Growth Hack Journalのマーケターインタビュー企画「Sailing Report」。

動画を活用したマーケティング手法がより一般的になりつつある昨今、SNS広告を始め、Youtubeやバナー広告など、インターネット上のいたるところで動画を目にするようになった。その一方で、「デジタルの動画の場合は現在二極化しています。総合広告代理店的な映像の作り方と、インターネット広告代理店的な映像の作り方、そしてこの両者の間にはいまだに大きな断絶がある」と指摘するのが、株式会社TORIHADA(以下、トリハダ)の取締役、若井映亮氏だ。今回は動画マーケティングにおける課題感と同社の今後の展望についてお話を伺った。

 

若井 映亮

株式会社TORIHADA 取締役 兼 ニューメディアディヴィジョン統括

2013年株式会社サイバーエージェント新卒入社。

子会社AMoAdにてメディア営業を経て、新規事業を担当。2014年に株式会社Appeleven創業。営業責任者として事業を拡大させる。2015年からDynalystのセールス部門をマネジメントし、売上をジョイン時の20倍に成長させる。Dynalystは全社総会で最優秀プロダクト賞を受賞。

Twitter: https://twitter.com/djA_suke

Blog: https://creeve.hatenablog.com/

 

デジタルとマス。二極化が進む動画制作

 

─トリハダの事業内容についてお聞かせください。

若井 映亮氏(以下、敬称略):「鳥肌が立つ感動をつくる」をビジョンとしている、現在2期目の会社です。成長を続けているデジタル動画マーケティングのマーケットにおいて、大きく3つの事業、感動を作る「映像制作事業」、感動を伝える「広告代理事業」、そして感動を作れる人をサポートしていく「次世代インフルエンサー事業」の3つを展開しております。

 

─デジタルの動画マーケティングを手掛けている企業は増えてきましたが、他社との違いはどこにあるのでしょうか。

若井:まず、動画制作の企画から制作・配信まで、ワンストップでお任せいただける体制である点です。また、アジア地域最大級のクリエイティブフェスティバル「スパイクスアジア」の広告賞を受賞しているクリエイターが所属するほか、自社でクリエイターコミュニティを運営しており、企画力には自信があります。

一般的な制作会社や広告代理店の場合、映像の企画・制作は外注しているケースが少なくありません。例えば、キャスティングはキャスティング会社に、撮影はフリーランスのカメラマンに、といった具合です。

次に、大手総合広告代理店出身者とインターネット広告代理店経験者が混在している点が挙げられます。だからこそ、マスとデジタルそれぞれの知見やノウハウから動画マーケティングをご提案することができています。

 

─トリハダが認識している動画マーケティング領域の課題感を教えてください。

若井:デジタルにおける動画マーケティングはまだまだ黎明期であり、科学されきっていないなと感じています。

動画以外のインターネット広告においては、例えば静止画バナーの作り方や広告文(タイトルディスクリプション)などは、すでにPDCAを回しきっている、検証されきっている印象です。

ですが、デジタルの動画の場合は現在二極化しています。大手総合代理店が作る動画クリエイティブはマス向け、社会全体で話題化することを意識して作られています。

その一方で、インターネットの広告代理店では、ウェブの強みである「ターゲティングができる」ことを意識し、ターゲットに対するカスタマイズ性やパーソナライズを重要視しています。静止画バナーのように大量に制作し、大量に検証しようと試みています。しかし、映像はデジタル的な制作や検証だけでは、「クリエイティブジャンプ」を起こしにくいと考えています。

 

─「クリエイティブジャンプ」とは?

若井:ブランドの強みやターゲットのニーズを無機質に伝えるだけではなく、ターゲットの心を動かす、飛躍的なクリエイティブに昇華することで、しっかりとアクションを促すことです。インターネット広告代理店はPDCAを高速で回すことでより多くのCVを獲得する、という意識が強いと思います。しかしそこからクリエイティブジャンプを導くことは難しいんですね。

総合広告代理店的な映像の作り方と、インターネット広告代理店的な映像の作り方、この両者の間にはいまだに大きな断絶があるなと感じています。トリハダでは、この中道をいく映像、つまり人の心を動かし、態度変容を起こす映像の作り方と、デジタルならではのカスタマイズ性を兼ね備えた映像作りを心がけています。

