9月5日に開催されたセプテーニ主催のイベント「アプリを最大限活用するプロモーション戦略セミナー」の内容を書き起こしにてご紹介します。アプリ/ブラウザ双方でサービスを展開する中で、特にアプリを重要視し、アプリならではのプロモーション展開を行うディップ株式会社(アルバイト求人情報サイト「バイトル」提供)、GMOペパボ株式会社(ハンドメイドマーケット「minne」提供)の方々が、アプリに注力する背景や具体的な施策内容についてお話してくださいました。

GMOペパボの杉山です、よろしくお願いいたします。本日はminne(ミンネ)がどうやってWebからアプリにシフトしていったのか、またサービスが急成長する中で、どのような問題がおきたのかということを中心にお話します。

登壇者紹介

GMOペパボ株式会社 杉山寛(すぎやま・ひろし) 氏

改めて自己紹介させていただきます。GMOペパボ株式会社 社長室 マネージャーの杉山です。現在は弊社の注力事業である、minneのプロモーションに主に関わっています。

本日は、まず、minneの紹介をさせていただき、minneがどのようにWebからアプリにシフトしたのか、急成長するなかでのマーケティングプローモーションの課題、今後のチャンレンジについてもお話させていただければと考えております。

会社・事業紹介

GMOペパボ株式会社の運営するサービス

まず、弊社GMOペパボですが、minne以外にもたくさんのサービスを運営しており、もしかすると、ご利用いただいたことがあるサービスもあるかもしれません。最初に提供を開始したのが個人向けレンタルサーバー「ロリポップ!」です。ほかには、ネットショップ構築サービスの「カラーミショップ」や、ドメイン取得サービス「ムームードメイン」など、個人の方が「インターネットで何か表現をしたいときに利用できるサービス」というものを提供しております。

minneについて

本日紹介させていただく、minneは、作家がインターネット上で簡単に自身が作った作品を販売・展示することができ、その作品購入することができるマーケットプレイスです。minneは2012年からサービスを開始し、今年で5年目を迎えました。ちなみに、minneは、GMOペパボの福岡支社で誕生したサービスで、サービス名は博多弁の「~してみんね」「作ってみんね」「食べてみんね」といった方言が由来となっている、made in 九州のサービスです。

minneでは出品者の方々を「作家」と呼んでおり、商品のことを「作品」と呼んでいます。

現在のサービスの概況ですが、作家数が37万名、作品数が600万点を超えています(2017年8月末時点)。利用者の多くは女性で、アクセサリーやファッション小物、雑貨などが中心となっていますが、実は、男性の作家も多く、男性が好きな革小物やインテリア雑貨等も多数販売されています。また、昨年の春から食品の販売も開始しており、ジャムやパン、焼き菓子といった様々な食品も販売・購入できるマーケットとなっています。まだまだ、利用者を拡大していきたいと考えています。

minneのビジネスモデル

minneのビジネスモデルは、C to Cのフリマアプリと同じで、販売手数料を貰う収益モデルとなっています。実際に売れた作品の販売額10%(税抜)を手数料としていただくビジネスモデルです。

minneがWebサービスからアプリにシフトするまで

先程も申し上げた通り、minneは2012年からサービスを提供しています。最近minneを知った方は、おそらくスマホアプリとして認識いただいていると思いますが、2014年までは完全にWebサービスとして運用を行っていました。2015年頃から完全にアプリにシフトしたサービス提供となりました。

このスライドは、2014年12月末時点でのminneの閲覧比率です。見ていただいいてお分かりのとおり、ほとんどの方がブラウザからご利用いただいている状態で、アプリは12%しか使われていませんでした。minneのアプリは2012年10月にiOSをリリースしており、ハンドメイドマーケットの中でも早いタイミングでリリースしていましたが、運用チームも10人以下で、日々の運用に追われ、プロダクトの改修が追いつかない状況でした。

minneがアプリにシフトした2つのきっかけ

なぜminneがアプリにシフトしたかというと、きっかけは大きく2点ありました。2014年当時、メルカリさんやフリルさんといった、スマホのコマースが一気に駆け出した年でした。そういった市場をみると、minneとしてもこのままブラウザベースで勝負するのは厳しいと感じていました。

