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1月22日(水)に渋谷ヒカリエホールで開催された「Customer Engagement Conference Tokyo」(主催: Repro株式会社)。

「ゆるぎない関係を、今ここから。」というコンセプトのもと、企業と顧客の長期的な関係構築=カスタマーエンゲージメントのあり方について語らうためのカンファレンスです。

登壇者は総勢40人以上。約1,000人の方が来場し、各セッションへ熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

今回は、この「CEC Tokyo」の最速レポートを写真付きでお届けします。

開場〜開演まで

11:00の開場と同時に、多くの来場者の方が会場に詰め掛けました。来場の事前登録は開催の1か月前で定員オーバー。期待値の高さが伺えます。

受付時間中は『the ジブリ set』で音楽業界を席巻したDAISHI DANCE氏がDJプレイを披露。メロウなハウス・セットがホールに集まった方の心を早速とらえていました。

オープニングムービーお披露目のあと、Repro執行役員の吉澤和之氏が開催を宣言。CEC Tokyoの概要とともに、主催企業Reproが創業6年目を迎え、「カスタマーエンゲージメントプラットフォームRepro」へとリブランディングしていく決意を語りました。

Keynote Session 「世界の“Customer Engagement”の潮流」

Repro株式会社 代表取締役 平田 祐介 氏
Amplitude, Inc. Japan Country Manager 米田 匡克 氏
Amplitude, Inc. Chief Architect Founder Mr. Jeffrey Wang
BurgerKing Inc. Manager, BK US Mobile App Mr. Preston Nix

すでに数百人が一堂に介す中、基調講演がスタート。「次世代ユニコーン企業」の呼び声高いAmplitudeと、世界の広告賞で数々の受賞歴を持つ、世界最大規模のファーストフードハンバーガーチェーン、BurgerKingをゲストに迎え、顧客との長期的な関係構築が求められる時代背景や、米国の最新マーケティングトレンドについてトークが繰り広げられました。

世界の広告最高峰を競うカンヌライオンズ2019で2冠を達成したキャンペーン「The Whopper Detour(寄り道ワッパー)」。このインパクトのあるキャンペーンの舞台裏では、キャンペーンを一過性に終わらせないためのエンゲージメント施策が同時に動いていたといいます。

BurgerKingのアプリは、KGIから直接KPIに落とし込むのではなく、ユーザーのエンゲージメントレベルや再訪回数を考慮したNSM(North Star Metrics)という指標を中間に挟み、カスタマージャーニーを考慮した上で施策の実行箇所を選択するようにしているとのこと。属性データだけではなく「行動データ」をトラッキングしながらマーケティングを実施する必要性が語られました。

Session A-1 2020リテールビジネス最新予測! -新しい顧客像を掴め-

株式会社ビジョナリーホールディングス 執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部 本部長 川添 隆 氏
株式会社コメ兵 執行役員マーケティング統括部部長 藤原 義昭 氏
株式会社FABRIC TOKYO 代表取締役CEO 森 雄一郎 氏
アスクル株式会社 取締役執行役員 LOHACOグロース本部長 輿水 宏哲 氏

セッションのテーマは2020年の最新リテールビジネスについて。売ることが「ゴール」ではなく「スタート」となった時代に小売業界はどのようにサバイブしていくべきなのか、積極的な意見交換が行われました。登壇者の共通認識としては、「ユーザーが欲しいときに欲しい情報を届ける」、これを突き詰めるのが重要であるということ。

顧客の熱量が一番高い瞬間は注文時であるため、商品が翌日には届くような「物流構築」こそがエンゲージメント向上のために不可欠だという意見も。また、アメリカで叫ばれている「小売の限界」についても言及。ウォルマートが金融業界に進出していることを例に挙げ、今までとは意味合いの違う形でデータを活用し、自社の顧客群に新しい価値を提供していく必要性についても語られました。

Session B-1 エンゲージメントを促進させる”サービスクオリティ”の目指すべき姿

株式会社メルカリ 取締役CINO 濱田 優貴
ラクスル株式会社 執行役員CPO 水島 壮太
株式会社アカツキ モバイルゲーム事業部 プロデューサー 三宅 秀幸
株式会社SHIFT 営業本部 コアビジネス営業部 部長 花井 裕正
株式会社SHIFT 社長室 ビジネスプロデューサー 森 昭生

セッションは二会場で行われており、こちらがホールB最初のセッション。ゲームからフリマ、印刷通販まで業界を横断して、「サービスクオリティ」の向上についての議論を展開しました。共通した意見としては、メルカリやアカツキのようなB2C、ラクスルのようなB2Bでも、全体最適でプロダクトを作るのではなく、エンゲージメントの高いユーザーに向けて、個別最適を意識したプロダクトを作る流れができつつあること。