 

クリエイティブジャンプを起こす動画の作り方とは

 

─デジタル広告向けの映像でもクリエイティブジャンプを起こすために、どのようにプランニングするべきなのでしょうか。

若井:弊社の例ですと、デジタルで配信する動画でも総合代理店さんに近い考え方でプランニングしています。最初にクライアントが属するマーケットの全体像を把握し、そこでのポジショニングをまず整理する。その上で、クライアントのオーダーをヒアリングし、ターゲットを明確化していきます。

クライアント自身も、まだふわっとしたイメージしかない場合が多いので、例えば若年層の中でも具体的にどういった層なのか、潜在ターゲット的なペルソナまで落とし込む必要があるんです。

そしてそのターゲットにどのような態度変容を起こしたいかというゴールを定め、現状とゴールの断絶をクリエイティブによってブリッジさせていく、という流れになります。

静止画よりも動画のほうが伝えられる情報量が圧倒的に多い。だからこそ、動画のプランニングでは、コンバージョンをただ求めるのではなく、ブランディング観点、そしてストーリーをより意識するべきだと思います。

 

─特に動画が効果的なマーケットがあれば教えてください。

若井:最近ですと、人材採用向けの動画活用は高い実績が出ています。実際、採用の情報サイトや自社の採用ページには多くの動画が掲載されていますね。

特に認知度がまだ低いクライアントの場合、動画をはじめとした心を動かすクリエイティブを活用して、求職者に対して能動的にアプローチしていくことが重要になると思っています。

美容室のクライアントさんの採用向け動画では、その美容室で働く楽しさや職場の空気感を動画に落とし込みました。それをYouTube広告で配信し、リターゲティング広告で刈り取るというワンストップの施策を行った結果、採用エントリー数がかなり伸びたんです。

採用媒体に掲載するだけ、といった受動的なアプローチではなく、ストーリーでその職場で働く魅力が伝わる動画を制作し、動画広告として能動的にアプローチしたからこそ、大きな成果が上げられたと思っています。

 

マスとデジタルの中道。意識すべきはマスカスタマイゼーション

 

─動画マーケティングのトレンドが、今後どのように変化していくと考えていますか。

若井:動画マーケティングにおいても、いかにクリエイティブのパフォーマンスを上げていくかという「科学」が進んでいます。ツールでも動画は簡単に作れるようになり、クリエイターも増えており、動画の制作単価は安価になっていくでしょう。しかしその先にあるのは静止画バナーと同じく、コンバージョンを100%から105%に改善していくような小さな変化だけです。

しかし一度に多くの情報をターゲットに伝えることができる動画にはクリエイティブジャンプを起こすポテンシャルがある。マス向けのCMのように、100%を200%以上に飛躍させることができます。

そのためには動画の企画はもちろんですが、企業とターゲットのコミュニケーションをいかにプランニングしていくのか、トータルでの視点が必要不可欠であり、動画マーケティングではそうした姿勢がトレンドになっていくと考えています。

 

─そうしたトレンドに合わせて、企業はどのように戦っていくべきなのでしょうか。

若井:デジタル的に、ペルソナごとに細かく映像クリエイティブを分けていきながらも、それぞれの心が動く映像を制作、配信していくべきだと考えています。つまり、「心を動かすマスカスタマイゼーション」をより意識していくべきです。

SNSに関しても、これまで企業から一方通行で発信していたものが、TwitterやTikTokで二次拡散的に、ある意味でマス的にどんどん広まっていきます。それを踏まえて、総合的にコミュニケーションを設計する必要があります。

 

これまでにない指標の設計と動画制作の仕組み化

─最後にトリハダの今後の取り組みについて教えてください。

若井:1つは、動画マーケティングにおいて、我々ならではの指標を作っていきたいと考えています。いわゆるCVとかCPAとか、リフト計測だけではない、エモーショナルな「感動」を測る指標をデジタルでどう科学していくか、考えていきたいです。

もう1つが心を動かすクリエイティブをターゲットごとにカスタマイズして映像を量産する仕組み、体制づくりを進めていきます。

そのために優秀なプランナー、クリエイターをどのように巻き込むか、例えばクリエイティブサロンやオンラインでのコミュニティを活用など、にしっかり取り組んでいきたいですね。

─ありがとうございました。

 

 

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