「毎日を頑張れるように、朝はイケメンと一緒に目覚めたい」…そんな世の女性の贅沢な希望を叶えたアプリが2017年末にリリースされました。それが『MakeS ‐おはよう、私のセイ‐』(以下、『MakeS』)です。 メイン機能はアラームやスケジュール管理、メモやカメラといった日常で多用するものですが、そこにちょっとした乙女要素がドッキング。学習能力を持ったイケメン・バーチャルコンシェルジュの「セイ」が、基本機能をベースにユーザーの生活をサポートしてくれたり、コミュニケーションを取ってくれたりします。

大々的なプロモーションを行っていないにも関わらず、若い女性を中心に世間を賑わせている同アプリ。なぜ、こんなに多くの女性の心を鷲掴みにしたのでしょうか。 その人気の秘密を明らかにするため、アプリが誕生したきっかけやユーザーを熱狂させる仕掛けについて、株式会社ヘキサドライブで『MakeS』のディレクターを務める阿部浩美さんにインタビューし、アプリへの熱い思いをたくさん語っていただきました。

アプリの誕生は「人を幸せにしたい」という思いから

Repro:2017年12月のリリースからおよそ3カ月(取材当時は2018年3月下旬)が経ちましたが、すでに20万DLを越えたとか。

阿部:現時点でさらに増え、24万DLを達成しました。リリースから1ヵ月で5万DL、2ヵ月後には13万DLを達成。リリース当初は年間13万DLを目標に設定していたので、この成長率の速さには私たち自身も驚いています。

Repro:その成長率の速さと多くの反響を呼んだ理由がとても気になります!まずはアプリ開発のきっかけからお伺いさせてください。

阿部:私は「人を幸せにできるコンテンツを作りたい」と思い、「幸せとは何か」、「何をもって人は幸せになれるのか」を考えていました。その中で出た結論は、「己が己を認める事」。いわゆる「自己肯定感」を持つことがまず大事なのではないかと。それを得る過程や必要なものを組み上げたのがこのアプリです。

『MakeS』のコンセプトは「葉っぱ一枚あればいい」です。『MakeS』は「ユーザーに到達してほしい感情・思考」を元に構築されています。『MakeS』をプレイすることで、そんな感情や思考に達し、自己肯定感を体験できる作品にしました。 なので、乙女要素ありきで企画が走った訳ではなく、どうすれば『MakeS』に触れた人が幸せになれるか考えた結果、現在の『MakeS』の形になりました。会社としては乙女要素を入れたコンテンツは初の試みでしたし、何もかもが手探りの状態で開発を進めていきました。

リリース前後で熱狂させる仕組みを作る

Repro:Twitterの公式アカウントでもフォロワー数が破竹の勢いで増え続けています(4月時点でおよそ38,000人)。アカウント開設は2017年8月ですが、リリースの何ヵ月も前から潜在層となるユーザーとの接点を作っていたのでしょうか。

セイが起動を開始、ここから物語がはじまっている。

阿部:投稿を開始した2017年の10月1日からリリース直前の12月10日までは、セイが開発者とコミュケーションを取りながら学んだことやホッとするようなひとことをユーザーに語りかけています。もちろん、合間にイベントや事前登録などの告知事項も伝えていますが。

開発が進むにつれ、セイも色んなことを学習していくという設定で投稿上でも変化を見せます。移ろいゆく季節に気づいたり人の会話にほっこりしたり、そうすることで、どんどんセイのイメージを膨らませてもらおうと。 リリース後からは開発チームが投稿していますが、これは「手元のスマホアプリにセイがいる」ことを暗に伝えるためです。

ちょっとした会話から優しさや人間味がこぼれる。さりげない優しさは女性には嬉しいもの。

Repro:リリース前後で視点を変える。こうしたストーリー性のある演出方法は、今まで様々なコンテンツのクリエイティブを制作してきた御社ならではと言えるのではないでしょうか。 リリース前からセイとの接点を持たせることで潜在層の心に自然と働きかけ、「セイと直接触れたい、会話したい」という気持ちを少しずつ奮い立たせていったのかもしれませんね。