「サービスクオリティ」の指す範囲は広がっており、利用開始後の指標や、カスタマーサポートの品質も含めて「サービスクオリティ」であるという新しい考え方が提示されました。

Session A-2 変革の時を迎えたCRM -ブランドロイヤリティを高めるメトリクス-

株式会社ビービット 代表取締役 / President & CEO 遠藤 直紀
株式会社オプト マーケティングマネジメント部 部長 園部 武義
日本航空株式会社 ブランドコミュニケーション・東京オリンピックパラリンピック推進部 Webコミュニケーショングループ長 山名 敏雄
株式会社ビームス 事業企画本部コミュニティデザイン部 部長 兼 ビームス台湾 取締役 矢嶋 正明

「CRMは若干古い概念」という刺激的な言葉からスタートしたこのセッション。独自のCRM戦略を展開する日本航空とビームス、マーケティングのデジタルシフトを支援するオプトに、ブランドへのロイヤリティ(愛着度)を向上させるためのメソッドを紹介していただきました。

例えば日本航空の山名氏は、CRMの概念誕生よりも前に存在する「マイル」に基づくカスタマーエクスペリエンス施策について言及。このマイルの利用可能場所を増やすことが、データ活用だけではなく顧客のマインドシェア獲得にも貢献しているといいます。

またビームスは、店舗やオンラインを問わないオムニチャネルでの試着体験の提供や、販売スタッフが自ら公式サイトで商品を紹介する独自コンテンツなど、新しい試みを紹介。オプトが提唱するエンゲージメント最大化のための最新メトリクスにも話題が広がりました。

Session B-2 IPがもたらすエンゲージメント・パワーとファン育成のメソッド

メディアコンテンツ研究家 / 黒川塾主宰 株式会社ジェミニエンタテインメント 代表取締役 黒川 文雄
株式会社バンダイナムコアミューズメント ニュークリエイティブディビジョン クリエイティブフェロー 小山 順一朗
株式会社スクウェア・エニックス 専務取締役 橋本 真司

続いては、CEC Tokyo唯一の「ゲーム」に関するセッション。『ファイナルファンタジーシリーズ』や『機動戦士ガンダム vs. シリーズ』など、ファンに愛されるIP(版権)タイトルを作り出すためのメソッドについてお話ししていただきました。

セッションの軸になったのは、ゲーム・アニメ産業は「感情産業」であり、感情を販売してファンの心に存在させることが本質だという提言。愛される作品であるほど、ユーザーの中で確固たる「プロダクト像」が確率されるため、 愛され続けるためにはユーザー側の像を壊さないように「改良」を続ける必要性があるという熱い議論が行われました。

会場の様子

ここで、セッション内容以外の会場の様子についても紹介しましょう。「CEC Tokyo」には、来場者の方に対して「エンゲージメント」を意識させる仕掛けがたくさん用意されていたのです。

まずはGODIVAとのコラボブース、「1 to 1 チョコレート診断」。バレンタインも迫る中、「コミュニケーションツール」としてのチョコレートのあり方を提示するブースです。診断を通してそれぞれの人にあったチョコレートがチョイスされ、実際に試食もできるということで、会場の中でもひときわ賑わいを見せていました。

また、チョコレート以外の飲食物にもこだわりが。SNSで数多く投稿されたカラフルなポップコーンのほか、無料のコーヒーも質の高いものを用意。

休憩所の意匠もこのカンファレンスならではのものに仕上がっていました。スマートフォンの充電サービスも設置されています。

Wi-Fiスポンサーや暖房スポンサーなど、カンファレンスの来場者体験を主催者・共催者が一丸となって作り上げる試みも斬新でした。スポンサーブースはメインホールの後方に設置してあり、ソリューションに関心のある方はいつでも詳細を聞きに行ける形になっています。

Session A-3 顧客の“愛着度”を深化させるブランドコミュニケーション戦略

Comexposium Japan 株式会社 President and CEO 古市 優子 氏
ゴディバ ジャパン株式会社 Chief Digital Officer 兼 マーケティングコミュニケーション&デジタル/ITトランスフォーメーション統括本部長 宮野 淳子 氏
株式会社IDOM デジタルマーケティングセクション 中澤 伸也 氏
札幌を拠点に活動するDJ / PRODUCER DAISHI DANCE 氏

ブランドマーケター、ダイレクトマーケター、音楽DJが集合するという、CEC Tokyoの多様性を象徴するセッションです。マスチャネルで広く流通させているのにハイブランドイメージの担保にも成功しているGODIVA。商品の提供価値を定義し、消費者行動のモーメント(瞬間)を捉えながら商品・チャネルを最適化していくというGODIVAの戦略は、DAISHI DANCE氏が音楽作品の発表において実践する「他者との差別化」「オーディエンスに合わせた選曲」と共鳴するといいます。

