夜中にアップデートさせておいた普段よく使っているアプリを開こうと思って携帯のロックを解除したんです。そしたら中央に少しだけ色のついた120*120ピクセルの白いアプリが私を見つめているではありませんか。私は「また白か…」と思いました。

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数週間前、私はロンドン、ロサンゼルス、フランス、アムルステルダムで行われた「Designing Better App Icons」と呼ばれるトークイベントに参加し、アプリのアイコンについて多くの人と話す機会を得ました。その時に何度も登場したトピックが白い背景のアプリのアイコンの数が増えてきているという話でした。(最終的にはこのトピックについて熱く語ることになりました)そしてこれを受けて私はこんなツイートをしました。

 

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「白いアイコンのアプリについて話さねばなるまい…」

気難しい老人のような心持ちになっていましたし、このツイートに共感してくれる人もいたので、このトピックをそのままにしておくのはよくないなと思いました。

ということで、白いアプリのアイコンについて話すことにします。

一体何が起こっているのか?

漆喰のインターフェイスは私たちのアプリのアイコンにまでそのインクを染み込ませてきています。そして世界中で増え続けるデザイナーたちは白いクリーンな背景を伴ったシンボルを選んでいるのです。

こうした流れが生まれたは理由は様々です。ただ、この変化の起点となったのは明らかにiOS7の登場とフラットなインターフェイス、そしてシンプルなアイコノグラフィ(図像学)1)アイコノグラフィ(図像学):、絵画・彫刻等の美術表現の表す意味やその由来などについての研究が登場したことです。アップルが制作しているアプリの多くは白い背景を用いています。別の言い方をすれば、あなたがネットサーフィンをしている時、写真を見ている時、音楽を聞いたり体調をチェックしている時に使っているアプリのアイコンはほとんどが白いということです。

 

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UIデザインにおける考え方の変化はよく記事にされたり話されたりしていますが、正直に言うとそんなに騒ぐほど面白くありません。しかし、この裏でフラット化とシンプル化がアプリのアイコンデザインにもたらしている興味深い現象があります。それがキャンバスに対して白いスペースを作りたいという欲求です。

なぜ白が問題なのか?

別に白であることに問題はありません。実際私も白いアイコンを基調としたアプリを作ったことがありますし、うまくデザインできたものについてはとても気に入っています。問題なのは多様性と平凡さです。

多様性

アイコンとはプロダクトを体現したものです。ユーザーがプロダクトを使うたびに見るものです。

したがって、アプリのアイコンにおける成功の基準とは際立つこと、そして明確にそのプロダクトが何なのかについて発信できているかにかかっています。アイコンはユーザーの頭の中にあなたのアプリの印象を形成してくれる素晴らしいツールです。

全く驚くべきことではありませんが、あるデザインのトレンドが広がると似たようなすべてのアイコンはその独自性の担保に悩むことになります。アイコンのデザインにおいて多様性が欠けてしまうとナビゲートしにくくユーザビリティが低いものになってしまうだけでなく、アプリの印象もぼやけていまします。さらに、他のアイコンと似たようなアイコンを作ってしまうと、本質的にユーザーとのつながりを弱めてしまうことになるのです。白をアプリのメインカラーに選ぶことでキャンバスにのせられる色は少なくなります。つまりユニークに使えるはずのスペースを潜在的に制限してしまっているのです。

 

 

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Josh Pucjettが白いアイコンの流れを受けて予想した未来のInstagramのアイコン(もとのツイート)

平凡さ

アプリのアイコン作成におけるスタンダードとなっているシンプル化やプリントスタイルのデザインについては様々な意見がありますが、一方でこういった流れのおかげでよりデザインがしやすくなったと言えます。なぜなら質感や明るさに関する十分な知識がなくてもプラットフォームに馴染む、魅力的なアイコンを作ることができるからです。

しかし一方で、こうしたデザインの普及は二流のアイコンデザインの間口を広げてしまったとも言えるでしょう。誰でもPhotoshopの廉価版を使って10分でもかければアプリのアイコンと呼べるようなものを作ることができてしまいますから。

しかし、「シンプルに見える」ということと「シンプルにする」ことは決して同じではありません。実際多くのデザイナーが知っているように、一定の制約の中で何かをミニマリスティックに仕上げるにはずっと労力がかかります。アイコンのトレンドは変わるかもしれませんが何かを縮尺し、発信させ、よく見せるという制作工程は変わりません。これは白いアイコンに限った話ではありませんが、アイコンの平凡さという点で見ると白いアイコンは重大な罪を犯しています。このトレンドによってデザイナーたちがキャンバスやグリッド全体を使ってアイコンをデザインしようという意識の低下を引き起こしている可能性があります。

意味のある選択をしよう

今までの話をまとめます。白いアイコンのアプリを作るのは構いません。ただし、あなたが選択したデザインがどうアイコンのユニークさ、それによるユーザーとのつながりに影響を与えるのかについて十分考慮した上で作ってください。

そして「他の誰かがやっていたから」とか「簡単だから」といった表面的な価値基準ではなく、ユーザーに与えるインパクトを最大化できるかを常に考えた上で選択をしてください。もし白い背景を使うなら、あなたのプロダクトに意味があると判断したうえで使ってください。そして素晴らしいものになるように真心を込めて作ってください。

 

この記事は、Medium上の記事 “Let’s Talk About White App Icons” を著者の了解を得て日本語に抄訳し掲載するものです。 Repro published the Japanese translation of this original article on Medium in English under the permission from the author.

注釈   [ + ]

1. アイコノグラフィ(図像学):、絵画・彫刻等の美術表現の表す意味やその由来などについての研究