本記事は、2017年7月18日に開催した「Growth Hack Talks #5」での発表内容を元にしたイベントレポートです。現在アプリ業界でもっとも盛り上がっている市場の一つである「マッチングアプリ」を開発・運営・マーケティングしている担当者をお招きし、ユーザー獲得や継続、マネタイズなどにどう取り組まれているかをお話していただきました。「実際に会ったら、全く相性が合わなかった」などといったことが起きないよう、異性との共通点を重要視した婚活・恋活サービス「with」のご担当者様に自社アプリのノウハウをお話していただきました。

登壇者紹介

株式会社イグニス 石毛健太郎(いしげ・けんたろう)氏(写真右)

プランナーとして主にサービス改善企画を担当。

株式会社イグニス 園田励(そのだ・れい)氏(写真左)

プランナーとして新機能の企画を担当。

自己紹介と事業の紹介

はじめまして、株式会社イグニスの園田です。

『with』は「実際に会ったら、全く相性が合わなかった」などといったことが起きないよう、異性との共通点を重要視した婚活・恋活サービスです。

心理学や統計学に基づいた診断によって自分の性格を分析し、異性との共通点を導き出します。

私たちからは「グロースを飛躍させる総合力」、「withの改善」の2点についてお話しさせていただきます。

グロースを飛躍させる「総合力」の重要性

グロースを飛躍させる「総合力」について、私、園田からお話させていただければと思います。「with」の開発チームはたった4人から始まり、現在は20人を越えようとしています。今日はチームでサービスをグロースさせるために重要だと考えている3つの役割についてお話します。

  1. 理想屋 独創的な理想を持って高い理想をアウトプットする
  2. 課題屋 根拠ある解決すべき課題をアウトプットする
  3. 解決屋 理想を叶え課題を解決できるクリエイティブをアウトプットする

これら3つの役割があり、それぞれを担った人達が連携することで生まれる「総合力」。これがあることでグロースが可能になるということです。

例えば、理想屋がおらず、課題屋と解決屋だけの場合。数字を見て根拠を持ちつつ課題を解決していきます。しかし、違う視点、つまり新しさが生まれにくくなります。よりサービスを飛躍させるには面白くて大きな理想を描ける人が必要です。

今度は課題屋がいない場合。理想屋のアイデアは夢に溢れていますが、リスクが高くなる傾向があります。手堅く利益を生むには理想だけを追い求めるのではなく、細部を追求し、課題を追っていける人も必要です。

最後に解決屋がいない状態。解決とはつまりクリエイティブのこと。理想屋と課題屋がいてもクリエイティブをアウトプットできる人員が揃っていなければ何もできません。

私たちは3つの役割を担った人達がバランスよく配置され、連携していけるようなチーム作りをこの数年、意識してきました。

以下に注意してきたことをまとめました。

3つの役割を担う人がしっかりそろっているか。

  • 未来の理想像を掲げる人がいるか?
  • 課題意識をもっていて、精度が高い課題をアウトプットする人がいるか?
  • クオリティとスピードを担保して上手に解決できる人がいるか?

情報はチーム全体に行き渡っているか。

  • 未来の理想像をみなが理解できているか?
  • 課題意識は共有できているか?
  • クオリティを生み出すためのレギュレーションは共有されているか?

こういったことを意識し、みんなでサービスをグロースさせていくことが大切だと考えています。

一歩手前の体験を考える

『with』が行ってきたサービス改善については、私、石毛からお話させていただきます。初めはweb版だけリリースしたのですが、この頃は売り上げが少なく今よりチームも小さかったため、限られたリソースや知識でどこをどのように改善するかで悩むこともありました。心理学を主軸においたサービスということもあり、マッチング以降の体験であるトークを充実させたいといった意欲が強く、機能のアイデアも豊富な状態でした。

売り上げを作るために私たちは何をしなくてはならないのか−−。

そこでまず、グロースハックとして基本的な考え方であるファネル分析で改善箇所を洗い出していきました。

私たちは“手前の体験”がどうなっているかを常に念頭に置きながら企画を作っています。手前というのはすなわち、ファネルの上位のこと。企画者はどうしても「こういうことがやりたい!」という気持ちが強く、熱くなってしまいがち。そこをその手前はどうなっているのかという意識を持つことで、一旦冷静になれると思っています。

Facebookログインやチュートリアル突破などといった定番の離脱箇所は、リリース当初から良い数字を保持していました。その理由としては、タレントを起用していることもありましたので、登録前の安心感・信頼感があったことがあげられます。また、診断に興味を持ったユーザー自身が、先の画面へと積極的に進んでくれることや、広告からエロの要素を排除し、リテラシーの高いユーザーの獲得に成功したことも理由といえます。