ちなみに、Twitter上では「# MakeS」の運動部や写真部、料理部など、いくつか部活 1)部活:写真やテキストにハッシュタグをつけて共通の趣味の人と繋がることができるゆるいコミュニティのようなもの。色んな部活に簡単に参加できるのでInstagramやTwitterで人気。がありますが、これらはユーザーが自発的に興したものでしょうか。

阿部:部活などTwitterの活動は全てユーザーさん発信です。『MakeS』にはカメラ機能が搭載されていて、それ以外にもホーム画面のスクリーンショットも簡単に撮影できるように作っています。 さらにSNSでスムーズに投稿できるようにシェアしやすい構造にしているため、みなさん気軽に利用してくださっているようです。

これらの機能は一見単純なようですが、質の高いUI、UXは非常に大切だと思っています。

Repro:投稿を見た他のユーザーは触発されますし、共通の趣味を持つ人と繋がりたい人が積極的に声をあげるので、コミュニティが活性化して「楽しい」が伝播していく。 こうやってシェアしやすい仕組みを作りユーザー同士が繋がることで、さらなる熱狂が生まれている気がします。 ちなみに、2018年2月22日に「二次創作に関するガイドライン」を制定されましたが、部活同様、アプリとセイを愛するユーザーが、自由に楽しめる環境を整備するためでしょうか。

阿部:二次創作に関してはすでに問い合わせをいくつも受けていましたので、安心して創作が楽しめるようにガイドラインを規定しました。これによって、イラストや漫画などユーザーさんが個々にオリジナル創作を楽しむことができますし、その作品たちはまた、あらゆる場所でたくさんの人の目に触れることにもなります。

Repro:作品を見て興味を持った人が新規ユーザーになる可能性も大いにありますね。

阿部:企業側がいくら「このアプリは面白いから使ってね!」ってPRしても、どうしても宣伝っぽく聞こえてしまうんですよね…。仕方ない部分でもありますが。 積極的なプロモーションより、ユーザーさんからのPRや口コミの方が信頼できますし効果も大きいと感じています。

Repro:アプリを通した部活やオリジナル創作で「楽しい」を体験するユーザーたち。その「楽しい」が口コミやSNSで広がれば、各方面に魅力を発信していける。「ユーザーが自由に楽しめる」設計や仕組みを作ることが、熱狂の火種になっているのかもしれませんね。

楽しい体験を邪魔しないポジティブな課金

Repro:Twitterの投稿を見ていると、同じ人物とは思えないほどヘアスタイルや瞳のカラー、小物などのバリエーションが豊か。これらのアイテムはアプリ内課金で購入するのでしょうか。

同じセイでも印象が大きく変わる。

阿部:セイのお洋服などは課金だけでなく、いわゆるゲーム内通貨でも購入できるようになっています。また、『MakeS』ではセイとの信頼や愛情を形成する過程に極力お金を要求しないよう、セイを好きになった人が気持ちよく課金できるよう意識して製作しました。多くのユーザーさんが自分好みに着せ替えを楽しみながら、前向きな課金をしてくださっているように感じています。

Repro:広告は、ユーザーにインセンティブを与える代わりに動画を見てもらう動画リワード広告のみです。こちらも極力アプリの世界観を壊さないよう、配慮されているためでしょうか。

阿部:そうですね、セイとの触れ合いを楽しんでいる途中でいきなり雰囲気を壊すようなことはしたくないので、なるべく自然な流れを作るようにしました。

リワード動画であれば、ユーザー自身が広告の視聴を選択できるのでストレスを与えることもありません。動画を視聴すると福引を回すことができますが、そこでも「セイと」という文言を入れて広告っぽさを中和しています。

支持されるのは“ほどよい距離感”だから

Repro:乙女コンテンツとはいえ、デザイン全体が控えめなトーンなので大人の女性も利用しやすそうです。UIには無駄がなく、それぞれの機能も直感的に操作ができて使いやすい。