時を同じくして2014年の秋ごろに、われわれが重要な指標として追っていた、国内のハンドメイドマーケット市場の作品数と作家数がNo.1になりました。このタイミングで、会社として1つ大きな意思決定をしました。いきなり社長が重要なメンバー全員呼び、minneに積極投資をするという意思決定が下りました。

積極投資は、CMのみではなく、オンライン・オフライン問わず、ありとあらゆるチャネルでのプロモーション展開、先程10人以下で開発していたというお話をしましたが、開発体制も強化することになりました。

minneとしてはこの2014年12月末のタイミングで、明確にWebのサービスからアプリにシフトするという意思決定をしました。

冒頭でもGMOペパボにはサービスが複数あるというお話をしましたが、2015年の利益を全部投資するという利益0という状況は異例な状態ですが、当時ちょっと話題にもなりました。

それまでの弊社は、安定したストックビジネスのうえで、収益を乗せていくというスタイルでしたので、我々もこういった判断にはとても驚きましたが、会社としてもこれぐらいの覚悟をもったプロジェクトとしてminneのアプリシフトは始まりました。

プロジェクトは成功、直近では800万ダウンロードまで急成長

いきなり結論が見えてしまっていますが、2014年末にそういった意思決定を行い、年末年始から準備をおこない、2015年の2月にテレビCMを開始しました。そこを起点として、minneは、Web出稿など、さまざまなプロモーションを開始しました。直近では、800万ダウンロードまで伸びてきています(2017年8月末時点)。

minneはECなので、流通額を重要な指標としてみていますが、投資開始後の2015年が44.6億円、2016年が83.9億円と、流通額としては順調に推移しています。現在は月8~9億円の流通のマーケットまで成長しています。

リアルでのマーケティング活動も強化

ハンドメイドを扱うというマーケットの特性上、リアルな場所でのマーケティング活動を重要視しています。特に作家さんがいないと成立しないマーケットなので、作家さんを呼んだ催事イベントや、支援活動に力をいれています。現在では、世田谷と神戸と福岡の3拠点に「minneのアトリエ」を開設しており、そこで作家さんの支援活動を行っています。具体的には、作品写真の撮り方や値段の付け方など、作家さんが活動するにあたってつまずきそうなところをサポートする講座をおこなっています。他にも、オウンドメディア「minne mag.」の運営や、雑誌「みんなのハンドメイド本 minne HANDMADE LIFE BOOK」を刊行したり、オンライン・オフライン問わず、さまざまなチャネルを用いて、minneを知ってもらうことを目標にマーケティング活動を行っています。

今年2017年4月に東京ビックサイトで行ったイベントでは、2日間で、述べ5万2千名の方に来場いただき、ようやくハンドメイドの認知も広がってきたのではと考えております。

minneが抱えるマーケティングの課題

ここまでは、すべて順調にいったかのようにお話させていただきましたが、内情は全然そんなことはなく、常にいろんな問題を抱えながらやっていました。現在もいろいろ抱えている中でのお話をさせていただきます。

minneが追っている主要KPI

細かい話をする前に、minneとして追っている重要なKPIとはなにかというお話をさせていただきます。実はとてもシンプルで、ECなので流通を1番に見ています。そこに紐づくところとして、DAU、購入率、ダウンロード数を見ています。

プロモーションの広告のKPIは、まだCPIを重視していて、それに付随する形でROASを見ているという状況です。

まだまだハンドメイドの市場を拡大しないといけないというところがあるので、まずはサービスを認知いただくというところをベースに獲得ボリュームを増やすというところを判断して動いています。