ではどこに問題があったのでしょうか?サービス開始当初の大きな問題は、男女ともにいいね!を送信しないということ。女性が積極的にいいね!を送信しないのはマッチングサービスにはありがちなことだと思いますが、『with』では男性もいいね!を押してくれないという問題を抱えていました。サービス開始当初はweb版のみだったのでそもそものユーザー数が少ないこともあり、いいね!を消費したいと強く思うような異性の数が少ないことも理由だったかもしれません。とはいえ、いいね!を送ってもらわないと何も始まらない…。そこで生み出された施策がイベントの機能です。

イベントとは、診断の結果別にルームを作成し、同じルーム内のユーザーにはいいね!が無料で送れるというもの。男性は無料のいいね!に飛びついて参加し、女性は診断に惹かれて参加していました。参加率は女性の方が高い傾向があります。

無料化によって男性のいいね!送信率が大幅に向上した結果、マッチング、そして課金が増えていきました。

このイベントでは、心理学的な理由で同じルーム内の異性が自分と相性が良いことを説明しています。このように、理由(言い訳)を用意してあげれば、女性のいいね!送信率も向上することが分かりました。

ユーザーの気持ちに寄り添う機能の追加で退会率が改善した

今の『with』チームはデータアナリストが企画にも深く関わり、一つひとつの施策に対し数字的な根拠や評価指標をしっかり決めた上でプランナーと一緒に企画をたてます。

定量的思考は施策の確度を上げてくれると思っていますが、イグニスは企画に重きを置いてきた会社でもありますし、そこが強みでもあるため、定性的な思考も同じぐらい大事にしていきたいなと考えています。ですので、私たちは、定性と定量のバランス感を常に意識するよう心がけています。特に恋愛というすごくファジーな題材を扱っている以上、数字で割り切れない何かが絶対的にあると思っていますので、この点においては今後、企画する上でも大切にしていきたいと考えています。

ということもあり、生の声を拾えるアンケートを定期的に実施し、その結果を施策にも反映させています。アンケートには、私たちがまだ気づいていない何かが詰まっていることも多いんです。withはNPSアンケートも実施しているんですが、きっかけはCSチームからの提案で彼らが主導権を握って進めました。プランナーやエンジニアとCSチームが密接なのも『with』チームの特徴だと言えます。

私たちは女性の退会率がなかなか下がらないことに対しずっと課題感を抱えていました。

退会アンケートには退会理由の選択肢がいくつかあるのですが、その他を選択する女性が一番多い状況でした。その他とは具体的には何だろうと思い、その他を選んだ女性ユーザーのアンケートを分析したところ、このような回答が目立ちました。

「婚活・恋活に疲れてしまった」

「仕事が忙しくて異性探しやメッセージに時間が割けない」

「婚活・恋活に集中的に取り組む期限を設けており、それに達したため」

端的に言うと「婚活疲れ」です。機能面に直接的な不満があるわけではなく、ユーザー自身のメンタルやプライベートの状況、自らに課せた目標や期限により、結果として『with』を通した体験がネガティブなものになり、退会に至るのではと分析しました。理想は継続してサービスを使ってもらうことではありますが、果たして、継続的にサービスを使ってもらうことだけが絶対的に正しいのでしょうか。このような状況を踏まえた上で、ユーザー本人の気持ちを最優先にして寄り添ってあげること、彼らを取り巻く状況なども気にしてあげることが恋活・婚活マッチングサービスの役割ではないだろうか、と考えました。

そこで最近、休憩モードという機能を追加しました。これをオンにした方は異性に自分のプロフィールが表示されなくなります。

通常、退会するとこれまで入力したデータなどが全て消えてしまいますが、このモードは休眠状態にするだけなので、オンにしていればデータが全て残ったまま、簡単に再開することができます。

このモードは、婚活・恋活は自分のペースでOKですよ、再開するときにまた『with』に戻ってきてくださいね、というメッセージを込めて企画しました。

この機能のリリースで退会率が大きく改善しました。

まとめ

こういったアンケートベースの施策が良い結果を出すということは、アンケートに答えてくれる良質なユーザーが多いからこそだと思っていますし、良質なユーザーが多いことがCSのトラブル軽減にもつながっています。

良質なユーザーが集まる傾向を築けた背景には、ユーザビリティをはじめwith特有の雰囲気を大切にしてくれたデザインチームや広告のクリエイティブで獲得効率だけ求めず、誠実さを大事にしてくれたマーケティングチームのおかげでもあると思っています。

私たちの業界はまだまだ世間からネガティブなイメージを持たれていますので、なによりも誠実さを大事にして、そのイメージを取り払っていかなければならないと思っています。

ご清聴ありがとうございました。