こちらは【決定版】ゲーミフィケーションのフレームワークのPart 1です。

この記事は、私が10年以上にわたるゲーミフィケーションの調査研究を経て確立した、”Octalysis”というゲーミフィケーションのフレームワークを詳細に解説した”Octalysis”の入門編です。”Octalysis”を紹介した私の著書は、発表から1年で9つの言語に翻訳され、世界中でゲーミフィケーションを活用する際には手放せない一冊となりました。     ゲーミフィケーションはユーザーのモチベーションに注目したデザインです。本質的に(「機能中心のデザイン」とは対極の)ユーザー中心のデザインなのです。   ゲーミフィケーションとはゲームの楽しく、ユーザーが引き込まれる要素を抜き出して、それらを現実の世界や活動に応用して作られたものです。この手法は、私が「ユーザー中心のデザイン」と呼んでいるもので、「機能中心のデザイン」とは逆なのです。また、この手法はプロダクトの中でユーザーのモチベーションを最大限引き出すことを目的にしており、単なる効率化を目的としたものとは違います。   ほとんどのプロダクトは「タスク」をできるだけ早く終わらせるためにデザインされた「機能中心」のものです。このようなプロダクトは、労働者は必要に迫られているから仕事をしているのだ、と考えている工場のような物だといえます。   しかし、プロダクトを利用する人には感情、不安、そして何かをやったりやらなかったりする理由があるのです。ユーザー中心のデザインは、このことを念頭に置いているため、ユーザーの感情、モチベーション、そしてエンゲージメントを最適化します。   なぜこの手法をゲーミフィケーションと呼ぶかというと、ゲーム業界がこのユーザー中心のデザインを最初に体得したからです。   ゲームの目標はそれで遊んでいるユーザーを喜ばせる事以外の何でもありません。ゲームの中には「ドラゴンを倒す」、「姫を守る」、そして時には「ドラゴンを守る」といった「タスク」がよく登場します。しかし、これらは「機能中心」のデザインで登場する「タスク」とは違い、ユーザーにゲームで楽しく遊び続けてもらうための仕掛けなのです。   何十年(ゲームという定義の捉え方によっては100年)という月日をかけて、ゲームはユーザーにモチベーションを与えエンゲージメントを高める手法を探し求めてきました。そのため、我々は今ゲームからその手法を学び、ゲーミフィケーションと呼んでいるのです。   私はこの10年間、ゲームが楽しいものになるように様々な仕組みの戦略構築や分析に携わり、完璧なフレームワーク作りに注力してきました。   私たち人間の内側には何かしらのアクションに向かうモチベーションがあり、ほとんどのゲームは上手くそこを刺激して私たちを動かしているので私たちはゲームを面白く感じる、という事を見つけました。   また、私たちを誘導するテクニックはゲームによって違いがある、ということにも気づきました。あるゲームは私たちにインセンティブを与える手法を使っていますし、別のゲームではより強引な手法を用いています。そこで、私は、ユーザーのモチベーションの種類について深掘りして考えました。   そして完成したものが、”Octalysis”と呼ばれるゲーミフィケーションのフレームワークなのです。これはそれぞれの辺が8つのモチベーションを表した八角形を元にしています。   長年の実験と修正を経て、(「驚き」という9つ目の隠されたモチベーションを除けば)あなたの行動の全てはこの8つのうちどれかか、またはその組み合わせを行動のモチベーションにしていると、私は信じています。  

ゲーミフィケーションで用いられている8つのモチベーション

1) 栄光と名誉

「栄光と名誉」とは、ゲームを遊んでいるユーザーが現実世界の自分よりすごいことをしていると信じたり、そのために「選ばれた」者なのだと思ったりしたいというモチベーションです。このモチベーションはフォーラムを運営したり、コミュニティ全体の助けになるものを構築するのに沢山の時間を費やすユーザーに見て取ることができます(Wikipediaやオープンソースのプロジェクトを考えてみてください)。また、このモチベーションは「ビギナーズラック」を体験した人にも見られます。そのようなユーザーは、自分たちが他のユーザーが獲得できなかったお宝を手に入れたか、ゲームの序盤で素晴らしい剣を入手できるくらい「幸運」なのだと信じ込むのです。  

2) 成長と達成

「成長と達成」は成長をし、スキルを伸ばし、そしていずれは困難を乗り越えたい、という内面的なモチベーションです。ここでの「困難」は非常に重要で、困難無くして称号やトロフィーをもらっても全く意味が無いのです。これは最もデザインするのが簡単なモチベーションでもあり、ポイント、称号、上位ランキングの表彰などで使われています。  

