先日Google I/O 2019が開催され、Googleが提供するサービス全体のアップデート情報が発表されました。Androidの新機種やGoogle検索にまつわる更新点が話題となっています。

しかし今回の発表では、エンドユーザーだけではなくアプリ事業者にとっても、Google Play Storeの機能追加をはじめとする重要な情報がいくつも出ていたという事実があります。本記事ではアプリ事業者に与える影響のみに注目し、Google I/O 2019で発表された新情報を紹介していきます。

Googleが発表した公式の情報はこちらをご覧ください。

① Android App Bundleの機能拡充!さらにアプリサイズの削減が可能に。

2018年にAndroid App Bundleという新しいアプリの形式が導入され、Google Play Store側で端末ごとにリソースを選択して端末ごとに最適化されたアプリファイルを作成できるようになっていました。今回のGoogle I/Oで発表されたのは、上記の特徴に加え、これまでBeta版のみで限定公開されていた「Dynamic features」が、全てのアプリで使えるようになったことです。

Dynamic featuresの導入により、一度にアプリのフルパッケージがDLされるのではなく、機能が必要になった際に徐々にDLされていく提供モデルが可能になります。

また、国や端末の種類ごとにアプリファイルを組み替え、機能を制限できるようにもなりました。これにより、Wi-fi環境が整っていない地域では最低限の機能のみを公開し、DLにかかる時間を軽減するといったことが可能になります。

あるいは、NFC(おサイフケータイなどに使われる近距離無線通信規格)が搭載されていない端末にはその機能を省いたアプリファイルをDLさせる、といった工夫も考えられるでしょう。

2018年以来App Bundleを導入したアプリは、DLしなければならないアプリサイズが平均20%減少したことにより、約11%インストール数が向上したというデータが出ていました。

NetflixはDynamic featuresのBeta版が導入されていたアプリですが、カスタマーサポート機能のDLを制限し、「オンラインサポート」のページを訪れたユーザーに初めてDLさせるようにしたことで、アプリサイズを33%も削減することに成功しています。

他に考えられるDynamic featuresの利用例としては以下のようなものがあります。銀行アプリなど金融取引系のアプリではKYC(Know Your Customer)と呼ばれるユーザーの身元確認機能がありますが、これは本人確認書類のスキャン機能などを必要とするため、大きくアプリサイズを増幅させてしまうのです。そこで、身元確認を必要とする段階になってからこの機能をDLさせることによって、サイズの軽減を図ることができるでしょう。

以前から、Play StoreではiOSと同様、アプリサイズを削減することが推奨されていました。図のように、アプリサイズとインストールへのCV率には明確な相関関係があるからです。

 

今回のI/Oで発表されたApp Bundleのアップデートは、平均のアプリサイズをさらに減らし、通信状態に関わらずユーザビリティを向上させようとするGoogleの意図の現れといえるでしょう。

アプリストアで公開できる上限のアプリサイズや、サイズを減らす方法についてはこちらの過去記事(『アプリのサイズ(容量)がDL数に与える影響とは?』)で詳しく述べています。

② Internal App Sharingにより簡単にアプリのテスト・デバックが行える。

 

Androidアプリの管理ツールGoogle Play Consoleでは、「内部テスト版」として特定グループ内でアプリをシェアすることが可能でした。しかし、アプリの掲載情報やレーティング、配布設定など一通りの設定を暫定的にでも行う必要があり、やや手間がかかる作業でもあったのです。

しかし、Internal App Sharing(内部アプリ共有)機能が搭載されたことで、APKファイルもしくはApp Bundleをアップロードし、DLリンクを生成するだけでアプリを共有することができるようになりました。

右画像のようにURLを送るだけで、最大100人のテスターにアプリを共有することが可能。 参照: Customizable Delivery with the App Bundle and Easy Sharing of Test Builds (Google I/O’19)

 

以前はテスト用アプリでもバージョン順にGoogle Play Consoleにアップロードする必要がありましたが、これからはバージョンの異なるアプリファイルも順序に関係なく共有できます。さらに、アップロードするのはPlay Consoleに登録していないユーザーでも可能です。

また、以前の「内部テスト」とは違い、リリース用ではないデバックビルドも共有できるようになっています。証明書もデバック用のもので問題ないため、共有の度にアプリファイルの中身を変更する必要はありません。DLリンク生成の際に毎回独自のダウンロードキーが発行されるのです。

Internal App Sharingの導入により、開発者の手を煩わせず、簡単にアプリのテスト・デバックが行えるようになったといえるでしょう。詳しいテスト方法は公式のヘルプ(英語のみ)、もしくはInternal App Sharingでアプリを共有するをご覧ください。

③ アプリのアップデート方法を開発者側で選択できるように。アップデートするユーザー数の上昇が見込める。

昨年β版として発表されていた、アプリをバックグラウンドでアップデートできる「in-app updates API」が正式に公開されました。

このAPIの特徴は、ユーザーに拒否権のない「強制アップデート」(Immediate Update)と、以前のバージョンの継続使用も可能な「選択アップデート」(Flexible Update)の設定が可能だということです。

前者の「強制アップデート」は、全画面で通知が表示され、使用を継続するためにはアップデートを行いアプリを再起動する必要があります。

 

後者の「選択アップデート」の場合、通知はダイアログで表示され、バージョン更新を許諾しない選択も可能です。許諾した場合アップデートのダウンロードはバックグラウンドで行われるので、ユーザーはその間アプリを使い続けることもできます。