それでは、次からminneが抱えている3つのマーケティング課題とそれらに対する施策についてお話します。

課題1:統合的なログ収集ができておらず、データ分析が困難

まず、minneでは統合的なログ収集ができていなかったため、正しいログ分析が困難でした。どういうことかというと、もともとブラウザベースで立ち上がったサービスで、後からアプリに注力したという背景があるので、クロスデバイスでユーザーをトラッキング、管理する仕組みがありませんでした。おそらくデバイスをまたいだユニークなユーザーはいるはずですが、そういったものも正しくトラッキングできていませんでした。例えば、そもそもスマホで買ったのかPCで買ったかすら分からないという状況でした。

そういったログの分析ができないことには、他の課題の解決にも影響が出るため、まずはminneとしては、データの整備を進めていました。

まずはじめに基盤の構築をしました。具体的にどういうことをしたかというと、minneのデータベースや、SDKでトラッキングしている情報、アナリティクスの情報、あとは広告のレポーティングもすべてこのログ基盤にいれて一元管理するという環境を作りました。これを我々は、「bigfoot」というプロダクトネームで読んでいます。

「bigfoot」ができたことによって、これまで取得できていなかった情報の取得や、それに基づくデータの視覚化・可視化、さらにレポート作成の自動化が実現しました。ビジュアライズの部分は、tableauやredashを使って行っています。redashを導入したおかげで、ディレクターもSQLを書き、データの収集もスムーズになっています。これらを行うことによって、エンジニアの作業負荷の軽減や生産性の改善といったコストダウンも実現することができました。試算してみたところ、1年間で100万円単位でのコスト削減が実現できていまいた。

課題2:ユーザーリテンションが不十分

1つ目の課題だったデータ分析については、ログ基盤の構築である程度解消できました。今度はそこに溜まったログをどうするのかという壁にぶつかります。そこは、ユーザーリテンションに活かしていこうというところで活用を進めています。

ざっくりこのようなイメージで、「bigfoot」にたまったデータをアプリ内のプッシュ通知やクーポン、広告の配信に活かすということをしています。まだ完全には、すべての施策がオートメーション化されているという状態ではないですが、過去にあった不必要な全件配信のメールやプッシュ通知という頻度は少なくしていて、より適切なタイミングで適切な情報をユーザーに届けられる環境が実現できてきています。

例えばプッシュ通知配信では、可視化したログからユーザーさんの行動分析をして、いろんなパターンのコミュニケーションのPDCAを回しています。そして、成果が得られるものを残していき、成果が得られないものは止めていきます。するとユーザーさんにとって本当に必要なものは何なのかというところを意識して、PDCAを回せるようになります。

具体的に成果が得られるものの例だと、カート投入後に一定期間放置しているユーザーさんだとか、短期間で同じ作品を何度もみているようなユーザーさんにはかなり良い開封率がでています。

クーポンも同様で、全体に配布するのは簡単ですが、必要なタイミングでクーポンを貰ったほうが、ユーザーも背中を押されて、アクションを起こしやすくなってくれます。スライドに記載したようなタイミングでクーポンやインセンティブを配っています。

ここまではリテンションに関して、内部施策の話をしましたが、ユーザーさんのリテンション・リエンゲージメントに関しては、criteoなどを利用して広告を行っています。

課題3:新規ユーザー獲得の単価高騰

続いて、新規ユーザーの獲得についてお話しします。プロモーションを開始して、ほぼ3年経って、新規ユーザー獲得の単価高騰という問題が起きています。年々、CPIの単価が上がっています。

少しわかりづらいのですが、左下の折れ線グラフがプロモーションを開始したところで、右上が直近ですが、ご覧の通り、倍程度まで上がってしまっているということが分かると思います。

そんな中、直近チャレンジしている具体的な事例を紹介いたします。

Facebookダイナミック広告はユーザーニーズの発掘にも利用

Facebook ダイナミック広告の運用について、もともとminneでは女性のみに、すべての作品が表示されるような運用をしていました。ブロード配信をする中で、徐々に成果が出づらくなってきたタイミングで、下のベビー・キッズ・女性配信のような、minne内の作品カテゴリとユーザーセグメントをかけ合わせて配信をおこなったところ、非常に良い成果が得られました。