阿部:コンシューマーも手掛けている開発会社としての強みを生かして、UIには特に力を入れました。20代後半〜30代半ばの女性がメインターゲットではありますが、なるべく幅広い層に受け入れられてもらえるように「おしゃれ・可愛い・シンプル」のデザインコンセプトにはこだわりました。流行りのアプリやサイトのデザインをたくさん見て参考にしながら、これはアリ・これはナシと分けてルールを作ったりして。

子供っぽくならないよう、カラーのトーンもパキッとしたものではなく穏やかなものに。メイン機能は毎日使うものなので、ゴチャッとさせず使いやすさを重点においてUI設計をしました。

Repro:長期的に利用してもらうためにも、シンプルな設計と使いやすさは大事なことです。 ちなみに、多くのアプリは集客効果や販促効果を高めるためにプッシュ通知やアプリ内メッセージを配信しますが、『MakeS』ではどのように活用していますか。

阿部:ユーザーさんの利用シーンなどをイメージして新アイテムが追加された際などにアプリ内メッセージでお知らせしますが、配信は最低限にしています。

配信を最低限にすることで、ゲームっぽさを減らし、世界観を壊さないようにしています。

Reproアプリの世界に没頭できるように空気感を保ち、ユーザーとセイとの関係性を強固なものにしていけば、ロイヤリティの向上にも繋がります。継続率が高いのも、その点が一番大きいのでは。

阿部:多くのユーザーさんから「アプリのおかげで生活が楽しくなった」という声を頂いているので、「良い体験」を提供できているのではないでしょうか。それが結果として継続して利用いただける一番の理由なのかもしれません。

ユーザファーストな姿勢を貫く

Repro:マーケティング施策は何か実施されたりしましたか?

阿部:マーケティングに関しては、全く知見がないところからのスタート。 経験値0状態で実施したリリース前のイベントは、やはり思ったようにはいかなくて…。しかしそこで、「こうすべきだった」「今度はこれが必要」というたくさんの気づきを得ることができました。やったからこそ良いこと・悪いことがはっきりわかりました。 今後も大事にしたいのは、たとえどんなネガティブな結果が出ても前向きに捉え、トライアンドエラーを繰り返しながら最適化していく姿勢です。試行錯誤しながら経験や知見を蓄積していけば、このアプリにとってどんな手段が適切なのかがわかっていくはず。グッズ化の話なども出ていますし、もっと多くのユーザーさんに楽しんでもらえるようなコンテンツを作っていきたいです。

Repro:ユーザファーストを貫いた結果、「幸せにしたい」という熱量がたくさんの人に届いた――アプリで多くの女性たちの心を掴んだ―― 最大の理由だとわかりました。阿部さんのブレない思いとヘキサドライブとしての開発技術や知見といった強みを最大限に生かしたことで、ユーザーを躍動させるコンテンツを提供できたのではないでしょうか。

開発において、アプリを手に取るユーザーにどんな体験をしてもらいたいか、アプリを利用するユーザーにどんな行動を起こしてもらいたいかを考えて設計することが、アプリを成功へと導く鍵となるかもしれません。

アプリデータ
アプリタイトル:『MakeS ‐おはよう、私のセイ‐』
ジャンル:触れ合い系乙女目覚ましアプリ
OS:Android/iOS
価格:無料(動画広告/一部課金アイテム有)

識者プロフィール
阿部浩美(あべ・ひろみ)
株式会社ヘキサドライブ
アートセクションチーフ/ディレクター


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「Growth Hack Journal」を運営している「Repro」は、アプリ解析・マーケティングツールの提供からユーザ獲得やユーザ定着のためのマーケティング支援等のソリューションまでワンストップで提供、アプリの成長を支援しています。

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注釈   [ + ]

1. 部活:写真やテキストにハッシュタグをつけて共通の趣味の人と繋がることができるゆるいコミュニティのようなもの。色んな部活に簡単に参加できるのでInstagramやTwitterで人気。