「アップデートのダウンロード中もこのアプリを使い続けることができます」というポップアップが表示される 参照: Support in-app updates

 

βテストによれば、「in-app updates API」の導入によりアップデートを許諾するユーザーが50%向上したというデータが出ているとのことです。

具体的なAPIのサンプルコードなどが知りたい方は公式ドキュメントをお読みください。

④ ユーザーコホートごとに別のストアページを表示できるように。

以前の記事でお伝えした通り、今年3月からPlay Storeでは「ストアのカスタム掲載情報」の設定欄が登場し、特定の国に合わせたストアページが作成できるようになっていました。それに加え、今後は「DL済ユーザー」、「未DLユーザー」、「DL後にアンインストールしたユーザー」の3種類に切り分けて、コホートごとにアプリの詳細ページをカスタムすることが可能になります。カスタムはストアの説明文、及びスクリーンショットが対象です。

 

 

この機能を利用することにより、未DLユーザーにはとりあえずインストールしたくなるような中心的機能を訴求する一方で、DL済ユーザーには課金によって初めて解放される機能をアピールしてマネタイズの機会を増やす、といったプランを練ることもできるでしょう。

しかし、現在のところコホート別表示は全てのディベロッパーに提供されている訳ではなく、Googleに選ばれたアプリしか利用できないEAP(早期アクセス版)である点であることに注意が必要です。選考への応募自体はフォーム入力をすればどのアプリでも可能なので、試しに申し込んでみるのも良いでしょう。

現在のところ英語のフォームしかありませんが、入力はこちらのGoogle Play CSL Install State EAPから可能です。

 

 

⑤ 総合評価を決定するアルゴリズムが変更に。レビューの返信文を自動で作成してくれる機能も追加。

ストアの評価・レビューがDL率に与える影響は非常に大きいとされています。総合評価が影響するのはもちろんですが、一番上に表示されるレビューを星5つのものにするだけで、DL率が8%向上したというデータもあります。

総合評価は同じでも、一番上に表示されるレビューを☆1→☆5にするとDL率が大きく向上する

 

Play Storeにおいて、今年の8月から総合評価を決定するアルゴリズムが変更になります。今まではあくまでも過去に累積された評価の平均値が表示されていましたが、今後は「最新の評価」を重要視した計算方法になると発表がありました。

これにより、より注意深く最新のユーザーレビューや直接のフィードバックをモニタリングし、早急にアップデートなどの対応をする必要が増したといえるでしょう。また、これまで評価の低かったアプリでも、今から機能やUIがアップデートされた良いアプリを作れば、すぐに評価が改善される可能性も高まりました。

Play Storeの詳細ページに表示されるのは8月からですが、管理ツールのPlay Console上では今までの「全期間の評価」に加えて、「新しい評価」も確認することができます。

 

 

他の評価・レビュー周りの改善点としては、投稿されたレビュー内容を元に3種類の返信文を自動で提案してくれる機能の追加があります。
現状は英語のストアのみにしか対応していませんが、今後は日本語も含めた各国語に対応していく予定とのことです。

低評価のレビューへ個別返信することは総合評価の改善に効果的な施策です。この自動提案機能の実装は返信にかける時間を減らしてくれる可能性はありますが、自動生成された文を読んでユーザーが評価を改めるかどうかは未知数だともいえるでしょう。

 

 

⑥ 「統計情報」で閲覧できる今後強化される。復帰ユーザー数の推移なども。

 

Androidアプリの管理ツール、Google Play Consoleで閲覧できるデータが増えるという発表もありました。例えば、「インストールユーザー」「アンインストールユーザー」だけではなくアンインストール後に再DLした「復帰ユーザー」に絞って推移を把握することも今後可能になります。

他には、一日単位ではなく時間単位、週単位などでも集計可能になるというアップデートも予定されており、より詳細なユーザー分析が可能になります。

閲覧可能になると発表されたデータは他にもたくさんありますが、今のところ「事前登録ユーザー数」、公開されている「アプリサイズ」の推移データのみが公開されています。

 

⑦ Play Store公式の競合分析機能が追加!現在のところクラッシュ状況や評価などの比較が可能。

Custom Peer GroupというGoogle純正の競合分析ツールが実装されました。現在のところ他アプリのDL率などは閲覧できませんが、Android Vitals(クラッシュ状況やアプリサイズなど)と総合評価の比較を行うことができます。

 

 

比較可能なアプリは「類似アプリのグループを編集」から8〜12個の間で自由に設定することが可能で、類似アプリのサジェストも表示されます。Android Vitalsと評価のそれぞれに対して違うグループを作ることができますが、前者のグループに関しては比較するアプリの変更は1か月に3回までという上限があることに注意しましょう。

また、他事業者のベンチマークにされないようにオプトアウトを選択することも可能ですが、その場合自分も競合のAndroid Vitalsに関するデータを参照することができなくなります。

一方、評価に関しては無条件で他アプリとの比較をすることができます。

 

 

現在のところクラッシュ率や評価などアプリ内部のパフォーマンスのみしか把握できませんが、今後は競合アプリのDL率やアンインストール率を閲覧できるMarket Insightsも追加される予定があるとのことです。これが実装されれば、アプリ内部だけではなくストアページの改善に役立つ情報を得ることができるでしょう。

 

以上が今年のGoogle I/Oで発表された、Androidアプリを公開している事業者にとって有益な情報のまとめです。発表されたものの現状では利用できない機能も多いですが、アプリ開発者・マーケターにとってのさらなる利便性向上に期待が持てる内容ではないでしょうか。