3) 創造性の発揮とフィードバック

ユーザーが何かをよりよくする方法を見つけるために、異なる組み合わせを何度も試さなければいけないような創造的な場面では、創造性の発揮とフィードバックがモチベーションとなります。ユーザーには彼らの創造性を示す手段だけではなく、その結果を見て、フィードバックを受け取り、それに反応できる手段も必要です。このモチベーションこそ、レゴや描画が人々の間で楽しまれ、永続的に機能するものにたらしめているものです。このモチベーションを生むことができれば、ゲームデザイナーは常にユーザーが喜ぶような新しいコンテンツを作る必要がなくなります。  

4)  所有権と財

これはユーザーが何かを所有していると感じる時に働くモチベーションです。ユーザーが何かの所有権を持っている感じている時、そのユーザーは本能的に所有しているものをもっと良くし、もっと多くのものを所有したいと思うものなのです。現実の世界で富を蓄えたいということの最も大きなモチベーションになっている他に、プロダクト内の仮想アイテムや仮想通貨でもこのモチベーションは働きます。また、プロフィールやアバターをカスタマイズするのにたくさんの時間を費やしている人は、それを所有しているという感覚がそうではない人に比べて強いものになっているでしょう。最後に、これはスタンプやパズルのピースの収集を楽しく感じる要因にもなっています。  

5) 社会的な影響力とつながり

このモチベーションは例えばメンターシップ、他者を受け入れる姿勢、社会からの反応、共生感、競争や妬み嫉みといった人を動かす要因を全て含んでいます。何かが優れている、または何か素晴らしいものを持っている友人を見たとき、人は同じくらいのものを望むようになります。また、これは自分が関わっている人、場所、そしてイベントをより良いものにしたいというモチベーションのことも指します。人は幼少期やノスタルジーを思い起こさせるプロダクトを目にしたときその商品を買う傾向にあります。このモチベーションは比較的調べ尽くされてもいます。そのため、近年では企業の多くは社会的影響力や繋がりに関する最適化を行っているのです。  

6) 希少性と切望

これはユーザーが持っていないものを欲しがることで働くモチベーションです。多くの企業はユーザーを待たせるという戦略をとっています。例えば、「2時間後に特典をゲットできます」という通知はその戦略をとっているといえます。ユーザーが欲しいものをすぐに手に入れることができないという事実がユーザーにそのことを一日中考えさせることになるのです。これはFacebookが最初始まったときに利用していたモチベーションです。始めはハーバード大学の学生だけに向けられたものでした。その後、Facebookはいくつかの名の知れた学校に対象が広げられ、ついに全ての大学に広げられました。最終的に全員へ対象が広められたとき、多くの人は今まで利用できなかったので、Facebookを利用したいと思ったのです。  

7) 予測不可能性と好奇心

元々、これは次に何が起こるか知りたいという多くの人が持っているモチベーションです。次に何が起こるのかがわからないと、ユーザーの頭はそのことを深く、頻繁に考えるようになります。しかし、このモチベーションはギャンブル依存症の主な要因でもあります。また、このモチベーションは企業がユーザーをエンゲージメントさせるために宝くじのシステムを導入する時に働くものです。予測不可能なものの結果を確認するために動物が理由無くレバーを引くという、とても議論を呼んだスキナー箱の実験は、このモチベーションに特化したものなのです。ポイント、称号、上位ランキングの表彰といった手法の背景にはこのモチベーションがあると誤解されていますが、これらの手法は予測不可能なものではないのでその認識は誤りです。  

8) 喪失の回避

このモチベーションはなにかこれから起こる良くないことを回避したいという思いが背景にあります。狭義にはそれまでの成果を失わないようにすること、そして広義では、ゲームをやめないことでそれまでやってきたことは無駄だったと認めないことにこのモチベーションは繋がります。また、期間限定のものなどはこのモチベーションを有効活用しています。なぜなら、人はそれを今すぐ手に入れなければ、もう二度と手に入れることができないと思うからです。 この8つのモチベーションを特定した後、私はこれら8つのモチベーションを8角形の図に書き入れました。    

左脳的モチベーション VS 右脳的モチベーション

“Octalysis”の中で、右側に配置されているものは、創造性、自己表現、そして社会性に関係する右脳的モチベーションと考えられています。   一方、左側に配置されているものは、論理、計算、そして所有に関する左脳的モチベーションと考えられています。   注意:左脳的モチベーション、右脳的モチベーションという表現は脳科学に裏付けられているわけではなく、デザインする時に単にフレームワークをわかりやすく、効果的にするための言い回しです。論理と感情で物事を分類すると便利なので、それらを覚えやすくするために左脳的、右脳的と名付けました。   興味深いことに、左脳的モチベーションは外発的なモチベーションの元になっていることが多いのです。ユーザーはゴールやアイテムなど今持っていない何かが欲しいと思うからモチベーションが生まれるのです。対照的に右脳的モチベーションは内発的モチベーションが元になっていることが多いです。ユーザーは創造性を発揮したり、友達と出かけたり、予測不可能なことのどきどき感を味わうのにゴールや賞品を必要としないのです。その行為それ自体が賞品の役割を果たしているといえます。   モチベーションにはこの2種類が存在することを押さえておくのは重要なのです。多くの企業は、ユーザーにリワードを与えるといった、外発的なモチベーションを喚起することを狙ってゲームを設計しようとします。ところが、外発的なモチベーションを喚起する方法は、リワードや賞品などのモチベーションを喚起するものがなくなった時に、ユーザーのモチベーションがそれらを初めて提示されたときよりも大きく損なわれてしまう、ということが多くの研究によって明らかにされています。   企業はより右脳的モチベーションを刺激するゲーム設計を行う方がいいでしょう。つまり、ユーザーがエンゲージメントし続けるような、プロダクトそれ自体が楽しく、そして賞品であるようなものです。    

