のコンセプト提案(上)と最終決定(下)

WoW Blitz – Soviet Destroyers

 

ストーリーボードが持つ力

広告代理店であるLeo Burnett社での勤務経歴を持つ、AppAgent社のクリエイティブディレクターRichard Horin氏は、すべての広告における緻密なクリエイティブブリーフと古典的なストーリーボードについて発言しています。彼はPixonic社含む数社の運営会社を対象をとした広告制作を担当しており、最近では受賞歴のあるスタジオ、Small Giant Games社と業務を開始しました。

クライアントと仕事を行う際には、AppAgent社のGoogleフォーム上にオンライン版のクリエイティブブリーフを作成し、手書きのキーフレームにアクション説明とサウンドを付けてクライアントに提示します。この手法によって、クリエイティブディレクターは既存の素材によって制約を受けることなく、クライアントとモーションデザイナーはお互いにクリエイティブのコンセプトを十分理解することができるのです。

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Richard氏はこの話題とともに、「正直な話、過去に制作プロセスの速度が上がるだろうと思い、ストーリーボードの過程をスキップしてしまったことがあります。しかし、結果は全く違いました。ストーリーボード作成の過程を飛ばすと、進行中にクライアントが変更を加えてしまったり、モーションデザイナーとの反復が多くなったり、とその代償が必ずブーメランのように跳ね返ってきました。」とコメントしています。

War Robots – video ad “Tarantino”

クエンティン・タランティーノVer.の『War Robots』の広告は前述にあったストーリーボードに正確に従って制作されています。

ゲームプレイ VS シネマティクス VS ライブアクション

モバイルマーケターの間で多くの同意があったのは、実際のゲームプレイを含めた動画広告が最も成果があるということでした。当たり前ですが、プレイヤーはゲームのプレイ方法や雰囲気、自分の好みとマッチしているかを知りたいと思っています。『iMovie』で編集された単なるスクリーンキャプチャでは、記事内で気が散ってしまった見込みユーザーの注意を引くには十分ではありません。動画の力でプレイヤーの目を引き、CTR(クリック率)を上げる必要があります。

Smashing Four – video ad “Arenas”

人の目を引き付けるような背景を用いたゲームプレイ動画(『Geewa’s Smashing Four』の新しい広告)

Richard Horin氏は、動画について以下のように述べています。「運営会社は『このゲームやアプリとは何か』をうまく説明できていないことが多いです。マルチプレイヤー対戦なのか?隠された物を探すゲームなのか?有名なゲームメカニックにひねりを加えたものか?それが明確になるように動画を作るべきです。なぜ人々は時間を使い、ダウンロードしなければならないのか明確に伝えるためにもあらゆる方法を利用しましょう。」

ディスカッションのなかで、Juliane氏(Fluffy Fairy Games社)もElena氏(Wooga社)もRichard Horin氏が発言したゲームプレイ動画の持つ力に賛同していました。 Raymond氏はシネマティクス(コンピューターが生成した動画)に関してはあまり価値を置いていません。

「ゲームプレイ動画のものと比べて、映画的なコンテンツを持つ動画は、違うターゲットに届いてしまいます」。

ユーザー獲得を広い視野で見ること、マーケティングマネージャーもしくはUAマネージャーとクリエイティブチームの間にある隔たりを取り払うことがいかに大事かを示しているのです。

またあるケースでは、俳優のライブアクション(実況)動画が最適である場合もあります。例えば、『Pokémon Go』はライブアクション(実況)動画が有効であったいい例です。この動画の中では、俳優が本物のゲームプレイの様子を披露しています。これを行うための時間や予算がなければ、自社のインフルエンサーからの動画を活用し、それを広告用に編集するのも有効でしょう。彼らは、実際のユーザーとより近い感覚で、広告というよりもむしろコンテンツを生み出すことができるため、よりプラスになるといえるでしょう。

2018年の最新トレンド:プレイアブル広告

  現在の最新トレンドと言われているプレイアブル広告。『Unity Ads』や『Chartboost』のような動画アドネットワークの一部ではすでに利用できており、その範囲は拡大しています。現在、Google社はUACキャンペーン内でインタラクティブHTML5(リワード)広告を許可しています。Facebookにおいてもベータ版でプレイアブル形式が作動するように、その相互作用を考えれば、Miniclip社がそれらを用いることでクリック率が3倍高くなり、CPI(コスト・パー・インストール)が25%低くなったことも当然といえるでしょう。 

プレイアブル広告は、ファネル上位のプレイヤーをうまく限定できたため成功したと言われています。また中〜高クオリティの動画広告よりも短い時間で制作できることもメリットに挙げられます。デザイナーが必要な素材と良いコンセプトさえ入手できれば、約1週間程度で広告を制作でき、その広告によって魅力的な結果が得られるでしょう。

この記事は、App Agent社のブログ”Best Practices for Mobile Ad Creatives Production “を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on App Agent in English under the permission from the author.

 

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