IDOM中澤氏も個々の顧客に与える体験の蓄積こそがブランドを形成すると述べ、全く異なる業界のセッションでありながら、強いシナジーを発生させていました。

 

Session B-3 グロースハックのその先へ -LTV向上のための戦略と戦術公開

Repro株式会社 Repro App Div. General Manager 山中 啓奨 氏
dely株式会社 執行役員 マーケティング本部管掌 野村 知己 氏
シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 & CEO トーマス・アクイナス・フォーリー 氏
株式会社エウレカ 取締役CPO/CMO 中村 裕一 氏
株式会社FiNC Technologies プラットフォーム本部 APP部 部長 湯通堂 圭祐 氏

続いては、カスタマーエンゲージメントの要である「アプリ」のグロースがメインテーマのセッション。サービス立ち上げ期はデータを無視してスピード感重視で施策を行ったという、エウレカの人気マッチングアプリ『Pairs(ペアーズ)』と、データドリブンで細かい検証を繰り返したヘルスケアプラットフォームアプリ『FiNC』。

両者の「データ」に関する認識の違いが印象的でしたが、レコメンドエンジンを展開するシルバーエッグ・テクノロジーのフォーリー氏とともに、ユーザーのクラスタ(セグメント)ごとにアプローチを切り替えていく「科学的」なアプローチが重要であるという点では見解が一致。そして、話題はリテンションマーケティングの再定義へ。単に継続率を高めるということだけではなく、顧客ステージごとの課題解決を提供するという形でLTV(顧客生涯価値)を向上させるべきだという提言がなされました。

Session A-4 熱狂的なファンはどのように生まれ、育つのか

アクティブ合同会社 CEO 藤原 尚也 氏
埼玉西武ライオンズ 二軍監督 松井 稼頭央 氏
デル株式会社 コンシューマー&ビジネスマーケティング統括本部 部長 横塚 知子 氏
株式会社サンリオ マーケティング本部 ダイレクトコミュニケーション統括部 チーフデジタルオフィサー 田口 歩 氏

こちらのセッションも、様々な立場から「エンゲージメント」を語ることによる化学反応が生まれました。話題はユーザーの「ファン化」について。

単に認知しているだけの状態からファンになるためには、「球場で試合を生で見た」「キティちゃんにハグされた」という「一線を越える体験」が重要だという松井稼頭央氏とサンリオ田口氏。そして、マスへの投資だけではなく、製品モニターを募集する「アンバサダープログラム」に投資してファン層を拡充してきたデルの横塚氏のお話。「ファン化」という効果検証の難しい試みも、「ブランドヘルススコア」のトラッキングを行い、定量的に売上との相関を追っているといいます。

Webというチャネルが対ユーザーコミュニケーションの主流になりつつあるものの、「リアル体験」がエンゲージメントを高めるためには依然として必要だという結論に至りました。

Session B-4 カスタマーエンゲージメントを高めるためのDX推進とは

日本オラクル株式会社 クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部 CX担当マネジャー サンタガタ 麻美子 氏
カラクリ株式会社 代表取締役 CEO 小田 志門 氏
株式会社ZOZOテクノロジーズ 代表取締役CINO(Chief Innovation Officer)金山 裕樹 氏
パーソルホールディングス株式会社 CDO 兼 グループデジタル変革推進本部 友澤 大輔 氏
多摩大学 ルール形成戦略研究所客員教授・前衆議院議員 福田 峰之氏

ホールB最後のセッションでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)について識者たちが意見交換を行いました。

人間が創造性・余暇にリソースを振るためにデジタル化の推進が必要であるとしつつも、「見える数字」「取れる数字」だけで世界を組み立てることの危険性も指摘。「マッチングはAIでできるものの、服のフィッティングはまだまだ機械化できていない」という実例など、デジタルの限界についても言及されました。DXの推進については、経営陣がプロセスに介入しすぎるのではなく、現場に権限を委譲してトライさせてみるのがスムーズな方法であるとの意見も。

Wrap up~閉会

株式会社土屋鞄製造所の代表取締役・土屋 成範氏、株式会社デジタルシフトウェーブ代表取締役社長・鈴木 康弘氏が登壇したWrap upセッションは、内容は来場者だけのお楽しみのためレポートはできませんが、心温まる良いセッションだったというご意見を数多くいただいています。

既存タームでありながらも、今まで詳しく掘り下げられてこなかった「エンゲージメント」という概念。このコンセプトの再定義が行われ、ビジネストレンドの歴史に新たな1ページが刻まれた記念すべき1日となったことは間違いありません。

Customer Engagement Conference Tokyoは、形を変えて今後も継続予定ですので、ぜひ次回の告知をお待ちください!