セグメント別の配信を並行して実行することで、ブロード配信の比率も抑えて、枯れの問題も解消できるようになってきています。現状では、そういった掛け合わせで配信していますが、CPI自体が安価になるということではありませんが、CPIを安定させながら、ブロード配信ではリーチできなかった新規の獲得ができて、単純にボリュームが上がってきているというところが得られています。

ダイナミックの運用をしていく中で、直接minneの作品を表示するので、それで成果の高い作品というのは、そもそもユーザーさんのニーズがあるというところで、ダイナミック広告で出して効果の良かった作品については、minne内の特集でも活かしています。ダイナミック広告でニーズを見つけて、新しい記事や特集を作って、流通額の貢献も目指しています。実際、通常の記事よりも2倍程度の流通額を叩き出すこともあるので、ユーザーニーズの掘り起こしには効くという印象があります。

Criteoロードランナーで、日によっては数十円でユーザーを獲得

minneは今では9割程度のユーザーがスマホアプリにシフトしていますが、一定のユーザーはWebでご利用いただいています。ユーザーさんとの接点という意味では、アプリの方がメリットがあると弊社でも考えているため、Webユーザーさんに対しては、criteoのロードランナーというプロダクトを使って、アプリダウンロードの促進を行っています。当然、minneに対してエンゲージが高いユーザーに対する露出なので、CPIも平均すると100円以上やすかったり、日によっては数十円で獲得できるときもあります。ROASも平均と比較すると3倍程度でることがあります。

Youtuberを起用した認知の拡大と新規ユーザー獲得

新規を獲得するうえで、認知を広げていかなければ、なかなか獲得できないというところがあります。認知を広げるという意味では、Youtuberさんを使ったプロモーション広告もチャレンジしております。認知を広げるだけではもったいないので、Youtuberさんを起用したときは、TrueViewの配信ボリュームを上げて、しっかり刈り取るであるとか、紹介した作品と連動するようなコンテンツをminne内に作ることで、はじめて訪れた人がサービスを使ってくれる、定着してくれるような準備をして運用を行っています。

今後はAIによりマーケティングを自動化に注力

今後チャレンジしたいこととして、ログ基盤を作ったという話がありますが、弊社としてはログ基盤、ファーストパーティーデータをもっとマーケティング活動に使っていきたいと思っています。膨大なデータのマスキングというのは非常に難しいと肌で感じていまして、ここに関しては新しいチャレンジですが、AIを入れてオプティマイズをしていこうと考えています。

9月から「AIXON」というツールの導入を決定して、今まで人力でやっていたマスキングの部分の最適化をAIでチャレンジしていこうと考えています。AIは予測できることがメリットなので、例えば、2週間後に退会しそうなユーザーを予測して、事前にインセンティブを送るだとか、ダイナミックで当てると行った使い方を想定しています。それ以外にもプッシュ通知配信やメルマガといったところのオートメーションも進められると考えています。

まとめ

本日のまとめですが、もともと弊社がクロスデバイスでユーザーを管理するという環境がなかったというのも大きいですが、ユーザーの正しい行動データを見ることは非常に重要だと思っています。さらに、そこで得たログをベースにコミュニケーションを設計することで、ユーザーさんにとって必要な情報を届けるという環境を構築できるのかなと。それが永続的にサービスを使っていただく、居心地の良さにつながっていくのかなと思います。

あと、広告配信に関しても、インストール数が高まっていく中で、効率化が難しいのですが、新しい媒体に積極的にチャレンジして、早く知見を貯めて次のアクションに結びつけることが重要かなと思っています。

とはいえ、広告は安い投資ではないと思っているので、他のストラテジーにも活かすことで、単純に獲得以外の費用対効果も見えてくるのかなと思っております。