ホワイトハット VS ブラックハット

“Octalysis”の中でもう一つ押さえておくべきなのは、8角形の上側に配置されているものはよりポジティブなモチベーションで、下側に配置されているものはよりネガティブなモチベーションであるということです。   私は、上側のモチベーションを重点的に使う手法を「ホワイトハットゲーミフィケーション」、一方、下側のモチベーションを重点的に使う手法を「ブラックハットゲーミフィケーション」と呼んでいます。   もし、ユーザーが自らの創造性を表現できる、スキルを習得して達成感を味わえる、そして自分の存在価値を感じることができる、そのようなモチベーションでプロダクトにエンゲージメントが生まれているとしたら、そのプロダクトはユーザーを気分良くし、自信を持たせるものなのです。   一方、もし、次に何が起こるか分らない、何かを失う危険を感じている、または何か持っていないものがある、そのようなモチベーションでユーザーが何かを行っている場合、ユーザーがそのアクションを行うモチベーションは強いかもしれませんが、後味が悪くなる場合があります。   “Octalysis”のフレームワークを当てはめると、Zyngaの問題はブラックハットゲーミフィケーションを数多く実践する方法を編み出したことにあったことがわかります。ブラックハットゲーミフィケーションは各ユーザーにとってアクションへの大きなモチベーションになりますが、ユーザーが気分良く感じるものではありません。そのため、ユーザーがアクションから離脱することができるようになった時、彼らは喜んでそうするのです。まさにギャンブル依存症のように、彼らは自分達を制御できていないという感覚を持っているのです。   ただ、ブラックハットゲーミフィケーションだからといって、それが必ずしも悪いものではないということを心に留めておいてください。これは単にモチベーションなので、このような手法が効率よく適切な結果を導くこともありますし、逆に強引で悪い結果を導くこともあるのです。ジムに定期的に行くため、健康的な食事をとるため、そして毎朝スヌーズボタンを何度も押して寝坊しないためといった目的では、多くの人は自発的にブラックハットゲーミフィケーションを用いています。 ユーザーが最終的にうれしく、好意的にアクションを終われるように、優れたゲーミフィケーションのプロは、ポジティブで生産的なアクションにおいて8つ全てのモチベーションを考慮しているものです。  

“Octalysis”スコア

ゲーミフィケーションを活用したよいプロダクトを作るためはこの8つのモチベーション全てを必ずしも導入する必要はないということを覚えておいてください。しかし、導入したものに関しては良いスコアを出す必要があります。とても成功しているプロダクトの中には社会的影響力を活用しているものもありますし、希少性を利用しているものもあります。   “Octalysis”のスコアを出すために、分析する対象が各モチベーションに対してどれだけ優れているかを考えましょう。主観、データ、そしてUXのフローをもとに各モチベーションに0から10の数字をあて、それらを2乗することで各モチベーションに対するスコアを得ることができます。また、各モチベーションのスコアを合計すれば、最終的なスコアを得られます。   もちろん、スコアそれ自体がとても使えるものであったり、施策につながるものなわけではありません。そのため、私はいつもクライアントに、「スコア」ばかり見るのではなく、欠けているモチベーションに注目するように伝えています。  

“Octalysis”で実際のプロダクトを分析する方法

さて、フレームワークが完成しました。次のステップはこのフレームワークをどのように活用するのかを考えることです。   通常、エンゲージメントを生むよいプロダクトは、先に示したモチベーションを少なくとも1つは取り入れています。   “Octalysis”を使うには、プロダクトの中のそれぞれのモチベーションを刺激する機能を特定し、”Octalysis”内の各モチベーションの横に書き出してください。   その後、それぞれの機能がどれほど強力かによって、八角形の各辺が膨らんだり、戻ったりします。   もし、新しくできた8角形の中で、角がないような部分は、その部分がとても弱いということを表しています。ゲーミフィケーションのプロはその部分を改善する必要があるのです。 もちろん、これはとても簡略化したものです。次回は実際に”Octalysis”の例を見てみましょう。  

この記事は、Yu-kai Chou: Gamification & Behavioral Design上の記事 ”Octalysis – complete Gamification framework“を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。Repro published the Japanese translation of this original article on Yu-kai Chou: Gamification & Behavioral Design in English under the permission from the author.


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